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WooTober異世界に立つ  作者: 石の森は近所です
異世界激動編
129/208

第123話、宗っち、亭主関白ぶる。

「さぁ、そうと決まれば行こうか!」


 あらら。急に宗っちが元気になった。俺のテンションとは真逆だな。


「それじゃ、行こうか。父上からの命令書はここにあるしね」


 用意周到とはこのことか。王子は丸めた羊皮紙を(ふところ)から取り出し、兵士に渡した。全く、なんで宗っちの保護者になってんの。俺。


 そして、侯爵邸に帰ってきた訳だが……。


「へぇ。意外と安っぽいノートパソコンを使ってるんだね」


 ぶっ。余計なお世話だ! だいたいひとの家に上がり込んで最初の言葉が、『パソコンはどこ?』だからな。全く、廃人か!


「へいへい。一流のWooTober様はどんなの使ってるか知りませんけどね。どうせぱちもんですよ」


「うん、これは計算をする箱じゃなかったのかい?」


 クッ……王子が懐疑的(かいぎてき)な視線でノーパソ見てるし。宗っちも余計な事は言わねぇよな。知らねぇぞ。これだけでも利用価値は大きいのに。


「えっとですね殿下、これは計算は勿論(もちろん)ですが……。私の世界では、世界中のありとあらゆる情報を探せる便利ボックスなのです。例えば、こんな風に――」


 ば、馬鹿野郎。余計な事を始めやがった。宗っちに使われたら俺が使うバッテリーが不足するんじゃねぇか。しかも、某ニュースサイトを開いて、リアルタイムの映像、情報まで見せやがって。


「へぇ……これはすごいね。というか、世界が違う。ん、当たり前か。だが、なんだこれは、箱がものすごい速度で走ってる。しかもこの女性の服は……なんたるハレンチな。全くもってうらやま……」


「ハドロ様!」


「えっ、フリーシア! これは違うんだ。私は決してやましい気持ちではなくてだな。そ、そう。異世界への好奇心というヤツだ」


 ぷっ。ざまぁねぇな。王子でも嫁さんに頭が上がらないとは。

 まぁ、俺もハドロ王子のことは言えないけどさ。フリーシア姫に耳を掴まれてハドロ王子は退場していった。


「殿下とあろうものが、尻に敷かれてるとは……何とも」


「ん? 宗っちは違うのか?」


「僕が? そんな訳ないじゃないか。僕は亭主関白だよ」


「マジかよ」


「でなければ三人も妻を娶れないだろ? やっぱり男がリードしないとね」


 すげぇ。俺なんて女性陣に囲まれたら反論すら許されねぇぞ。今度から宗っちを先輩と呼ばねぇと駄目だな。


生憎(あいにく)、僕のノーパソはハマーの中に置いてきたからね。しばらく借りるよ」


「いや、貸さねぇし。それにバッテリーだって無限じゃねぇんだぞ」


「それは困ったな。それだと僕がネットをできない。約束したよね?」


 はぁ、約束ね……確かにそんなことを言ったような、言わなかったような。

 あぁぁぁ、面倒くせぇ。何でこうなった。おかしいだろ。目の前ではご機嫌な様子でネットサーフィン始めちゃうし。これならさっさと宗っちのノーパソ取ってきた方が良いんじゃねぇのか。


「ところで宗っち」


「なんだい?」


「宗っちのパソコンってどうやってバッテリーを充電してんの?」


 俺でさえソーラーパネルで充電してるからな。多分、同じ方法だろうけど。もし、予備のバッテリーとかあるなら俺も使いたい。


「何を言ってるんだい。充電なら車のシガーソケットから急速充電してるにきまってるじゃないか。だいたい、ソーラーパネルで充電とか。ププッ」


 くそぉぉぉぉ。何が、『君くらいなものだよ』だ!

 ロケ先に電車で通ってた俺に、そんなものがあるかよ。金持ちの宗っちだからできるんだ。何から何まで価値観が違うな。さすがプロ。これがトップとの差か!


「ふぅん、WooTobeではまだ僕が人気ナンバーワンなんだね。ふふっ。しばらく留守にしてたから落ちたと思って心配してたんだが……」


 へいへい。どうせ俺は底辺ですよ。というか、もうWooToberですらねぇしな。石神のおかげで。パラパラ動画の一配信者じゃ仕方ねぇけど。だが、見てろよ。いつかは剛人さんとデカくしてみせるぜ。


「それで宗っちさん、先ほどの話ですけど」


「おぉぉぉ、これはエルフのお嬢さん。短い髪がステキだね。僕のタイプとしては伸ばした方がいいかな。僕の四番目の妻になるかい?」


「はぁ。それは……、そうではなくてですね。そろそろ、勇者様、宗っちさんをこちらに飛ばした方の名を……教えていただけませんか」


 宗っちすげーな。サラフィナの母親にまで色目使ってるよ。俺なら怖くてできねぇけどな。サラフィナも微妙そうな顔してるし。そりゃ目の前で母親を口説かれたらそうなるか。おっと、そんな事よりも勇者だ。勇者。


「うん。石神くんで間違いないよ。彼が勇者だったのは知らなかったけどね」


「――やっぱり」


 はぁ。確定か。部屋の空気が一気に重くなったな。特にエルフの二人が。

 当然か。この世界を魔王から救った英雄が、今度は敵なんだから。

 聞けば、かなり強かったって話だからな。俺も気合い入れないと危ねぇかも。


「ところでいつまで俺のパソコン使ってんの?」


「うーん、久しぶりだからね。一二時間くらいは使いたいかな?」


「却下に決まってんじゃん。ダメ。バッテリーだって無限じゃないんだぞ」


「そうは言ってもね……さっき約束したよね?」


 ぐぬぬ。確かに条件を飲むとは言ったけどさ。やっぱ、宗っちのパソコンを回収すんのが先かなぁ。あれ、なんだか廊下が(にぎ)やかになったような……。


「「「宗方さまぁ!」」」


 いきなりドアが開いたと思ったら、ドレスに身を包んだ年上の女性たちが入ってきた。それも三人とも二十代後半にしか見えない人たちが。


「やぁ。アンナにミリーにマリアンヌ。よく着たね」


 もしかして……コイツらが宗っちの嫁なのか。ロリコンじゃないのは褒められるけど、どうみても全員年上じゃねぇか。もしかして、陛下も王子も行き遅れの女性を……ハッ、だから貴族連中は簡単にこの話に乗ったのか。

 おっと、それより。よく来たね、じゃねぇよ。何度も言うが……ここは俺の家で、俺は新婚だ。あ、宗っちもか。      


「あらっ、宗方さま。女性の絵なんて見て、どういう事です?」「本当ですわ」「まさか……もう新しい女を見つけたと?」


「いやぁ、そんな訳がないじゃないか。これは彼のパソコンだよ。僕のじゃない」


 あれ、亭主関白はどこにいった?

 なんだか分からない内に、女性たちに拘束されて宗っちも退場していった。


「…………………………」


「……………………………………」


「騒々しい人でしたね」


「どうしましょう、私。結婚を申し込まれましたけど……」


「それはダメ。お父さんが泣くよ」


「そうよね……」


 何なのこの親子も。

 とりあえず、頭の中を整理しねぇとな。まず最優先は――宗っちのパソコンか。新婚の部屋に何度も来られたら困るのは俺だ。その次は、勇者だが、あっちの世界にいる以上は手が出せねぇ。と、なると、あとは例の原爆の爆心地を偵察か。

 どこまで飛んで、どんだけの被害が出たのか調べないとな。

お読みくださり、ありがとうございます。

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