復活
ー不死鳥は自らの身体を燃やし灰の中から生まれ変わるという
古の聖者は全人類の罪を背負い一度死に、神に赦され甦ったというー
そこは白い部屋であった
いや、部屋なのか空間なのか
広いのか狭いのか自分の感覚が酷く曖昧だった
そこに男がいた
『悪いね、こちらの手違いのようだ』
いや、男なのか?男のようでもあり女のようでもある
まだ小さい幼子のようでもあり、しわがれた老人のようでもある
「あんたは?」
『私を表す概念は色々ある、でも一番わかりやすいのは神かな』
神は言った
俺には力があると
そしてその力は魔王を討ち滅ぼす為の物であると
神は言った
魔王が世に出、力を振るうと俺の力も目覚め魔王を脅かすであろうと
神は言った
魔王を打ち倒せと
そして俺は目覚めた
微かな目眩の中起き上がる
ここは何処だ
教会のようだが僧侶も司祭も牧師もいない
古い教会のようで所々壁が崩れている
崩れた天井から月明かりが射し込んでいる
「打ち捨てられた教会か」
神様も魔王を倒せとかいうんなら聖剣やら伝説の鎧やら最強の盾やらくらいよこしてくれませんかね
これ布の服しかありませんけど
腐っていてもしょうが無いので外に出てみる
「うへぇ」
瓦礫の山だ
打ち捨てられたのは教会だけではなく街全てであるようだ
人の気配が全くしない
しかし、あることに気づく
「ここは……」
まさかそんな筈は……
そう思い、俺は心当たりのある場所に駆けていく
もし、俺の思う通りならば
そして俺はその場所にやってきた
でかい木の板で作ったパンの看板
間違いない
ここは俺の生まれ育ちパン屋を営んでいたあの街だ