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WooTober異世界に立つ  作者: 石の森は近所です
異世界激動編
106/208

第100話、タケ、狼狽える。

「はぁ? 心だって? じゃあコイツには心があるって言うのかよ! 誰のためでもない。ただの自己満のオ〇ニーと同じ動画に――」


 あぁ、うん。ごめん。俺も宗っちの意見に同感だわ。だいたい、最近までモザイクの仕方も知らなかったからな。そこに心があるのかって言われたら、ねぇな。それよりも、麗華さんの前だからな。言葉は考えろよ!


「タケさんは誰かのために戦っているんです。そして、その動画を配信しているんですよ。あなたのように、人を不幸にするために戦っている訳ではありません。だから心がないって言うんです。あなたがいくら格好良くても、誰かを幸せにしていますか。確かに、笑いは提供しているのでしょう。でも、それはアナタじゃなくてもできます。違いますか」


 ん、確かに、兄貴の仇を取るために戦ったこともあるけど、それ以外はな……。でも麗華さんが、こんな俺のために言ってくれてるのは嬉しいな。


「俺がカッコいいだって……。俺が、カッコいい。俺が……」


 ぶっは。今の話のポイントはソコじゃねぇだろ。宗っち。今のは、おまえじゃなくても笑わせてくれるヤツはいるって話しだろうよ。何を勘違いしてんだ。


「分かりましたか?」


 いや、麗華さん。宗っち、絶対に分かってないから。多分、違うと思うよ。


「フフッ。よく分かってるじゃないか! 君の名前を聞いていなかったね。名はなんというんだい?」


 ざけんな! 麗華さんにカッコいいって言ってもらえたからって調子に乗りやがって。何が君の名はだ。どこのアニメだよ。今更キザっぽく振る舞ったっておせぇからな!


「アナタに名乗る名前は持ち合わせていません。それより、反省してください。あなた方のせいで、ザイアーク王国は迷惑しているんです」


 よく言ってくれた。麗華さん。でも、宗っちが戦ったのは俺だけだしな。しかも惨敗してるし……。宗っちにどれだけの責任があるのかと言われると。分かんねぇな。


「さっきのは素晴らしい魔法でした。敵ながら憧れちゃいます」


 ん、誰、コイツ。

 いつの間にか、俺たちの周りには人だかりが……。その中の冒険者の格好をしている男が喋ってる。それも宗っちに向かって。なんで、俺じゃないの、勝ったのは俺だけど。地味な魔法しか使ってないからか。


「はい! 本当にすごかったです。良かったらうちのメンバーに……」


 いやいや、アナタも誰よ。宗っちの表情が驚きに変わってるじゃん。まさか宗っちも童貞なのか、ビキニ・アーマーの子に声かけられて鼻の下伸びてるぞ。


「僕に憧れる……メンバーに……」


 ニヤニヤし出したぞ。ほら見ろ。宗っちが図に乗っちまったじゃねぇか。さっきまで赤面して怒ってたのに、調子がいいな。もしかして、チヤホヤして欲しかっただけとか……。あっ、今俺の方、向いた。しかも何、勝ち誇ってんだよ。


「あはは、仲間かぁ。うーん、君たち次第では仲間になっても――」


「残念ながらそれは無理だな」


 おっと、また部外者の登場か、と思ったら。こいつ、アレじゃん。マッドサイエンティストじゃなかった。狂蛇の剣(マッドスネークソード)の生き残り。名前なんだっけ……。


「君たちは騒乱罪の罪で拘束される。少なくとも刑が済むまで自由はない。引っ捕らえろ!」


 周りを取り囲んでいた治安維持の兵士たちが、宗っちたちを連れていく。なんだか閉まらねぇ終わり方だが……一件落着かな。


「タケ殿。実はタケ殿に知らせなければならない事がある。アリシアさまが襲われた――」


「なにッ――」


 俺は王都を視界に納めると、瞬間移動で消えた。

 ざけんなっ。俺たちが戦っている間に、襲撃されたっていうのか。クソッ。抜かった。工作員を捕まえたときに、見張ってたヤツがいたっておかしくはなかった。俺が後を付けられて――クソッ。俺のせいだ。俺が考えなしだったから。チッ。

 俺は侯爵家からほど近い教会に転移すると、一心不乱に走った。

 はぁ、はぁ、はぁ。侯爵家の門は壊されてねぇ。


「タケさま。お帰りなさいませ」


 アリシアが襲われたって言うのに、守衛の様子は変わらねぇ。大丈夫なのか。

 守衛に手を挙げて敷地の中に入る。アリシアの部屋は確か一階の奥だったな。俺は屋敷に入ると、一目散にアリシアの部屋へ向かった。ここだな。ドンッ。勢いよくドアを開けると、血の臭いがした。カァッと、頭に血が上る。アリシアに万一があれば、兄貴に申し訳が立たねぇ。そんな気持ちで。中へ入る。そこには――。

