ロード、通信が回復しました!
今回の反省。
自動制御を多用すると自分の認識から抜け落ちる、つまり、忘れてしまうものが出てくる。
降参しかけていたバロルの後頭部を踊る大鎌13連の生き残りが直撃、その衝撃で喉元をサックリいってしまったのだった。そりゃもぅ、サクッと。その結果は余り詳しく語るとアレなんだが、まぁ、その……なんだ、有体に言って血の海だった。
「それにしても流石は魔王様。容赦ありませんでしたね!」
翼竜が嬉しそうに振り返る。
違う。そんなつもりじゃなかったんだ、とは言えず。
「竜を滅多刺しにして前肢へし折ったうえに、命乞いも聞かずにその首を一刀両断!こりゃ末代までの語り種ッスね!」
子孫もいないのに末代もないだろ、骸骨騎士?っつーか、語るな。なんかさりげなく話盛られてるし。
「でも、骨の軍勢にお呼びがかからなかったのは意外ッス。「面倒ぃしお前らに任すわ~」ってなると思って、アップしてスタンバってたのに」
「あー…まぁ、一応タイマンっつーことだったし?」
「流石、魔王様!」と翼竜が手を叩いて感心しているが、残念ながらこれは口から出任せである。侵入禁止の簡易結界を張ったお蔭で召喚術は封じられていた。自分で自分の得意技を封じていたのだ。本当、今回は反省点が多い。
「まぁ、骸骨の100体ぐらいなら炎の息で一掃出来ますから、数のうちに入らないですけどね」
首を一刀両断されてお亡くなりになったバロルは、ゾンビとしてきっちりちゃっかり復活を果たしていた。んでもって骸骨騎士と睨み合っていた。いいけどビームは出すなよ?
ゾンビ化――死者達の王たる者の特性と言うか特権と言うか。俺が倒した相手はそのレベルや生命力、討伐方法なんかに応じて復活し、眷族になることがある。バロルくらいになるとゾンビ化して当然だ。うっかり殺っちゃったもんで、めでたくおっきなお友達がデキちゃっていた。
「それにしても、バロルさんも丸くなられたものです」
「散々暴れさせてもらいましたし、何と言っても今や魔王様の僕ですから。それに相応しい振舞いというものがあるでしょう」
何とも殊勝な話だ。鼻先で笑って骸骨騎士を一瞥しなけりゃ、なお良かったが。
「だとよ、リューやん。コイツどーすんよ?」
「えー?好きにすればー?(棒読み」
イビルアイ(亜種)の向こうで竜族の長はえらく御機嫌斜めだった。それもそのはず、安らかに眠れの巻き添えを喰ってイビルアイ(亜種)が落ちてしまい、竜宮殿で観戦してたリューやんは一番アツいところを見逃してしまっている。
「竜王様のお許しも出ましたし、これからは魔王様の為にこの力、存分に振るいますよ!ハッハッハッハッハ!」
「いや、ハッハッハッハッハ!じゃなくて、お前、帰れよ」
「え?」
「そのデカい図体じゃ魔王城には置いてやれんのだわ」
翼竜でも庭先までだったのだ。
「それにお前が武闘派まとめてんだろ?アイツら連れてさっさと帰ってくれ」
遠巻きにこちらを窺う数体の竜達を指す。遠目にも何やら燻って見えた。
「魔王様がそう仰るのでしたら……」
渋々、と顔に書いてあった。やれやれ……
「新たなる我が下僕バロルに命ずる。同胞を率いて竜の里へと帰り、我が盟友竜王の下でその力を振るえ!」
「ははぁっ!」
条件反射で頭を垂れるバロル。王者の威厳とはこういう時にこそ発揮するものだ。
「何かあったら絶対に呼んで下さいね?直ぐに駆け付けますから!」
去り際にもまた鼻を鳴らしてバロルはまだまだ血気盛んだった。あれだけ血を流していながら……
とにもかくにも厄介払いは成功、飛び去るその背中を見送る。ゾンビ化したとはいえ、その肉体はまだまだフレッシュ。通り道に腐肉を撒き散らすようなこともないだろう。
もっとも。近い将来、竜王以下竜族は強烈な腐敗臭に悩まされることになるのだが、それはまた別のお話だ。
豹戦士「…で、言い付け通り竜の雛の映像を撮れるだけ撮ってきましたけど…」
ロード「でかしたっ!」
豹戦士「それどうするんですか?」
ロード「大人になる前なら魔王城に迎え入れることもできるんじゃね?って思ってさ」
豹戦士.。(この人は、幼ければ竜でもOKなのか?)