話合
取り敢えず村?砦?の中に通された
兵舎のような建物の横の掘っ立て小屋のような建物の中に入れられ周りを兵士に囲まれ事情聴取される
俺は洗いざらい答えた
パン屋をやっていたが冒険者に転職したことも
その冒険者の仕事での護衛中にハイリッチに襲われた事も
何故か俺がアンデッドを率い、商隊を壊滅させたと言われた事も
その後火炙りにされ、神に会った事も
そして前世が別の世界の住人であった事も
重々しい空気の中、先程の女僧侶が口を開く
「もし、その事が真実であったならばこれは深刻な事態です」
「どういう事なんだ?」
先程の騎士が女僧侶に尋ねる
「この方の仰っておられる事が事実ならば、この方は勇者となられるべくして生を受けた身。パンを美味しく焼ける加護とやらは聞いた事がございませんが、神に愛されし勇者とならば鍛練によりその様な加護が付いたとしても不思議ではないかと」
「ということは、こやつが、いや、この方が本当に勇者だと?」
「でなければ説明がつきません。あの廃墟の街は先代教皇様が御命と引き換えに障気を払った地、されど強力な呪いのせいで常人では立ち入る事が出来ません。それに障気溢れる村でのゾンビ討伐などこの砦に駐屯している全戦力でもかなわぬでしょう」
「今村の方には確認の為、斥候兵を放っておるが」
「しかし、深刻なのはその様な事では御座いません。この方がまこと勇者なれば、魔王が世にいでしその時より着々と力をつけている筈でございました。しかし神の間に行っている十年の間何も出来ておりません」
十年のハンディキャップがあるわけか
「その間も魔王は力を蓄え続けている筈です。そして今代の魔王はハイリッチ、死の街を増やし、そこから万の屍兵を生み出す魔物……」
十年の間に磐石な地盤を築かれたわけか
「勇者様を人の手で殺めてしまうなど……魔の者に打ち倒されたならばすぐに次の勇者様が出て来る筈です。いつまでも勇者様が世に出て来ない事に不思議に思っていたのですが……人の業により殺されたとは……」
これは思っていたよりも深刻な事態らしい
人の手により人の救済者となる勇者を手にかけてしまう事は神から伸ばされた救いの手を払いのけてしまうのと同義らしい
勿論人類全体の総意ではない訳だが、そのせいで10年というペナルティが課せられたのでは?というのが僧侶ちゃんの見解らしい
狭量な神さんも居たもんだな