第139話、タケ、LIVE配信で報告する。①
勇者の介入がしばらくない事を知った俺は、エルフの里に行く事をリスナーたちと共有する事にした。大勢のエルフに囲まれる。むふふ……待ちに待ったからな。サラフィナは幼女だし、エリフィーナはまな板だから。こうボンキュッボンみたいなエルフを期待している訳だよ。俺としては!
なぜかLIVE配信をすると言ったら、麗華さんがブラッスリーを剛人さんに紹介したいと言いだした。まぁ、身内になる訳だから顔合わせというヤツだな。
「よぉ、リスナーの皆。竜討伐動画は見てくれたか?」
ゲスト:あぁ。見たよ……。
ゲスト:もうさ、タケちゃんが主役じゃなくてもいいよな?
ゲスト:ロリは死ねって言ったよな?
ゲスト:はぁ。お姉さん、まさかタケちゃんがロリコンだとは思わなかったわ。
ゲスト:というか、何かタケちゃんの眼おかしくないか?
ゲスト:そう言えば……光が映り込んでるのかと思ったけど、何だ。これ?
ゲスト:タケの目なんてどうでも良いから。ブラッスリーちゃん出せよ!
ゲスト:あんだけ眷属を殺されたのに、よくタケの嫁になったな。
タカト:はぁ。アロマくんで止まると思ったんだが……はぁ。
「何で皆のテンションが低いの?」
ゲスト:そりゃ、確実にハーレムルートに入ってるからじゃねぇ?
ゲスト:タケは、孤独こそが似合う!
ゲスト:さすがに麗華、アロマまでは良いけどさ。竜人とか……。
ゲスト:ハッキリ言おう! タケの嫁が増えると皆のテンションは下がると!
はぁ。そうですか。って、俺だって好き好んで結婚してる訳じゃねぇよ!
麗華さんとアロマの二人は美人だし、結婚できるのは嬉しいと思ってたけどね。 さすがにブラッスリーに関しては、自分でもまだ良く分からんというか……。
ゲスト:まぁ、まぁ。で、竜の動画は見たけど。今さら感があるというか。なんというか……。
ゲスト:さすが異世界だな。としか言えないよな。
ゲスト:それより、ブラッスリーちゃんだっけ? 眷属を殺されて平気なの?
ゲスト:俺もそれ気になってた。
ゲスト:だよなぁ。眷属を何体も殺されて、殺した相手と結婚とか……。
うーん。そんな事、俺が知るかよ。本人に登場してもらうのが一番だな。
そのために、カメラの側に麗華さんとブラッスリーがいるんだし。
二人を手招きして呼ぶ。最初から参加させるつもりだったからな。席も用意してある。緊張した様子の麗華さんと平常運転のブラッスリーが隣に座った。
ゲスト:おっ、タケの奥さん登場!
ゲスト:アロマはいねぇけどな。
ゲスト:麗華さんに質問です! タケちゃんのどこがいいの?
ゲスト:ブラッスリーちゃんに質問! 眷属を殺したタケと結婚とか罪悪感はないのか?
ゲスト:二人とも、もうエッチはしたの?
タカト:上の人、アカウント停止にするぞ! 言葉に気を付けたまえ。
ゲスト:ヒュー。ここの社長だからな。発言には気を付けねぇと……。
ブラッスリーに日本語は分からない。麗華さんが通訳をして、質問の内容を話してる。本当にこの二人は仲がいいな。最近は俺よりもべったりくっついてるし。
「うむ? 眷属を殺した旦那様を憎くないのかじゃと? そんな事ある訳なかろう。そもそも竜族は戦闘の種族じゃ。弱い者は、淘汰されても仕方がないと思っておる。人族に例えると、お主達はアリを踏み潰して罪悪感を抱くのか? わらわは弱い人族を殺しても罪悪感は抱かぬ。強いモノを認める事はするがの」
ゲスト:それじゃ、仲間を殺したタケちゃんを許せると?
