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1.旅人の星

 広い宇宙(うちゅう)には星から星へと旅する者たちがいました。


 その者たちは人ではありませんでしたが、見た目は人にそっくりで、名前も無いので「旅人(たびびと)」と呼びます。


 「旅人(たびびと)」たちはこれまで長い時間をかけてたくさんの星を見てきました。

 それは「旅人(たびびと)」が住める土地を探(さが)していたからです。


 「旅人(たびびと)」は生まれたときから「旅人(たびびと)」だったわけではありません。

 ちゃんと生まれ育(そだ)った星があります。


 その星は科学(かがく)技術(ぎじゅつ)や建築(けんちく)技術(ぎじゅつ)が発展(はってん)していて、街はいつでもネオンが輝(かがや)き、みんなが楽しくはしゃいでいる、とても賑(にぎ)やかでとても便利(べんり)な星でした。


『命令(めいれい)を聞く者は、自由(じゆう)に暮らしてよい』


 統治者(とうちしゃ)の言うことを嫌(いや)がらず従(したが)えば、だれでも生活できます。


 けれど、ネオンの明るさが苦手(にがて)な者や騒(さわ)がしい所が辛(つら)い者はいつも頭が痛くなっていましたし、みんなと一緒にいることで気分が悪くなってしまう者には、生きていくのがたいへんな星でもありました。


 ネオンがまぶしいので減(へ)らしてほしいとお願(ねが)いをすると、


『科学(かがく)技術(ぎじゅつ)の発展(はってん)の邪魔(じゃま)をする反社会(はんしゃかい)的な意見だ。許せん、牢屋(ろうや)に入っていろ』


 と。

 捕(つか)まってひどい罰(ばつ)を受けさせられます。


 耳が疲(つか)れてしまうのでもうすこし静(しず)かに暮(く)らしたいとつぶやくと、


『みんなが楽しくしているのに邪魔(じゃま)をする悪いやつらのわがままだ。許せん、牢屋(ろうや)に入っていろ』


 と。

 捕(つか)まってひどい目に遭(あ)わされます。


 気分が悪くなってしまうのでみんなと一緒(いっしょ)にいられない者が、統治者(とうちしゃ)に隠(かく)れて暮らしていると、


『見つからないように逃げだすとはなんとも許せないことだ。これでは税金(ぜいきん)が取れず、命令(めいれい)をきかせることもできないではないか。牢屋(ろうや)に入れるだけでは怒りがおさまらん』


 と。

 捕(つか)まってみんなの前に引きずりだされて死刑(しけい)にされてしまいます。


 そうした星だったので、ネオンが苦手(にがて)で、騒(さわ)がしいのが辛(つら)くて、みんなと一緒にいると気分が悪くなってしまう、そんな者の中には「旅人(たびびと)」になる者がいました。


 けれど、そうした者がみんな「旅人(たびびと)」になれたのではありません。

 歳(とし)をとって動けない者、お金がない者、みんなの批判(ひはん)がこわい者は、「旅人(たびびと)」になることができませんでした。



 少なくはない「旅人(たびびと)」たちが宇宙に散らばって行きます。


 宇宙はとても広いので、星を出てしまったら二度と帰ってはこれません。

 でも「旅人(たびびと)」たちは後悔(こうかい)することなどないのです。

 むしろ星から離(はな)れられたことに喜(よろこ)びさえ感じています。


 幾つもの星を渡り、あるとき「旅人(たびびと)」の数名が遠く離(はな)れた星にやってきました。

 そこに住む者たちは、旅人(たびびと)たちから見ると技術(ぎじゅつ)や科学(かがく)や便利(べんり)さなどがとても時代遅(じだいおく)れでしたが、生まれ育(そだ)った星によく似た星でした。


 そして「旅人(たびびと)」にちょっと似ている生き物と出会いました。


 その生き物は、その星で「おっさん」と呼ばれています。



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