東コーナー、魔王ーーーっ!!
†西の荒野:特設闘技場
「レディース&ジェントルメーーン!長らくお待たせ致しました。間もなく、両選手の入場です!」
ちっす、俺ロード。第49代魔王。何か知らんうちにお祭り騒ぎになってて、ワロタ。
……ワロタ…
事の発端はリューやんこと竜王の一言。
「え?マジでやんの?俺も見たい!!」
自重汁。
内外、主に神族の手前、一部の武闘派竜が独断で魔王に挑んで敗れる…っつーシナリオじゃなかったのかよ?お前まで出張ってきたら魔族vs竜族の全面戦争の体になんだろが。取敢えずイビルアイ(亜種)でライブ中継を引いといてやっから。それで我慢しとけや。
武闘派のリーダー格の竜が一騎討ちを所望してきたのは幸いだった。自分の実力を誇示したいのだろうが、乱戦を避けたいこちらとしては願ったりだ。対象が増えりゃ加減も難しくなるし、同士討ちにまで気を配れないからな。リューやんは「多少の犠牲はしゃーねぇべ?」とは言っていたが、おっきなお友だちができるのはちょいと勘弁願いたい。
「まずは東コーナーから我らが王者!不死にして不死者たちの支配者!第49代魔王、L.D.オールドウィロー!!」
わーーっ!!
嵐のような声援に手を振って応える。はい、どもどもー。
「対して西コーナーからは挑戦者、武闘派竜筆頭!金色のバロル!」
大地を揺るがす咆哮に包まれて現れたのは、翼竜の3倍はあろうかという巨大な黒竜。
「なお、解説は私豹戦士と、」
「竜王がお送りします!」
……あいつら完全に遊んでやがるな…
「早速ですが竜王さんはこの死合、どう見ますか?」
「そうですね。魔王は死霊ですからまずそう簡単には殺せません。身体を徹底的に打ち砕けば取敢えず行動不能にはできるでしょうし、勿論、竜であるバロルにはそれをやってのけるだけのstrはあるはずです」
「成程、近接戦に持ち込めばバロルにも勝ち目はある、と?」
「ええ。ですが魔王は元々遠距離攻撃を得意とする魔術師タイプですから、まず間合いを詰めることが難しいでしょう。見所はバロルがどこまで粘って魔王の固有戦術を引き出せるか?にありますね」
「そうですね。サービス精神旺盛なロードの事ですから最上位魔法の乱れ飛ぶド派手な展開が期待できますよね!バロルの頑張り次第では。さぁ、リング中央に両者出揃いました!」
リングといっても特段何かあるわけではない。強いて言えば二者が睨み合う地点を中心に半径10km程の距離を置いて無数の観客が取り囲んでいる。その観客たちが、要は決闘の当事者以外が立ち入らないように簡易結界が施してある程度である。なお、結界の仕様上、審判員も立ち入り不可だ。っつか、死合に審判もクソもないか。
バロルが黒い巨体を揺らしながら気勢を上げる!
「魔王と言えど小さき者に遅れはとらぬ!ゆくぞ!!」
「おっと、開始のゴングもないままバロルの先制攻撃で開戦だ!火炎弾の高速連射!…14,15,16発の火炎弾がロードを襲う!これはっ!?ぜ、全弾直撃ぃぃ~っっ!?」
「屍体、骸骨には炎で火葬。順当な一手ですが、この火力では…」
「あっと!舞い上がる土煙の中、悠然と立つ影が!ロードです!ロード、あの猛烈な攻撃をものともしていません!この男、不死身かぁ~っ?!」
「全弾防ぎきっていますね。予備動作がありませんでしたから恐らく物理防壁を自動で展開しています」
「届かねぇなぁ~?お手本を見せよっか?そらっっ!!」
「?!ぐぉぉっ?!」
「突如湧き上がった炎の柱がバロルにヒィィーット!予想だにしなかった足下からの攻撃にバロル、躱すことも出来ません!」
「炎系最上位の地獄の業火!それを詠唱無しで…やってくれますね!」
「遅れはとらねぇンだよなぁ?しっかり着いてこいよ!!」
「ぐっ…ぐぬぅぉぉぉぉぉっっ?!」
「ロードが杖を振るう度に炎が湧き上がるぅぅぅっ!リングはさながら地獄の大釜だ!バロル、完全に炎に取り囲まれたぁぁっ!」
「今のはメ○ゾーマではないとか言い出しそうな勢いの大盤振る舞いです!!炎耐性のある竜でもこれは効きますよ~!」
「ぬうぅっっ!しゃらくさいわぁっ!!」
「バロルが荒々しく大地を踏み鳴らす!地獄の業火に焼かれながらも炎の息で応酬だ!」
「これは焦ったか?初手の火炎弾が通用しなかったのだから時間稼ぎにも…ああっ!やはり息は届いていません!魔法障壁に阻まれています!」
「骨魔とは違うのだよ!骨魔とは!!」
「ぬぅぅぅっっ!!ならば!」
「おああっとぉ!なんとバロル、先程の足踏みでひび割れた大地を掴み上げ、投げつけたぁぁぁ~っ!?天地崩壊っ!!巨大な岩盤に対してロード、逃げ場がないっっ!!」
「まだまだぁぁっっ!!」
「え?バロルの両目が眩く輝く!こっ、これは……」
「来ますっ!バロルの必殺技!!」
「目からビィィィーーーームッッ!!?黄金の光線が大地を抉るぅぅっっ!!とんでもない破壊力だぁっ!?」
「破壊を極めたあの一撃、並の防壁なら7枚は余裕で抜きますよ!」
「ああっと!しかしバロルの猛攻はまだまだ止まらない!一気に詰めて……容赦ない踏みつけの嵐っっ!!その巨体がっ、大地を砕くぅぅっっ!!ロード、このまま埋葬されてしまうのかぁぁっ!?」
「いや、ここにきてバロルの動きが止まった!一体どうした~?」
「ぐるぉあぁぁっ!き、貴様っ!?有刺障壁かっ?!だが、何故だっ!?」
「攻撃していたバロルがダメージを負っている!?ロード、有刺障壁で防いだのか?でも竜王さん、これって…」
「ハイ、バロルも驚いている通り、普通はあれだけのラッシュに対してもつものではありません。何かタネがあるはずです」
「お?もう気が済んだか?んじゃボチボチ行くぞ?」
「ぐおぉぉおぉおっっ!!」
「再びバロルの瞳が輝きだす!」
「あっと!魔王も詠唱に入っている!」
「うそ?あの人面倒臭がって詠唱とかしませんよ?ああっと、撃ち合いはバロルが早い!目からビー……いや、ビームで薙いだ!!しかし、ロードそれを回避!」
「……御影石を等しく全ての生者の胸に。死したる後には黙して語るなかれ。安らかに眠れ!!」
!竜宮殿:解説ブース
「――ブツン!」
豹戦士「えっ!?」
竜王「なっ!?」