第118話、タケ、アロマと……。
「えっと、これはどういった会でしょうか?」
今、俺の部屋にはアロマだけがいる。
なぜかは知らないが、麗華さんから、『今、アロマさんを呼んできますから、お二人でちゃんと話してください』そう言われて数分後の出来事である。
「……あ、あのですね……」
アロマは、緊張した様子でほんのり頬を紅潮させてる。
「はい」
一体、何だというのか。さっぱり分からん。
「私、タケさんと……け、けっ……」
ん? 何が言いたいんだ。
「結婚するのですよね」
「うん。陛下からそう言われましたから」
アリシアの件も、予想外ではあるけど解決したしな。断る理由もなくなった。
地位と、名誉を全く要らないなんて人はまずいない。何より、俺自身、アロマの事を嫌いじゃない。麗華さんと比較するのは、彼女に対して失礼だと思う。でも、あえて比較するなら――。
麗華さんはぐいっ、と突っ込んでくる強さがあり、アロマはどこかよそよそしい部分を残している事だろう。これでもっと積極的に来られたら、嫌とは断れない美しさがある。結局の所、二人の差は、それだけの違いでしかない。
「タケさんのお気持ちを聞いているのですわ」
うん? 俺の気持ち?
陛下に好みでもない女性を薦められたら、この話は受けなかった。
魅力的なアロマに好意を寄せない男はいないだろう。
「俺はアロマをキレイだと思ってるし、女性として魅力的だと思ってたよ。ただ、アリシアの事があったから……」
「妹の事がなければ……ど……ですの?」
うん、最後の方が尻すぼみになってて聞き取れなかったけど。アリシアの件を気にしないならって意味だよな。アロマ、俯いてるけど耳がめっちゃ赤くなってる。
「うん。気がかりが解消されたから……」
おっ、こっち向いた。なんだか目がうるうるしてきた。
「……はい」
「アロマと結婚する事に否はないよ」
あぁぁぁぁ。そうじゃねぇだろ。俺。多分、これはあれだ。アロマは陛下が命じたから仕方なく結婚するのか? って聞いてんだよな。これじゃ余計不安にさせちまうんじゃ……。
「そ、そうではありませんわ」
――だよな。
「うん。ハッキリ言うよ。俺はアロマと結婚したい。誰かに言われたからじゃなくて、俺の素直な気持ちとして」
「……したいですか?」
うわっ、直球だな。そりゃこんな美人でスタイルが良い女性なら、誰でも抱きたいと思うじゃん。言っていいのか。まだ披露宴もあげてないのに……。
ええい。ままよ!
「うん。アロマを抱きたい!」
「ひぇっ……」
えっ、なんでこんなに動揺してんの。
「そうじゃありませんわ。そりゃ私も……たいですけど……」
えっ、違ったの? 『したいですか?』だったよな。それってエッチじゃねぇのか。あ……。
「あぁぁぁ。ごめん。先走りすぎてた。結婚ね。うん。したいと思ってるよ」
うわぁ、わかりやすっ。今、笑いかけた。すぐ素に戻ったけど。
「あの、では……私の事を……」
「うん。好きです。俺の嫁になってください」
「ぐすっ――うっ……」
えっ。何で、ここで泣くの……。何かしたのか。俺。
「えっと、アロマさん。何で?」
「ぐっ、ひっく――。ごめんなさい。嬉しかったのですわ。私、殿下と籍を入れた時にも、そんな事を言ってもらってなかったんですの。だから……」
あぁ。嫌々でも、ムコ入りした豚に、尽くそうとしたんだったな。
結局は豚の謀略に利用されただけだったけど。
クソッ。こんなにアロマを苦しめてたんなら、もっと苦しませてから殺せば良かったぜ。ただ灰に変えるだけじゃ手緩かったな。
