ロード、密使です!
「ロード、密使です!」
豹戦士が大声と共に飛び込んでくる。お前、五月蝿い。
「内密の使いなんだからそんな騒ぎ立ててやんなよ、ったく……で、どちら様だ?お通ししろ」
「それが、その、そうも…庭園の方でお待ちですのでそちらまでお願い致します」
あぁん?俺にご足労願うっての?魔王様にぃ?
渋々玉座を降りて密使が待つと言う庭園へと向かった。
!魔王城:庭園
「おう、竜王ンとこのか。久し振りだな」
「ご無沙汰しております。と言っても魔王様の戴冠式以来ですから、6、7年振りくらい、それほどでもないですよね」
「ん~?そんなもんか?」
庭園で待っていたのは翼竜。8mほどはあろうかという巨体が巨大な翼腕を小さく畳んでちょこんと座っていた。そりゃ城内には入れんわ。竜王の配下でもコイツは比較的小さい方だろうが、それでもこの巨体……
この巨体で密使とか、ないわー。絶対、神のヤツに目ぇ付けられてんぞ?
「リューやんは元気ー?」
「はい。ただ最近の竜族は武闘派が勢い付いていまして、大分お悩みのご様子です。恐らくはそのことでしょう、我が主より手紙を預かっております」
渡された封書の封を切る。書面は軽い調子で切り出されていた。
“やっほー!まーくんおひさー!元気してるー?
実は今ちょっとウチの若い衆が何匹か滾っちゃってんだよねー。「天空城攻め落とすぞ、グォルァァ!」って感じ?このまま暴走されても困るし、ちょっと揉んでやってくんない?”
徹頭徹尾、軽かった。いや、俺も大概だけどコレはないわー。まーくんじゃねぇよ。威厳とか、ミジンコのクソもない。これは内密にせにゃならん手紙だな。親書を炎で包み、抹消する。
「手紙には何と?」
「武闘派のヤツら全員ブチ殺してくれ、だと」
「成程、魔王様に稽古を付けて頂けるのですね!なんと有り難い!」
密使も意外と滾っているクチのようだった。
ここらで簡単に今の世界情勢を解説しとこう。
今、世界には大別して4つの種族が繁栄している。
竜王率いる竜族は主に山岳地帯を根城としている。戦闘能力は高いが基本的には大人しいヤツらだ。巣穴でお宝を眺めて日がなゴロゴロして暮らしている。まるで盆栽眺める爺さんだな。
人族はとにかく数が多い。セクロス自重汁と言いたい。能力はさほど高くないクセにやたらとウチにちょっかい出してくるからウザい。調子乗んな、ヴォケ。
問題なのは神族。あまり情報がないが、神族が率いる天使軍は高度な魔法も難なく操り、戦闘能力では竜族にも迫る。それが統率のとれた進軍をするもんだから、過去には歴代魔王も何人か討ち取られたとか。まぁ、歴代魔王が討ち取られたのは相性によるところが多いとは思うが、何にせよ全く迷惑極まりないヤツらだ。せめて俺の代は大人しくしててくれや。
最後にウチら魔族。つっても”闇に住まうもの”って括りで結構大雑把なんだよな、コレが。悪魔族に獣族に機械族に…と枚挙に暇がない。死霊族だけでも骸骨、幽霊、屍体と多岐に渡る。種族の坩堝だな。そんだけいろんなヤツらが肩を寄せ合って、ここ暗黒大陸で慎ましく暮らしているわけだ。
相関関係をまとめると、
竜族
人族:ちょいと煩い。
神族:油断ならない。
魔族:やるなら、やるけど?
人族
竜族:お宝たんまり。
神族:信仰。
魔族:怖い。
神族はよく分からんが、人族に庇護を与えて体よく尖兵としてこき使ってる感じ。洗脳魔法よりよっぽど質が悪いぞ?んで虎視眈々と魔族、竜族を駆逐する機会を狙っているっぽい。
魔族
竜族:お?やんのか?
人族:ウザい。
神族:いつか、ぶっ殺す!
まぁ、今んところ小競り合いはあっても種族間で戦争とかしてるわけでないし、むしろ内輪もめの方がよっぽど気を遣う。
以上、解説終了。
まぁ、ブチ殺かプチ殺かはともかく、頼ってきた友人を無下には出来んわな。なんか軽いノリだが事と次第によっちゃ世界情勢を揺るがしかねん案件だ。その手の輩はとにかく暴れられりゃ少しは収まるんだろうけど、そんな簡単に他種族に手ぇ出して戦争に発展したら元も子もない。かと言って同族間じゃぁな。言ってダメなら実力行使、ってわけにもいかんだろうし。
で、槍玉に上がったのが俺様、と。リューやんとは旧知の仲だし、アイツの考えなら裏の裏まで読めるけど、面倒ぃなぁ~…
「ま、どうせなら禍根を残さねぇように武闘派全員まとめてこいや。歓迎すっぞ」
「はいっ!」
何やらえらく嬉しそうだが……だが翼竜、お前さんじゃ10秒と持たんぞ?
豹戦士「ロード!その辺の村から幼女を拉致って来ますんで元気出してk」
ロード「やめれ。マジやめれ」




