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WooTober異世界に立つ  作者: 石の森は近所です
堕天使復活編
142/208

第136話、タケ、女神に会う。①

 神殿の中はヒンヤリと冷たい。幻想的な空間も相まって身が引き締まる気がした。どこまで続くのか不安だったが、細い通路の先で終わりを迎える


「ここなのじゃ」


 ブラッスリーに案内されてやって来た場所は、長方形の広場。それを取り囲むように配置された水晶の像が建ち並ぶ。中央の像はひときわ大きく、挟むように少し距離を開けて二体。また距離を開けて二体。また距離を置いて二体。似通った女性の像が全部で七体。

 そしてそれらを守る様に、翼の付いた天使がズラリと並んでいる。

 オペラハウスの壇上から客席を見ているような感じだ。

 中央に配置された階段は真っすぐに、一番大きな像へと続いている。


「何だ……これ。すげぇな」


「はう……」


「「……………………」」


 その像を視界にいれた瞬間、エルフの二人はひざまずいた。

 と言うことは、まさかこれが女神様なのか。ブラッスリーはずんずん先へ進む。 俺も遅れまいとあとを追う。エルフの二人は跪いたままの姿勢で動かない。

 俺のそでを掴みながら、麗華さんも続く。一段、一段。ゆっくりと失礼にならないように気を配っているような、そんな歩みで進んでいく。最上階まで上がると、ブラッスリーも跪いた。麗華さんが上り終わるのを待って、俺も膝を突いた。


 ブラッスリーは何かに祈るように両手を組み合わせる。

 俺もそれを真似ようと思ったが、中央の像の瞳が動いた気がして止めた。ジッ、と像を見つめる。すると、今度は指が動いた気がした。来い。もっと近くに来い。そんな風になぜか思った。俺が立ち上がると背後から、『あっ……』という麗華さんの声が聞こえる。麗華さんはまだ立ち上がっていない。

 誘われるまま像の正面に立つ。像は俺の倍の高さがあった。透明な水晶の手が差し出され、思わずその手を取る。まるでダンスに誘われるかのように。

 そっと、手のひらに手を添えてみる。ここで俺の体の自由は途切れた。


 んあ……どうなってやがる。


 俺の体は手を差し伸べたままの状態で止まっている。自分の体に向き合う。


 あっ……コレ俺だ。


 意識の中では瞬きをするが、実体は動いてはいない。

 あっ、これ幽体離脱なのか……。何となく、そんな気がした。

 死に瀕したときに、真上から自分を見下ろすとは聞いたことはある。だが、立った状態の自分と向き合う経験をするとは……。これから何が起きるのか。

 俺は女神の像と思われる像へ向き直った。


 あ゛……。


 そこには真っ白な衣をまとった女神がいた。何をバカな事をと思われるだろう。

 だが、実際に透明な像だった筈の神はそこにいるのだ。透明な像じゃなく、白地のドレスにピンクのストールを首に巻いている。足を見ると素足で、薄いピンクのマニキュアまで塗っている。


『あなた。その舐め回すように見るのは止めなさい。鳥肌が立つじゃない』


 すき通る声で注意され、思わず視線をあげる。うっ、目が合った。

 温かみのある白い肌に描かれている黄金の瞳に見つめられ思わず仰け反る。

 こんな人間がいる訳ねぇ。白いのに、ほんのりピンクがかっていて。そう、まるで生きてるみたいだ。


『失礼なヤツねぇ。ちゃんと生きてるわよ!』


 ハッ、心を読まれた。


『当然よ。ここは神域。人の身で来れば考えている事は全て筒抜け』


 それじゃ、おぉぉ、絶世の美女ってのはこんな感じなのか。とか、でも胸はちょっと小せぇなとか。足は細いとか、いいケツしてんなぁとか――。


『ええい。止めなさい。気色悪いわね』


 はい。すみません。調子乗ってました。それで、俺を呼んだのはどうしてです?


