第128話、タケ、基地の様子をLIVEで流す。
どういうことだ……。今聞いた内容だと、宗っちは俺の上位互換と言うことになる。これで詠唱短縮を覚えたら、負けるのは俺か……。
「なぁ、それって使える魔法の種類は?」
宗っちは宙に目をやり、視界に映し出されている魔法の一覧を見ているようだ。
俺を倒すために遣わされたと考えたら、確かにあり得る。もし、俺が詠唱短縮をサラフィナから教わっていなければ惨敗していたって事か。マジかよ。
「えっとね、全部で六〇種類くらいかな? 大雑把に数えただけだから誤差はあると思うけど」
すげぇな。俺よりも多い。俺が四九種類。しかも似通ったものが多い。うーん、これは宗っちにはきちんと詠唱をしてもらおう。そうしよう。
下手に短縮を覚えて謀反を起こされたらたまらねぇ。
おっと、重要なのはそれじゃねぇな。まずは宗っちにネット接続の魔法を覚えてもらうことが最優先だ。それから小一時間ほど、宗っちにはネットに接続する魔法の使い方を伝授した。その結果、宗っちのノーパソもネットにつながった。これで、もう新婚夫婦の部屋に来ることもないだろう。
そして、俺は先日撮影した動画を流しながら、久しぶりのLIVE配信を行う。
「へぇぇぇい! リスナーの皆。元気かぁぁぁぁ!」
ゲスト:タケちゃん、なぜかハイテンション。
ゲスト:そう言ってやるなって。新婚だからだろ。
ゲスト:まぁ、あるな。ねぇよ!
ゲスト:タケちゃんが一皮剥けたように見えるのはお姉さんの気のせいかしら。
ゲスト:タケはいいからさ、麗華だせよ。それかサラフィナでもいいぞ。
ゲスト:新キャラはよぉぉぉ。次の嫁は誰だ?
ゲスト:タケちゃんがハーレムねぇ。世も末だぜ。
タカト:それで、今日は変わった動画をアップしてくれるとか?
「タカトさん、こんにちは。えっと、先日、WooTobeの基地に行ってきました。その様子を撮影したんで、配信します。ついでにその時捕まえた黒幕も登場させますね」
ゲスト:ええぇぇぇぇぇーマジかよ。マジで黒幕登場?
ゲスト:これ流していいものなの? マズいんじゃ?
ゲスト:それより異世界に作った基地の方が興味はあるぞ!
タカト:へぇ。ついに捕まえたんだね。くっ、楽しみだ。
ゲスト:タカトさんと麗華さんは因縁があるからな。
ゲスト:それより動画はよぉぉぉぉ。
フフッ、これが世界中に拡散されれば今度こそ、大問題に発展するな。ハゲにどれだけの価値があるのかは知らねぇけど。宗っちの話では、大富豪って話だ。
ハゲを囮にして……勇者を誘き出す!
LIVE配信では、俺の顔の映像の右側にチャットが流れている。これはWooTobeと左程変わりはない。ただ、剛人さんの会社のスタッフさんに協力してもらい、俺の映像と動画を切り替えできるようにしてもらっていた。
例の樹海の道路の映像が画面に映し出される。
ゲスト:すげぇな。なんだコレ。
ゲスト:この動画だけ見れば、地球のどこかと言われても信じるね。
ゲスト:本当に異世界のインフラ事情を改善してんだな。
ゲスト:インフラ改善どころの騒ぎじゃないって。こんなもの作って何をするのかが問題だろ?
ゲスト:だな。おっと、まるで基地だな。デカい門に着いたぞ。
ゲスト:本当に軍事基地を建設してるんだな。
ゲスト:お姉さんの税金もこれに使われてるの? ちょっと財務省にクレーム入れるわ。
ゲスト:いや、上の人。これ作ったのは他の国だし。しかも企業だよ。日本は関係ないはず。多分……。
ゲスト:あれ、なんだか様子がおかしくねぇか?
ゲスト:えっ、今の人誰? どっかで見たような……。
フフフ。宗っちはこっちで生きてく覚悟が決まったようだからな。先を越される前に、俺の動画で異世界デビューさせてやるよ。
「えっと、気付いた人もいるようだからぶっちゃけるが……今のは宗っちだ」
ゲスト:えっ………………なに言ってんの?
