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死霊王(アンデッドロード)は眠らない  作者: 谺響
ロード、密使です!
6/77

魔王、恐るべし…

足元から溢れ出る紫色の霧が瞬く間に辺り一面に広がってゆく。


広域即死魔法、安らかに眠れ(レスト・イン・ピース)。対象も、範囲も指定しない。ただ発生した霧に触れた者の魂を砕け散らせるという単純明解な無差別殺戮呪文。機械族(マシーン)なんかには効果は無いが、身内に効かないとか逆にメリットでしかない。そんな大量虐殺向けの魔法が今まさに展開されていた。

(ドラゴン)1匹にやり過ぎ(Over Kill)じゃないか?との声が聞こえてきそうだが、いや、実際のところそうではあるが。実はこの魔法にはゾンビ化、骨化、再誕といった復活効果を封印する効果を添加してある。生命力の強い(ドラゴン)の場合、俺が倒した後にかなり高い確率でゾンビ化する恐れがあるのだが、それを予防できるのだ。むしろそれ故に、このチョイスだった。地味なのは大いに不満だが……大事なことなので改めて言うが、おっきなお友達はいらないのである。


「ぐるぅおおおおおおっっ!!」


「おぉ?」


霧を危険と見抜かれたのだろう。轟く咆哮が暴風となり、霧を吹き散らす。うわー、なんか一気に地味な戦いになっとる……こりゃ、あかん。またリューやんがブーたれる。


「まっ、それならそれで……やります…かっ!」


杖で宙を薙ぐ。その軌跡に沿って灯る13の光の点。それらが螺旋を描いて地面へと落ちてゆく。そこに現れるのは13本の大鎌。


「ゆけっ!」


号令に応じ、大鎌は高速で回転しながらバロルへと飛んでゆく。


「斬撃は効かんぞ!」


「ンなもん、知ってるわ!」


そもそもダメージを期待してはいない。早くもhitしたもの、打ち落とされたもの、半数以上の大鎌がバロルの足下に転がっている。が、


「ぬっ?!」


14,15,16…更なる追撃がバロルを襲う。一度打ち落とされた大鎌が再び舞い上がり、 バロルに襲いかかるのだ。流石に2本は完全に破壊され制御を失っているが、


「お替りもどーぞ、っと!」


同じ術式を更に展開する。一度に召喚する大鎌の数を増やせば良かったのだが、13という数字が何となくいいのだ。様式美ってヤツ?


「ぬぅぅっ!小癪なぁっ!」


吠えるバロル。破壊された大鎌の数が徐々に増えてゆく。もちろん、それを見越しての追加召喚だ。バロルが大鎌に翻弄されている間に、


「…で切り替えOK…っと。そいじゃボチボチ終わらせますかねぇ?」


呟いて杖を握り直す。見れば宙を舞う大鎌は4本しか残っていなかった。バロル、意外と頑張る子だった。


「なっ!?」


おー、驚いてるx2

そりゃ魔職が前線に出てくるとか思ってもないだろう。駆けながら杖を持つ右手に魔力を込める。暗い光が杖の先端部を覆い、それが湾曲した刃を形成して、杖はさながら大鎌の相を呈する。魔職がど突き合いで(ドラゴン)と渡り合えば会場も盛り上がること受け合いだろう。


「うるぁあ!」


ザクシュッ!


「ぐおぉっ!?」


振り上げた冥光の刃がバロルの前肢を切り裂く。


「斬撃効いてるじゃん?」


効いてくれなくては困る。無茶を通して無茶苦茶な勝ち方をしてこそ、魔王としての圧倒的実力を知らしめることができるのだ。目指すのは「魔王、恐るべし」だ。

傷付いた前肢での踏みつけをサイドステップで回避。躱しがてらもう一撃。更に反対の前肢が薙ぎ払いにかかるのを左の拳で受け止める。激突の瞬間、舞い散る血飛沫。


「ぐぅおぉぁぁーっ!?」


正確に言えば、受け止めたのは拳ではない。その先に生じた、有刺障壁スティンギング・バリアー。その鋭い棘がバロルの足の裏を貫いていた。バロルが足を引くと同時に障壁(バリアー)は音もなく消え、棘を真っ赤に染めた血が今度は地を染める。


「こんなこともできるぜ?」


と、おもむろに目の前の足を殴る。受けるだけでなく、こちらからも撃つ。衝突の直前に再び障壁(バリアー)が形成され、勢いそのままバロルの黒鱗を掻き分けて突き刺さる。


「オラオラオラオラオラァァッッ!!」


ラッシュの一撃一撃が、バロルの前肢を穿つ。両の拳だけでなく、蹴りからも障壁(バリアー)が発生する。


時折耳にする「最強の攻撃とは?」議論。忘れられがちだが、この「攻防一体」こそが、戦闘全体を通して考えた場合には最強ではなかろうか?一撃の重みでも、派生の速さでも、手数の多さでもない。例えそれらを全て兼ね備えた攻撃であっても、そこに更に「攻防一体」の要素を加えたものとぶつけ合うことを思えば、その価値は自ずと知れよう。

この有刺障壁スティンギング・バリアー、接近するものに反応して自動(オート)展開するだけならその辺の賢者(ウィザード)クラスでもやれないモノではない。しかし、衝突の際に内側の衝撃を緩和したり、刺突のダメージ係数を上げてみたりとカスタマイズしてある。色々と付け加えた結果、消費MPはお察し。並の賢者(ウィザード)なら自動(オート)展開の意味は恐らくないだろう。一番コストかかってるのは「(ドラゴン)が踏んでも大丈夫」を実現するための強度upだったりもするが、もはや本末転倒だ。


そんな“ボクの考えた最強の戦闘スタイル”にも幾つか弱点がある。

①消費MPがデカイ、は前述の通り。俺にはそんな問題ではないが。

②防御可能範囲が狭い。コスト面の問題と動き易さの為に展開範囲はとことん絞りこんでいる=術式が反応しない、つまり攻撃が通る箇所が実はけっこうあるのだ。

そして最大の問題が③、即ち。


本体のstrが低い件←


骨に筋力があるとでも?魔王といえどやっぱり魔職なのだ。今だってぺちぺち殴ってこつこつダメージを入れているが、殴ってもらってカウンターとった方が桁違いのダメージが出る。


「効率悪っっ!!」


殴り魔終了!もぅ、いい!飽きた!

まぁ、攻撃すんの面倒ぃ→反撃盾で守ってりゃいいんでね?の思い付きから始まったにしちゃ上出来か。


打ち砕く一撃(ハード・ブレイカー)!!」


物理特性に特化した衝撃魔法をバロルの前肢に叩き付ける。散々ど突かれたその足を、名前の通り一撃で打ち砕く。


「ぐぁぁぁぁっ!?」

ずうぅぅぅん!……


バランスを失った巨体が崩れ落ちる。


詰み(チェック・メイト)、かな?」


杖の先に伸びた冥光の刃を落ちてきた首に突き付ける。


「むぐっ…ま、ま」

ガガガン!!サクッ!


「「え?!」」

ロード「バトルだるぃ。マジだるぃ」


翼竜「お疲れ様です」


ロード「今日だけでもぅ、1年分は働いたな!」


骸骨騎士「でもまだ後始末があるッスよね?」


ロード「ぐぬぬ」

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