「アロマ。大丈夫だから。アロマは十分魅力的だし、俺の好みだよ。なんなら、い、今すぐにでも……え、えっ、エッチな事をしたいくらいだ」
うわぁぁぁ。アロマの顔、さっき以上に赤くなった。そんなに熱のこもった視線向けられたら。息子がヤバい事になるぞ。
「あの、し……いのは……けど……披露宴が済んでからにしますわ」
ですよねぇー。麗華さんとは結婚式前にキスまではしたけど。
やっぱ筋金入りの貴族の令嬢はちげぇわ。
「うん。期待してる」
うわっ。アロマ、体をくねくねさせて……。というか、本当にくねくねするんだな。初めて見たよ。胸元がぷるぷる揺れてるし。これ麗華さんより大きいんじゃ。
あひゃひゃ。初夜が楽しみだな。
「あの……タケさん」
「うん、なに?」
「さっきから私の胸ばかり見てるようですけど……」
すごいな、あんな状態でもちゃんと異性の視線には敏感なんだ。
「う、うん。アロマが魅力的だから……つい……ね」
ぐふふ。また揺れてる。このたわわに実ったメロンを揉みしだきてぇぇぇ。
でも、予定してた披露宴の会場があのザマだしな。くっ。失敗したぜ。
せめて会場だけは、壊されないように死守するべきだったか。
「あの、麗華さんとは……け、結婚式の前にどこまでされたんでしょう?」
うはぁぁ。上目遣いもピカイチだな。
これをサラフィナがやったら――、あざといの一言なんだけど。アロマがやると自然だからな。すぐにでもベッドに運びたくなるぞ。
「え、うん。女性陣の集まりでそんな話はしなかったの?」
よく女性同士だと、エッチの内容まで話すって聞くからな。
「あ、はい。さすがにサラフィナさんもおりますので。そこまでは――」
「そうなんだ……ホッ。えっとね。キスはしたよ。一度だけ」
あは、唇を指でなぞってる。麗華さんの唇は薄いけど、アロマはちょっとぷっくりしてるよね。そこも男としてはそそられるけど……。
「一度だけですの?」
「うん。一度だけね」
「では……私も……一度だけでしたら」
えっ、なに。その対抗心。序列は付けないって言ってるけど、やっぱり気になるんだ。あぁぁぁぁ、そんな蕩ける視線向けられて断れる男はいねぇよ。
「じゃ、行くよ――」
「は、はい」
ぎゅっと目をつむって、カワイイね。少しだけ力が入ってる感じが初々しいというか。考えてみると、麗華さんと結婚したからか。何度もそういう事を経験して、俺も余裕が出てきたな。おっと。そんな事よりも。
じゃあ、その柔らかそうな唇をいっただっきまぁぁぁす。
両肩に手を乗せると、ビクッてした。本当に初めてなんだな。
ここは優しくリードして……アロマの背中に俺は手を回す。さっきまで火照ってた体が温かい。それにスポーツとかしてないから柔らけぇ。これは体だけで比較したら麗華さんよりも抱き心地はいいかもしれない。
「ふっ」
「チュッ――」
あぁぁ、柔らかい。小鳥がついばむようなキスだな。ちょっとだけ舌使っちゃお。ペロッ。うふっ。驚いて一瞬引いた。カワイイな。
「ふぅ……」
「アロマ。ごちそうさまでした」
あらら。アロマってば呆けちゃったよ。
「うふふっ。こんな感じですのね」
「うん」
良かった。とは聞いちゃマズいよな。こんなのリスナーに見られたら、『それ聞いちゃう? デリカシーに欠けるぞ!』とか言われちゃいそうだな。
この続きは披露宴の後か……いつできる事やら。
人が余韻に浸っているというのに、『カァーン、カァーン、カァーン、カァーン、カァーン』と、王都中の教会の鐘が鳴り響いた。
お読み下さり、ありがとうございます。
お陰様で初めて190ポイントを超えました。これもひとえに、皆様方のお陰です。
ありがとうございます。