第103話、タケ、つっぱらかる。
翌日、俺、侯爵、麗華さん、サラフィナの四人は王城へやってきた。
王の要件は決まってる。俺への褒美の授与だ。
他にも、拘束された者たちの件、それと、ヤツらの残留物のこともある。あれだけの観衆の中で、銃火器を回収するのは難しかった。戦車も放置されたままだ。で、それに関しての話もあるらしい。
前回以上に、謁見の間には人が集まっている。もっとも、封地貴族でここにいるのは侯爵くらいのものだ。他のほとんどが、法衣貴族であった。
なぜ、封地貴族の侯爵がずっと王都にいるのか、理由は簡単だ。病気の完治後もアリシアとアロマの事が心配だったから。第四王子を追い出して、心配事は晴れた。が、跡継ぎの問題は再燃した。訳ありの二人を放置して、領地には帰れなかったそうだ。けど、俺がアロマと結婚すれば、憂いなく戻れるらしい。
まさか、国王の褒美の件に、侯爵まで絡んでたとはな。まぁ、親心ってヤツか。
玉座には当然、国王が腰掛け、その両側に妃と第一王子がいた。今回は、豚は居ないんだな。当然か。前回、スパイの取り調べで失敗してるからな。
ふふっ、いい気味だ。そのまま奥へ引っ込んでいてもらいたいものだな。
「さて、よくぞ参った。タケ一行、並びに侯爵よ」
「ははぁ」
ふっ。俺も大人になったものだぜ。
俺に頭を下げられて、陛下もまんざらではなさそうだ。
「タケ並びに、その方らも此度の活躍、見事であった。部下より報告は受けておる」
国王は、俺から視線を外すと、サラフィナと麗華さんを見る。
サラフィナはなぁ、俺が人族に無理難題を吹きかけられないか、付いて来てるだけだ。だからって、頭すら下げねぇのはマズいだろ。サラフィナよ。
「陛下のお言葉を賜っているというのに、なんたる無礼」
ほらみろ。貴族連中から文句言われてるし。麗華さんでさえ、一応お辞儀はしてたぜ。日本式のだけどな。
国王は苦笑いを浮かべているが、ここで、荒事は避けたいはず。
「よいよい。タケの師匠と言うことであるからな。それで、さっそくだが褒美の話に移ろうと思うが……」
あっ、今、侯爵に目配せしたな。まぁ、いいけどさ。
「先日申し渡した通り、タケと侯爵家の次女アロマとの婚姻を――」
「「「「おぉ!」」」」
おぉじゃねぇよ。法衣貴族。この話しは前回も聞いてたじゃねぇか。王宮での習わしなのか。それ。場を盛り上げる的な。何かか!
それよりも、出るならここだな。そのためにアロマは連れてきてないんだから。
「異議あり!」
うひょー。意外そうな顔してんな王さま。侯爵にどうなってるって目配せかよ。
「ごほん。なんだ。タケよ。申し開きがあるなら申してみよ」
「はい。お言葉ですが、アロマとの婚姻に関して条件がございます」
おっと、首をかしげたぞ。ふふ、ここからは完全アドリブだからな。
「「「陛下のご裁量に意見するなど……」」」
「うっせぇよ。黙って聞いてろ」
顔真っ赤にしちゃって。俺がここに来たときの事をもう忘れてんのか?
「よい。タケ申せ」
「ほい。アロマと婚姻はする。だが、俺には他に好きな女がいる」
俺は麗華さんを見た。昨晩、二人でじっくりと話をしたからな。俺と麗華さんは、お互いに頷きあう。そして――。
「この麗華さんだ。だからアロマと婚姻を結ぶなら、彼女が先だ!」
宰相らしきじいさんが、陛下に耳打ちしてる。最初、陛下は誰だといった表情だったが、耳打ちされて意外そうな顔をした。
「ううむ、だが聞くところによれば、その者は奴隷だと言うではないか。その様な事をせずとも――その娘はタケのもの」
そこが勘違いなんだよ。そもそも、麗華さんは奴隷じゃねぇ。この国の法ではそうかもしれないが、俺が身請けしたからな。
だが、奴隷のままか、嫁にするのかは――俺の自由のはず。
「いんや。麗華さんは奴隷じゃねぇ。それに、彼女は俺と故郷を同じくする者だ」
さすがにこれは初耳だったようだな。しきりに侯爵へと視線を送ってる。
ここが勝負所だ。一気に攻めるぞ。
「ここの国の冒険者が、彼女を襲おうとして彼女はケガを負った。その治療代が支払えず、やむなく、奴隷商に連れて行かれたんだ。元はと言えば、この国の国民のせいだ。彼女をまだ奴隷と呼ぶなら――分かっているよな」
俺は目一杯の威圧を、この場にいる者たちに浴びせた。
ここで、まだ麗華さんを奴隷だなんてほざきやがったら、この城ごとぶっ壊す。
宰相と何やら相談を始めたけど、もう決定事項だ。俺の気持ちは変わらねぇ。
「ふむ。麗華とやら。この国の国民がしでかした事。この場で謝罪しよう」
ふふっ。さすが陛下だな。話が早くて助かったよ。
国王に頭を下げられ、麗華さんも「あ、いえいえ。終わった事なので」とか言ってるし。さてと、話を続けるか。
「んじゃ、話を戻すぜ。俺は麗華さんと先に結婚する。それでも良いなら、アロマとも婚姻を結ぶ。当然、どちらかに子供ができても、アロマの子を跡継ぎとして優先はさせる。これならいいだろ?」
良いと言ってくれ。じゃなきゃ。ご破算だからな。
ちなみに麗華さんと先に結婚するのは、家の中の序列を作らないためだ。アロマが先だと麗華さんが第二夫人になっちまう。それは剛人さんに申し訳ねぇ。俺の気持ち的にもな。一番は麗華さん。これは譲れないんだから。それに、アロマの子を跡継ぎに据えるなら角は立たねぇはずだ。
「トライエンド侯爵よ。それで異存はないか!」
「はっ、ございません」
おっし。この話終了。くっはぁ、うまくいって良かったぜ。
「ところでタケよ、今回捕まえた者の中に、そなたと同郷だと言っている者がおるが真か?」
あっ、宗っち喋ったのか……。やっべ。それ言っちゃう。ここで。
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