帰り道の神社
学校が終わって、僕とカオリは一緒に帰る。
毎日、一緒に帰ろうと約束したことはない。
何度か帰るタイミングが一致してから、自然と一緒に帰るようになった。
二人とも一緒に帰っている理由を明確にしようとしたこともない。
「カオリって帰る方向、逆じゃなかったっけ?」
帰るタイミングが一致するようになったのは最近で、それまでは反対方向にカオリは帰っていた。
「うん。実は引っ越ししたんだ。」
「そうなんだ。」
僕はそれ以上は聞くことを控えた。
家庭の事情か何かだろうか。あまりプライベートに踏み込むのは良くないと思った。
「ねぇちょっとお参りして帰らない?」
カオリは帰り道に見える時間神社を指差しながら言った。
「うん。良いよ。」
僕たちは神社の境内に入っていく。
そして賽銭箱に小銭を入れて手を合わせる。
合わせながら僕は横目でカオリを見つめていた。
やはり綺麗だ。
「ねぇ、何をお願いしたの?」
突然カオリが目を開けてこちらを見たので、僕は見ていなかったふりをする。
もう遅かったと思う。
「お願いすんの忘れてた。」
「何それ。何してたのよ。」
「ただ目を瞑ってた。」
本当はカオリとずっと一緒にいれますようにと心の中で呟いていた。
「ねぇ、この間私のこと好きって言ったよね?」
「うん。」
僕の手に力が入った。心臓の鼓動も段々と早くなっていく。
「じゃあさ、私がどんな私でも?」
「どういうこと?」
「ユウくんの見てる私は本当の私ではないってこと。」
カオリは何を言っているのだろう。
彼女の表情は一ミリも笑っておらず、真剣に見える。
「言ってる意味がわからないんだけど?」
「だからね、ユウくんは私の全部を見たわけではないでしょ?だから、本当の私のことを見ても、私を好きって言ってくれる?」
何か人に言えないことや隠していることがあるのだろうか。
僕は無意識に顔をそらした。
どんなカオリでも良いなんて言う自信がないからか。
それとも好きかどうかちゃんと理解していないからか。
「なんてね。さっ、帰ろ。」
カオリのその笑顔は何かを隠すような笑顔に見えた。