表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寝とられ男の足掻きと挽歌  作者: ピョン太郎
1/24

唐突な日常の終わり

またやっちまった

やっちまったってかヤラレちまった

そんなに俺は甲斐性がないのかよ!


一度目は前の人生で

その事実がわかった時は、そのまま高層ビルに行って、前世とはバイバイしてしまったけど、そのおかげ?か神様が同情してリスタート。

わけもわからず妙な能力を貰って未知の世界にきたんだが、

どうしてパン屋なんだよおおおおおおお!!

こう、何て言うかさ、こういうのは貴族のせがれとか?有名な冒険者の息子とかそういうのが相場だろ!

パン屋……

いや、良いけどさ、加護も『美味しいパンが焼ける』加護だし、全然良いよ、むしろパン屋仲間からはうらやまれてるよチクショウ!

ただ、カミさんが悪かった。いや、違う、良かった。

良すぎた。俺には良すぎたカミさんだった。

そらあの白金級冒険者パーティのクソイケメンクソコマシ戦士野郎にナンパされるわ!

そらホイホイ付いてっちゃうわ!

そらそやわ、俺でも超絶かわいいアイドルに色仕掛けされたらわからんし。

まぁ、仕事が忙し過ぎてそんな暇無かったけどな。

そんでその事問い詰めたのが昨日

嫁は「ごめんね、でていくね」だとさ

んで今日義父がきてここの店の改装資金の支払いが出来ねえなら出ていけって言われて途方に迷ってる

ちなみに義父の職業は金貸しだ。こえぇ

アイツに睨まれたらこの街では商売出来ねえ

んで今酒場のカウンターでツレを待ってるとこなんだが


「よお!待たせたな」

聞き慣れた野太い声が後ろからかけられる

1コ下だが、俺の幼馴染み(男)だ

名前はヨーゼフ、三軒隣の靴屋のせがれだ

バカだがいい奴だ

「いや、先に飲んでたわ」

俺はもう3杯目だ

「んで?今日はどうしたんだ?」

「嫁が浮気した」

「またかよっ!」

「……また?」

「あっ、やっべ」

「またってなんだよ?」

「えーっとほら」

「……」

「えーっと…」

「…」

「いや、俺が言ったって言うなよ。実はお前んとこの嫁さん結構色んなとこでツマミ食いしてるって噂がな」

マジかよ、全然知らなかったわ

そしてこいつ、口軽すぎだろ、大丈夫か?

そして噂を聞いたならその時点で俺に報告しろ!

お前のヘソクリ、カミさんにバラすぞ

というか、俺が朝から晩まで汗かいて働いてる間にそんなことしてたのか…

「んで、お前の嫁さんの実家ってヤバイじゃん?だから絶対俺が言ったって言わないでくれよ」

「……言うも言わないも家追い出されたわ……」

「まじで?」

「今日義父が来て、貸した金返せないなら出ていけってな」

「またまた、そんな事言って、本当はお前が頭下げて、復縁させて下さいっていうの待ってるんじゃねえの?」

「まあ、カミさんは離縁も何も言う前に出てっちまったけどな」

「まじか…………ほんで、どうすんの?」

「………どお~~すっかなぁ~」

俺は残ったエールを飲み干した

正直、なんかもう疲れた


義父に頭下げて嫁を迎えにいったら今迄と同じ暮らしは続けられるんだろう

俺の両親の事を思うと嫁さんを迎えに行った方がいいんだろう。

引退した親父とお袋は親父の故郷で暮らしてる

先代の儲けは先代のもんだから俺は店は譲り受けたがその他の財産は全て固辞した

嫁さんの実家が金持ちだったからな

改装やなんかもしたんだが、全部嫁さんの親に借りるからいいって言ったんだ

街でも有名な金持ちだったからな

俺も気が大きくなってた

それが間違いだったんだろう。

両親が一生をかけて文字通り一生懸命育て、守ってきた店を嫁さんの実家とはいえ、他人にむざむざ奪われるなんざ本当に親に合わせる顔がねえ。

しかし、頭下げて嫁さんを迎えに行く気にもなれねえ

大人になるしかないのか?

大人になるのは悲しい事なのか?

ヨーゼフはその力士のような体格に似合わねえ、迷子の子犬のようなツラしてやがる

クソッ!

こいつに当たる訳にもいかねえし、俺は最後に残ったプライドを、なけなしの気力で保持し、木製のエールのジョッキをにらみつる


とその時、酒場の扉が乱暴に開かれた

「この中にハーラ・アインツバッハという方はおられるか?!」

この街の衛士だ。

こんな田舎領地でもここは領主様のお膝元だ

衛士もそれなりの数がいる

しかし、こんな時間に、こんな大衆酒場で人探しとは、タダ事ではないだろう

っつうかその名前は!?


「俺だけど?」

店の隅の方で、男2人女2人で飲んでいたテーブル席の男の内、1人が立ち上がる

「ッ!」

あの野郎は俺の嫁と浮気した冒険者の間男野郎だ

今は飛ぶ鳥を落とす勢いの白金級冒険者パーティ、その名も【プラチナ】、そのリーダーにして、この国でも3本の指に入るという凄腕戦士。

流れる様な銀髪とブルーの瞳、甘いマスクでご婦人方からの人気ナンバー1

俺の嫁を横からつついて唾つけて、俺の人生を現在進行形でどん底に叩き落としたクソ野郎だ!


「この街の領主様がお呼びなのでご足労頂きたい」

「~っ、マジかよ、今から?」

「早急にと」

「~~わかったよ、行けばいいんだろ、

ったく、こんな夜中に……」

ハーラは上着を手に取り、対面に座っていた金髪の街娘らしい若い女性に向かって「今度は二人で飲もうね」といって立ち去る

………………何もかもが気に障る野郎だ………………



「よし、決めたぞ」

「あん?どしたどした?」

子犬のヨーゼフがいきなり喋り出した俺に驚く

「俺は冒険者になる!」

ヨーゼフが豆鉄砲を食らった鳩になった

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