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死霊王(アンデッドロード)は眠らない  作者: 谺響
授賞式です、ロード!
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授賞式です、ロード!

!魔王城.1F:儀典の大広間


ちっす、俺ロード。いろいろとあったし、最後にはエロエロもあった演武会も遂に残すところは締めの式典だけだ。ちょいと名残惜しく感じてしまうのはそりゃぁ、楽しかったからだろう。賑やかなのはいいことだ。極一部、賑やか過ぎてステータスがオレンジ色になっているのもいるらしいが俺のせいじゃない。幻の超々稀少(ウルトラ・レア)アイテムなんて再販するからだ。んなもん、自業自得だ。



「それではロード、お願いします」


豹の伝令官(パンサー・ヘラルド)に促され前に出る。見渡せばそこかしこに眼帯娘やら包帯男やらがいる。この城には包帯男(マミー)なんていなかったはずだが。苦笑を噛み殺して口を開く。なるべく、厳かに。


「皆の日々の研鑽、しかと見届けた。世は大変満足である。

今、人間共の間では今代の魔王、即ち世が歴代の魔王の中でも最強最悪と囁かれていると聞く。それは世の特性によるところが大きいのであろう。だがっ!!」


ここで急に語気を強め、拳を握る。


「魔王として世が、最も誇らしいと思うのは、皆のような強者たちを統べる力だ!!」


呼応して大広間中で拳が突き上げられ、歓声が轟く。


「サタンっ!」


「はっ!」


「並み居る強敵を薙倒しその頂点に立つ活躍ぶり、世の片腕としてその名に恥じぬものであった」


「勿体無いお言葉」


最前列のサタンが膝を折って畏まる。それを見て大きく一つ頷く。


「力ある者には責も付いて回る。サタン、お前にその覚悟はあるか?」


「勿論です!」


どのような仕事が課せられるか全く見えないままにも関わらず、サタンが即答する。


「ならばサタンには後日、幽玄の間に入ってもらう」


その宣言にどよめきが広がる。


「幽玄の間って……実在したのか?」

「確か、魔王様しか入れないって……」

「いや、魔王としての資質を試されるってオレは聞いたぞ?」

「どっちにしろそれって……」


「それは、サタンを次期魔王と認めるということですか!?」


案の定、ヴェルウッドの坊っちゃんが熱り立っている。両脇から家人だか臣下だかが必死に抑えている。


「そういうことではない。単にサタンにそれだけの力があるという話だ」


「どう違うと言うのですか!」


あぁもう、面倒臭いなぁー……


「幽玄の間は魔王の資格と言えばまぁ、それに近いもんだ。別に幽玄の間なんて無関係に魔王にはなれる。だが、幽玄の間を維持できるだけの力がない魔王の治世は長く続かない。だから――」


視線を移せばサタンがこちらを見上げていた。当のサタンもその命の真意を問いたいようだった。


「世自らがそれを為せるだけでなく、その片腕たるサタンもそれを為せるとなれば。であれば世の治世は磐石確固たるものであろう?」


会心のドヤ顔に場内には魔王様コールが木霊する。


「うおぉぉぉっ!魔王様ーーーっ!!」

「魔王様、バンザーイ!!」


サタンはあくまで片腕として、己のために利用する。サタンの力を魔王級と認めてはいるが、ともすればサタンが魔王になる日は永遠に来ないとも取れる発言にファウストは歯を軋ませつつも引き下がった。

止まないコールに手を振って静め、式を再開する。


「さて、もう一人」


もう一人、褒賞を与えるべき相手がいる。サタンの後ろで目を輝かせているさっきゅん――ではなく、その者はサタンの右隣で先ほどの魔王様コールの熱狂にも浮かされず、静かに、悠然と佇んでいる。


「ミスターX……は事情により式典には出られないとのことなので、代わりにその従者の繋がれた歌姫エンスレイヴド・ディーヴァよ」


その名を呼ばれて「えっ?私??」と自らを指さす歌姫。いや、お前以外にいないだろ?巷では密やかに剥き出しの歌姫ネイキッド・ディーヴァと呼ばれ始めていたりもするそうだが。そっちで呼んでやった方が良かったのか?

なお、折角仕立てたステージ衣装はさっきゅんに木っ端微塵に破壊されてしまったので、本日は真紅のドレス姿でお出ましだった。鎖はナシだが、一応正体はナイショなので(試合中アイマスクが吹っ飛ばされた時は直後にさっきゅんに覆いかぶさられているし。大体観客席からだと遠目で顔なんて良く見えないはずだよ、きっと)、新しいアイマスクを装着している。ついでに言うと素足である。ヒールではまともに歩けなかったのだ。戦慄を覚えてしまうような鮮血の如き真紅のドレスに素足というのは些か滑稽ではあったが、隣の半裸のおっさんよりは全然イイ。


「その方にも何か褒美を取らせよう。何なりと申せ」


俺の思い付きで出張ってもらって、おまけにそのせいでまぁ、こっ恥ずかしい目にあったんだ。何かしら労ってやるのが当然だろう。「何なりと」なんて大仰言っておきながらまぁ、彼女が要求するものなんて大体分分かっちゃっているんだが。

案の定、ふるふると首を横に振る歌姫。やっぱりか。せめて「一曲歌わせて下さい」くらい言ってくれればいいのに。


「ふむ。何も望まぬと言うのなら取らす物も無かろう。だが力ある者としてその方にも一肌脱いでもらうぞ?」


歌姫の肩がピクリと震え、強張った。

さっきゅん「ねぇねぇ、アタシにもご褒美はー?」


ロード「ない」


さっきゅん「えーっ?!なんでー?」


ロード「試合中に散々美味しい思いしたじゃん?」


サーシャ「///」


さっきゅん「ちぇーっ……でもまぁ、さーちゃんがもっぺん脱ぐみたいだし、それがご褒美になるかー」


サーシャ「脱ぎません!!」


さっきゅん「え?」


サーシャ「え?って……アレって、そういう意味じゃ、ないですよね」チラッ


ロード「……当たり前だ……」

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