ゲスト:うそだろ。でも、すげぇ似てる。いや、本人に見える。
ゲスト:マジで宗っちなのか?
ゲスト:お姉さん、タケちゃんの動画を見る前は、宗っちのファンだったのよね。間違いないわ。宗っちよ!
ゲスト:お姉さんの好みが分かった気がする。
ゲスト:それ言うな。みんなも分かったから。
ゲスト:なんで宗っちまでいるんだよ? どうなってんだWooTobe。
「えっと、実は、ザイアーク王国に侵攻してきたヤツらの中に宗っちもいたんだ。それを俺が倒して、今は味方になった」
ゲスト:すげぇ。トップと底辺のコラボか! タケちゃんにとっては最高のコラボだな。
ゲスト:いやいや、宗っちまで異世界配信に参入すると……タケの立場が。
ゲスト:それは言ってやるな。
ゲスト:知らない方が幸せだからな。
ゲスト:おっ、赤竜だ……。
ゲスト:えっ……ほんとだ。マジモンの竜じゃねぇか。ついにファンタジーの頂点登場か!
ゲスト:宗っちの魔法か。あれ……竜の動きが止まった。
ゲスト:タケは何やってんだよ。サボってんじゃねぇぞ。軍用トラックなんて放っておけよ。
ゲスト:ぷっ、タケちゃん、ハゲの爺にパンチって……。かわいそうに。
ゲスト:タケよぉ。老人は労らねぇとダメだぜ。
ゲスト:ハマーか。プロ野球の選手とか乗ってるヤツだな。
ゲスト:誰もタケちゃんが空を飛んでいる事に触れない件……。
ゲスト:タケちゃんだからな。今さらだろ。
ゲスト:だな。それより、すげーな。赤竜が真っ二つだぞ。というか、素材を集める気ねぇだろ。
ゲスト:もしかして異世界では竜の素材は売れないとか?
ゲスト:そんな事はねぇだろうよ。あっ、まただ。タケちゃん、素材ボロボロじゃん。倒し方が雑すぎねぇ?
ゲスト:タケの性格が丸わかりだな。
「うるせぇよ。ほっとけ! それよりどうだ、こんなデカい基地をおっ建てやがったんだが……それに関しての意見は?」
タカト:うーん、確かに最初は驚いたが……竜のブレスで壊滅してるからね。壁はドロドロに溶けてるし、建物も……。これを証拠にするには少し弱いかな。
ゲスト:まぁ、異世界にデカい基地を作ってたのは分かったよ。お疲れタケ。
ゲスト:おっと、宗っちの魔法かアレ……竜が一瞬で凍り付いた。タケとは違うな。
ゲスト:言うなって。大雑把なタケと繊細な宗っち。ププッ……。
チッ……。言いたい放題だな。宗っちを出したのは余計だったか。まだこっちにはとっておきの人物がいるからな。それにしても、建物も戦車も、重機の多くもドロドロだからな。溶けた鉄にしか見えないのは痛かったな。
ゲスト:終わったみたいだな。うん、今までで一番見所が多かった。お疲れ。
ゲスト:やっぱ竜が出てくると違うよな。
ゲスト:お姉さんのアクセサリーにあの鱗使えないかしら……。
ゲスト:異世界から物資を運べればね……。
ゲスト:タケちゃんにできるとは思えないからな。それができたら万能じゃん。
ゲスト:だな。竜が五体か……全部売ったらいくらになるんだろ?
ゲスト:かなりの大金になりそうだけど……ザイアーク城があのザマだからな。もう金はないんじゃ?
ゲスト:だな。前回の動画で吹き飛んでたもんな。
ゲスト:しかし、空爆とか……正気とは思えねぇな。
ゲスト:あーそれ俺も見た。落下傘のついたアレってまさか……。
ゲスト:長崎、広島。ここからは禁句な。
ゲスト:やっぱりか! WooTobeって異世界人を滅ぼしたいの? そんな事は俺が許さん!
いろいろ盛り上がってるが、まだ残ってるんだよね。ハゲが……。
お読みくださり、ありがとうございます。