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死霊王(アンデッドロード)は眠らない  作者: 谺響
ロード、開会宣言を!
37/77

ロード、やり過ぎです!

打 開(ブレイク・スルー)


それは障害除去の魔法。術者を目標まで導く、鍵の魔法。扉や封印といった妨げを物理、魔法問わず全て貫き通す。もちろん、壁――防壁(シールド)障壁(バリアー)とて、例外ではない。

サタンは相手の多重防壁への解決手段として一撃貫通のこの魔法を準備していたのだった。始めは自らがこの魔法を手に道を切り開き、さっきゅんの一撃で決めるつもりだった。しかし本体への直接攻撃が叶わない以上、もう一手、手順を踏む必要がある。そのために役割分担を振り直す。


「陛下のところまで道を切り開いたらお前はしばらく歌姫(ディーヴァ)を抑えておけ。陛下をこちら側に引きずり出したところでスイッチだ」


「抑えておけも何も――」



♪形にすれば壊れそうで

言葉にできずにいた

震える指先から僅かでも

温もりを返したい



魔力の乗った歌声が魔法障壁(マジック・バリアー)を叩き、それを解除してゆく。


障壁(バリアー)が、解かれただとっ!?」


障壁(バリアー)の耐久値を上回る攻撃が加えられたわけではなく。今まさに自分たちがしようとしていることを先にやられて二人とも驚きながらも大きく飛び退く。打 開(ブレイク・スルー)のような万能魔法ではなく壁解除の魔法、倒壊の言葉ワーズ・オブ・ブラストあたりだろうか?消えた障壁(バリアー)の向こうからは熱風が吹き込む。


「行くぞっ!!」


「ちょっと待ってって!まだ覚悟が!」



♪形のないままでいることが

互いに幸せだって



意気込むサタンの気迫に背中を押され、尻込むさっきゅんだが、繋がれた歌姫エンスレイヴド・ディーヴァの方も待ってはくれない。イントロからは幾らか和らいでいた歌声が再び張り詰めてゆく。



♪そんな風に考えられたなら

苦しくはないのでしょうか――――



半ばやけになって駆けるさっきゅんの胸の内には一つの疑念が渦巻いていた。


それは不規則に出現する敵の魔法のことではなく。

次元の向こう側にいる王サマをどうやって引き摺り出すのかでもなく(それはサタン様の仕事だ)

本当に引きずり出せるのかでもなく(だからそれはサタン様の仕事だ)

引きずり出した王サマを吸い殺せるのかでもなく(やりおおせれば死霊族(アンデッド)食い放題だ!)

ましてや、歌姫の正体なんかでもない(そんなの、今更w)

さっきゅんが心配していたのはサタンから引き継いだ魔法の性能について、だった。


標的に至るまでの全ての障害を除去する……?それって、やりすぎじゃないの?だって――


しかし、狭いリングの上では逡巡に費やせる時間は多くはない。あっという間に防壁(シールド)に行き当たる。


「えぇいっ、もうっ!貫けっ!打 開(ブレイク・スルー)!!」



♪You taught me dance to revive.



大きく振りかぶった鍵を突き立てれば防壁(シールド)は音を立てて崩れ落ちていく。そのまま鍵を前にかざして突き進む。



♪You gave me a chance to survive.



17枚あった防壁(シールド)は鍵が触れた端から砕け散っていく。さっきゅんはそれこそ何の苦もなく歌姫に肉薄した。そしてそのまま――



♪You gave me a reason not to dっ――



ミスターXの前に()()()()()()繋がれた歌姫エンスレイヴド・ディーヴァのその胸元に鍵を突き立てた。一瞬のうちに鍵の突き立てられた所から戒めの鎖が砕け散り、宵闇色の衣が弾け飛ぶ。


「きゃぁぁぁぁぁぁっ!?」


歌姫自身も甲高い悲鳴を上げ、更には顔面を覆っていたアイマスクまでも破砕され、その素顔が露わになる。そして――



もにゅん。


役目を終えた鍵も消え失せ、代わりに小振りな乳房がさっきゅんの手の中に納まった。打 開(ブレイク・スルー)は既に失われているにも関わらず、腰から砕け落ちる歌姫。もちろんそれを逃すさっきゅんではない。


「むはーっ!この感触っ!“肉欲”とはよく言ったもんだねぇ!むちゅっ、んっぷ!」


「よし!そのまま抑えておけっ!」


全然よくない、【良い子の皆さんにはちょっとお見せできません】な二人を飛び越えてサタンが飛び込む。ミスターXの懐へと大きく踏み込み、そのフードを引き剥がそうと腕を繰り出した。その腕が、敵の顔面の直前で突如消える。


「んなっ!?」


ミスターXとサタンの間に音もなく現れた暗い歪。ミスターXよりも一回り大きなその暗闇がサタンの右腕を呑み込んでいた。拳から腕、肩、上半身。勢い止まらず暗闇へと落ちてゆく。サタンの全身を呑み込むと暗闇はするりとその口を閉じた。消えた暗闇の向こう側、ミスターXの目に入ったのは【自主規制(性的な意味で)】二人だった。ううむとミスターXが唸ると二人の真下に暗い歪が口を開き、二人は絡み合ったまま落ちていった。暗闇が再び口を閉じたときにはリングの上にはミスターX唯一人が残されていた。


「えーっと竜王さん。これは……」


「うん、場外……いや、対戦相手消滅かな?」


暗闇の正体は強制転移魔法、次元のはざま(プラナー・ヴォイド)によって開かれた異空間への入り口だった。これは時空系列の魔法の中では初歩のもので、これを発展させたものがボス空間や魔法構築物(アーティファクト)(ポータル)」になるのだ。


「勝者、ミスターX!」


豹の解説者(パンサー・ナレーター)の宣言に歓声が溢れる。当のミスターXは観客席に向かって無言のまま一礼し、自身も次元のはざま(プラナー・ヴォイド)にその身を沈めたのだった。

!異空間


ロード「お~い。帰るぞ~」


サタン「陛下、それが……」



【自主規制(性的な意味で)】



ロード「「小夜曲」いっとくか?」


サーシャ「んひゃっ……いっ、いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

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