ゲスト:なんでタケちゃんと結婚する話になってんの?
ゲスト:上の人は竜退治の動画を見直してこい。
ゲスト:そもそも、人族はアリとは結婚しませんよ。
あらあら。麗華さんの解説を聞いて、呆れた表情になってるよ。俺も良くわからないけど、竜って力が全てのイメージだからな。
「そもそも、許す、許さない。憎む、憎まないではないのじゃ。われら竜族にとって力こそが存在意義、力がなければ意義は失うのじゃ。旦那様に殺された者たちは、旦那様の力になった。これは自然の成り行きというもの。人族の雄が、建国する際に力で妻を手に入れる事もあろう。それと同じじゃ。力のある者が全てを手中に収めるのじゃからな」
へぇ。分かり易い説明だな。確かに昔の人間は、力のある者が王になった。そして、王の権威で全国から美女を集めた。なんて時代だってあった。氏族同士の戦いでも、似たような文献はあったはず。戦国時代でも、敵方を滅ぼしたあとで、そこの姫を嫁にした話は枚挙にいとまがない。
ゲスト:へぇ。日本人の感覚じゃないね。
ゲスト:日本だって歴史上あっただろうに。信長の妹を柴田が嫁にしたとか。
ゲスト:それは、お市の方がもともと織田家だったからじゃ?
ゲスト:本田忠勝の娘とか敵方だった真田昌幸に、自分の娘を嫁に出したけど?
ゲスト:それは政略結婚でしょ。
ゲスト:あれ、そう考えるとブラッスリーちゃんの結婚も政略結婚なの?
俺と結婚する事で竜族に得なんてあるのか?
「お主らのはごちゃごちゃし過ぎなのじゃ。より強い雄と交わりたいと思うのが雌なのじゃ。そんな事はその辺に転がってる虫でも分かるのじゃ」
ゲスト:俺たちは虫以下かよ!
ゲスト:本当にここの雄たちは……お姉さんはブラッスリーちゃんの考えが分かったわよ。
ゲスト:はいはい。
ゲスト:さいですか……。
タカト:それで、タケくん。その眼はどうしたのかな?
ゲスト:そうだ。何か金色に光って見えるんだけど。なんで?
「えっと、何から話せば良いのか……。先日、俺は樹海に行ったんだよ。そこで女神様に会った時に、こうなったとしか……」
「旦那様は説明が苦手なのじゃな。コレは女神様の寵愛を受けた証なのじゃ!」
ゲスト:えっ……ちょうあい?
ゲスト:まさか……俺の考えが正しければ、また一人増えたって事か?
ゲスト:それは飛躍し過ぎだろ? なぁ。違うよな。違うと言ってくれ!
はい? 何を勘違いしてんだ?
女神様と俺が結婚できる訳ねぇじゃん。神様だぞ。両性の相手とエッチなんてできる訳がねぇだろうに。
『できますよ! あなたとはそういう関係ではありませんけど……』
うへぇ。いきなり現れやがった。おいおい、生放送中だぞ。大丈夫なのか?
ゲスト:タケちゃん、何横向いてんだよ。
ゲスト:で、どうなんだ? 女神様と結婚すんのか?
ゲスト:その目からビームとか出るの?
あれ……もしかして、リスナーには見えていない?
『当たり前です。現代の者たちは信仰心が薄いですからね』
えっ、俺もどちらかといえば、薄い方だったけど。
『結婚式で祝詞を唱え、この世界で魔法を使うときにも名を呼んでいるではないですか。神の名を呼ぶという行為は信仰を深めるのです』
へぇ。そうなんだ。というか、今LIVE配信中なんですけどね。耳元で話しかけられたらうるさくて仕方ない。麗華さんとブラッスリーも大人しくなっちゃったし。どうしてくれるんだよ!
お読みくださり、ありがとうございます。