雨男は職業のようです
魔方陣から出た光のまぶしさに目を閉じていて、再び目を開けるとそこは目の前にある街--おそらく大きさからして都市だろう--を一望できる緑の丘の上にいた。
「えーと、俺は繩井一平、17才、ボッチ、よし覚えてる。んで、早速異世界に飛ばされちゃったわけですが・・」
死ぬ前に持っていたものはなく、あるのは通学服だけだった。
「せめて傘は欲しかったなー、俺雨男だし」
そう呟きながら、一平は飛ばされる直前に話していた神との会話を思い出していた。
「まてよ、これがゲームの世界に似た世界ならステータスとかあるんじゃないか?」
ほかにも確認しなければならないことは沢山あるのだが、趣味がゲームであった一平にはそこがどうしても気になった。
「といってもどう確認すれば・・試しになんかやってみるか、「ステータス」」
・・何も起きなかった。
「むう、流石に無理か、出来たら楽だったんだけどな」
実はアイテムを使わなければ確認することはできないのだが、そうとは知らない一平は一時間ほど試行錯誤を繰り返していた。
「くそー、だめかー。っと、そういえば俺いま何も持ってないんだった。今日のご飯とか寝床とかどうしよ」
そう、現在一平は、完全なる無一文なのである。
「これじゃ街に行っても何もできないしなー。どちらにしよ、ここにいたほうが何もできないんだけど笑」
そういって背伸びをし、この街の門であるであろう場所に向かって歩き始めた。
目的地に着くと、上から見ても大きかった門がより大きく見えた。
「でけー、砦に合わせてこうしたんだろうけどほんっとでかいな」
多分20mくらいあるであろう門を見ながら歩いていると、一人の門番さんに止められた。
「おい、そこの変わった服着てるやつ、ちょっと来い」
「はーい」
そういって俺を呼んだのは、40代後半くらいのマッチョの、予想通りの門番さんだった。
「お前、ここに来るの初めてだろ、ステータスプレートを見せてくれ。」
ステータスプレートだと?なんとなく機能は分かる気がするんだが・・
「え?あ、、あの、、、持ってません」
「なに?じゃあどうやって入ろうと思ったんだ?」
「いやー、まあ、なるようになるかなーって感じで・・」
「なんだそりゃ」
「ははは・・」
「まあいい、持ってないんなら作ってやろう。ほれ、こっち来い」
「はい」
おお!俺のステータスプレートかー。どんななんだろうなー。
「この板に針を使って血を垂らせ。そしたらお前のステータスがブワッと出て来る」
「分かりました」
板はスマホくらいの大きさだった。というかそんなので出るのか。流石異世界ファンタジー。
「なんかでできた」
「お、どれどれー?・・って、ステータス高いな!?勇者か?・・ってなんだこの職業・・?まあいいや、ほらよ」
おっとっと、おじさん俺のプレート投げないでくれよ。
そのプレートにはこう書いてあった。
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名前:イッペイ・ナワイ
職業:雨男
レベル:1
体力:100
敏捷:100
筋力:100
魔力:300
物耐:60
魔耐:140
スキル:『雨乞い』『液体操作』『液体生成』『言語理解』『神託』
=====
・・・以上だ。
ちょっとまって、身体能力はまあそのくらいだよねで納得できる。
スキルも百歩譲ってまだOKだよ?。うん。
でもさ、雨男は職業じゃないよね?どう考えても。
一応前例がないか聞いてみると、
「いや、そんな職業は見たことも聞いたこともない」
ですよね~。まあ、どうやら乞えば降る感じなので、出かけるときに毎回雨、ということにはならなそうだ。
そうだ、職業ばっかりに目が行ってたけど‥
「あのー、俺のステータスって高いほうなんですか?」
「あ?・・あ!そうだったそうだった、職業に気を取られて忘れてたよ。うん、お前さんのステータスは十分高いだろうね。なにせ普通の人はレベル一の時は個人差があるが、大体平均30くらいだからな。そのステータスなら冒険者として食っていけると思うぞ」
「おおー!」
「まあ、だからって油断するとすぐポックリだからな。気をつけろよ、命は一つしかないんだから」
「は、はい」
実は僕先ほど一つの命を散らしたばかりなんですよおじさん。
「じゃあ僕無一文なので、街で稼ぐ方法を探そうと思います」
「そうだったのか、ならギルドに行け。お前なら稼げるだろう。そうだ、俺の名前はクロルだ。ギルドで何かあったら名前を使え。多分役に立つと思う」
「分かりました。ありがとうございました!」
「おう、達者でな」
「はい!」
よし、取り敢えずある程度の情報が入ったんで、街とかギルドでもっと情報集めるとするかー!