腹を切り裂かれ、眉間に矢が刺さった見知らぬ男が倒れていた。


「アリシアッ!」


 部屋の中を見回すが、誰もいない。どこだ、どこにいる。

 ベッドに向かうと、そこの奥に、見覚えのある剣とアリシアの弓が置いてあった。

 ん、どういうことだ。侵入したのは、そこの黒ずくめのヤツで間違いない。

 銃だって死体の脇に落ちてる。もしかして無事なのか……。でも誘拐されたって事も考えられる。俺はアリシアの部屋を飛び出した所で、声をかけられた。


「おいっ、タケ殿落ち着け」


 だからおまえ誰だよ。あっ、思い出した。ガリアンだ。


「離せっ。いつまで肩掴んでんだよ。俺はアリシアを――」


「アリシアさまなら無事だ!」


 はぁ、俺は不可解そうな顔を向ける。だって、おまえさっき言ったじゃねぇか。アリシアが襲われたって。ここに居ないって事は、重篤とかそんなんじゃないのかよ。


「ここは検分が終わってないからな。アリシアさまには談話室へ移ってもらった。だから、もうここに敵はいない。落ち着け」


「タケさん」


「タケ様」


 そこに、麗華さんとサラフィナも追いついた。俺たちは、ガリアンに案内されて談話室へ向かった。

談話室に入ると、そこには侯爵家が勢揃いしていた。


「おぉ、婿どの。お役目ご苦労であった」


 お役目って……何でそんなにご機嫌なんだよ。侯爵。


「タケさん、本当にお疲れさまでしたわ。そんなに私を――」


 いや、別にアロマのために戦ったわけじゃないからね。俺は、自分のために戦ったんだから。麗華さんといい、何か勘違いしてるよな。


「で、何がどうなってんの?」


 ご満悦な様子のアロマと侯爵はいい。俺は、その隣に腰掛ける、おなかが大きくなったアリシアに向け尋ねた。しばらく見ねぇ間に、デカくなったな。あの細かったアリシアが……女ってすげぇ。


「それは私が説明しよう」


 談話室のドアを開けてくれたガリアンが、俺の後ろでそう言った。

 おまえが説明するなら、ここに来る必要ねぇじゃん。まぁ、聞くけどさ。って、何でガリアンがアリシアの隣に座ってんだよ。使用人ならそこのレオナルドや、嫌な顔のガトレンスキーのように立って――えっ。侯爵が何も言わねぇ、なんでだ。

 俺たちが席に着くと、ガリアンは話し出した。


「タケ殿たちが出て行った後、屋敷の警備は万全だった」


 万全じゃねぇだろうよ。実際に入り込まれてんだから。


「だが、万一の事もある。心配だった私は、アリシアさまの部屋にいた」


 まぁ、あるか。それはご苦労だったな。でも、コイツが銃を持ったヤツに勝てるとも思えない。一体どうやって――。


「男は、アリシアさまに棒のようなものを向けると、下卑た視線を向けたんだ。身の程知らずにもな。で、ベッドの影に隠れてた俺が剣で切った」


 あぁ。随分、油断してたんだな。普通は銃VS剣じゃ勝てねぇ。それはラスト・サムライで証明してる。で、あの弓はって事になるが。もはや聞くまでもねぇ。あれはアリシアの弓だ。腹を切られて、狼狽えてる間に放ったんだろうな。そして、ガリアンの説明もその通りだった。で、なんで、そこにガリアンが座ってんだ?


「で、何でおまえがアリシアの隣に座ってんの?」


 えっ、アリシア、何で視線が泳いでるの……。


「うむ、ソレなんだが……実は、アリシアさまとそういう関係に――」


 えっ。兄貴を殺した一味の仲間だったよな。それがどうすればこうなるんだ。

 まさか、ガリアンがアリシアの部屋にいたのって……そういう意味なのか。してた最中とかか。

 確かに、俺が知ってる、兄貴とアリシアはお盛んだったけどさ。でもそれは兄貴だからで。


 えっ?


「まぁ、婿どの。そういう事だ。これで気兼ねなくアロマと婚姻できるな」


 おい、侯爵、何をニヤけてんの。アロマの瞳もキラッキラしてるし。この先、どうなっちゃうの。俺!

お読み下さり、ありがとうございます。

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