『そうでした。ちょっと、問題が起きたの。それで、あなたにそれを解決してほしいのよ』


 神様のお願いなんて碌なもんじゃない筈。さっさと帰った方がいいんじゃねぇ?


『ここでアレを放置すれば、あなたもあなたの家族、親戚も全て消えるけど。それでもいいのかしら?』


 はい? 俺の家族って麗華さん、アロマ、ブラッスリー、侯爵家の面々だよな。


『違います。あなたが残してきた者たちの事です』


 えっと、いっている意味が分かりませんが。だいたい、異世界なのに地球となんの関係があるっていうんです?


『あっ、そうでした。まずはその説明からしなければいけませんね』


 へぇ、あっ忘れてた。【てへぺろ】みたいな反応を神様でもするんだな。


『んッ』


 やばっ、茶化したらダメだったか。


『まずこれを見なさい』


 女神がそう言った瞬間に俺の体は宇宙へ飛んだ。なんでやねん。実際には意識体だが、宇宙空間から星を見ている。真下に見えるのは、青い海と緑一色の大地。 恐らくこの世界で間違いない。


『まだ分かりませんか。では、これならどうです』


 球体にあった緑の大地が徐々にひび割れ動いていく。北極と南極は白く染まり、大地に土色が増え、緑が減っていく。ここまで来るとアホでも分かる。


 ――こ、これは地球か?


『そうです。あなたが二十三年過ごした地球です』


 ……………………………………………………。


『混乱するのも無理はありません。あなたは先ほど異世界といいましたね』


 あぁ。確かにいった。地球じゃ魔法なんてものはない。それが使えるって事は異世界で間違っていない筈だ。だが、今のは何だ。異世界の大地が別れ、行き着く先が地球? なんで?


『まだ分かりませんか。ここは異世界ではありませんよ。あなたが暮らした地球の五億年前の姿です』


 いや、それはないだろうよ。歴史の授業では五億年前といえば、古生代だ。三葉虫とかが現れた時代のはず。


『あなたの時代ではそう習うのでしたね。でも、これは事実です。人類は多くの厄災を迎え、現代の姿になりました。この時代もやがて破滅の危機を迎え、人口は限りなく減ります。ですが、唯一生き残った者たちが文明を数度繰り返すのです。その到着点が、あなたの知る地球です。あなたの世界では恐竜でしたか、それの遺伝子の結果は知っていますか? 鳥類です。この鳥類が何を指すのか……さかのぼれば、この世界の竜にたどり着きます』


 それは随分と強引な説だな。なら魔法はどうなんだ? 地球にそんなものはなかったぞ。


『本当にそうですか? 現に、過去から未来へ帰還した勇者が魔法を使っているではないですか。これを勇者だからと思考停止し拒絶しますか?』


 うーん、正直何が正しいのか。さっぱり分からねぇ。

 そもそも、異世界と地球で変わっている事といえば……木の高さくらいか。

 この世界の木々は巨大な物が多い。全長二〇〇メートルなんてざらだ。


『はぁ。その事ですか。それならば簡単です。そもそもなぜ木々は大きく成長すると思いますか?』


 えっ、それは長い年月放置されたからじゃ?


『確かに長い年月人の手が入らなければ高くは育ちます。それならなぜ、恐竜は巨大化していたのでしょう? これが全ての鍵でもあります』


 恐竜がデカかった訳?

 そんなもの化石研究家にでも聞いてくれよ。俺は動画配信者で専門外だ!


『ふふっ、匙を投げましたね。では教えましょう。あなたが異世界と言っているこの世界。そして、あなたが地球と思っている世界の大きな違いは――酸素濃度の違いによるものです』


 酸素濃度? 何それ……。


お読みくださり、ありがとうございます。

いつも感想、誤字脱字報告ありがとうございます。本当に活動の励みになっています。

まだまだ未熟ですので、些細な応援でどれだけやる気が出るかわかりません。

いつの間にかポイントも224Pまで上がってました。これも皆様のおかげです。

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