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凍えた大地と温もりの在りか

童話 太陽神デニスと模倣の陽光

作者: 透坂雨音



 その世界には世界に灯りをつけて周る存在、太陽神デニスがいた。

 デニスの役目は照らす事。

 暗闇に生きる生物たちが不便しないようにと注意深く、灯りを絶やさないようにし続ける事だった。


 やがて、始まりの日から幾日、幾月。長き時を生きた命たちは灯りの下で、世界を自由にわたり歩くようになった。

 だが数日もしないうちに、やがて互いを傷つけ始めた。


 それを見たデニスは灯りを取り除き、人々は争いを止めた。

 しかし代わりに人々は生活がままならなくなる。


 それゆえ、人々は知恵を絞り、デニスの灯りを自分達の力で模倣することで耐え忍ぼうと行動した。それは辛く険しい道のりとなる。


 多くの物が不便し、未知に惑い、満足に歩けずにつまづいた。


 しかし、人々の惨状を目の当たりにしてなおデニスは、争い合う人々が生まれぬよう、灯りを再びつける事はしなかった。


 手探りで進む人々の歩みは遅々として拙いものだった。


 灯りの下でならばいとも簡単にできる行いに、二倍、三倍の時間と労力を費やして、

 時に再び小さな諍いを起こしながら

 時に和解し協力しあいながら、

 多くの歴史を積み重ねていった。


 道のりには 長い、長い時間がかかった。


 けれど彼らはとうとう、長い時間の果てで、自分達の力でわずかな世界を照らす光を生み出せる場所まで辿り着いた。


 それを見たデニスは、世界に再び灯りをつけることを決めた。


 暗闇も灯りも誰の心にあり、生み出せるものである。

 照らす存在(たいよう)があろうとなかろうと、それらは絶えず生まれいづるものであった。


 ならば、己はただ役割をこなし見守るのみ、と。


 デニスの灯した明かりは世界中を照らしていった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 神話的な雰囲気と、細部を描き過ぎない文章が調和していて良かったです。灯りも暗みもある世の中であり、個々人でもあるけれど、心の中にともされた灯は、大事にしたいですね。
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