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死霊王(アンデッドロード)は眠らない  作者: 谺響
ロード、侵入者です!
3/77

おーしゃま、バイバイ

リーザの手を引いて通路の更に奥へと進む。その後ろに盗賊、骸骨騎士(スケルトン・ナイト)と続く。道すがら盗賊には一つ残念なお知らせがあった。


「実はな、お前さんのお仲間なんだが…お前さんが玉座の間に来た時にゃー既に全滅だった」


「……そっか…」


「そ。だからお前さんのお伺いは前提が崩れてて土台無理な話だったんだわさ。お前さんだけは無事に帰すからそれで良しとしてくれや」


けっこういいチョイスだったんだけどな。

わだかまりを抱えたままでは身の保証にも素直には喜べず、無言で頷く盗賊。


「大体あんなPTで魔王城来るとか無茶にも程があんだろ?力量(レベル)も、編成も。舐めてんのか?」


「ほんまスミマセン……力量(レベル)上げて出直して来ます…」


「応。あと50は上げてこい。っから上位職への転職も忘れんな」


本来ならば、脅して、叩きのめして、場合によっちゃアレコレして(主にイビルアイ(稀少種)で)、俺らの恐ろしさを充分叩き込んでからお帰り頂くのだが。傍らに幼女がいるお蔭で報道制限がかかってしまい、ってか和んでしまい、魔王城攻略レクチャーと化していた。まぁ、脅しはさっきたっぷりとかけてあるし、いっか。




!魔王城.B1:門の間


通路の突き当たりには重厚な鋼鉄の扉が立っている。その扉に掛けられた魔法錠を解錠する。骸骨騎士(スケルトン・ナイト)がそれを押し開けたが、流石の彼もその仕事には骨が折れた。具体的には右上腕骨骨折だ。うむ、乙。


「リーザはここからきたんだよ?」


「え…?ナニコレ…?」


盗賊の反応も無理はない。さほど広くもないその部屋の真ん中には、年季の入った扉が一つだけぽつんと立っている。古ぼけた、その辺の農家にでも有りそうな扉。だが両開きに開け放たれたその扉の中からは青、藍、紫、黒の光が揺らぎ、混ざり合いながら溢れ、異様な雰囲気を醸し出していた。


(ポータル)っつってな、ま、言ってみれば空間の裂け目の一種…ってトコかな?」


普通ならば莫大な魔力をもって抉じ開けるか、ごくごく稀に偶然の産物として生じる空間の歪み。それをこの魔法構築物(アーティファクト)はどういう仕組みか定着させている。何時の時代の代物かは知らないが、とんでもない代物だよ、全く。


「まぁ、異空間が常に口を開けてるってだけで、このままじゃ何処にも通じてないし、危険過ぎるんでここに封印してあるんだがな」


一度空間の裂け目に足を踏み入れると、異空間に取り込まれ、その異空間の中で再び空間の裂け目を見付けない限り出ることは叶わない。空間の裂け目なんてそうそうあるものではないから、そのまま広大な異空間の中を死ぬまで、いや、死んだ後までも彷徨うことになる。故郷の森の中で異空間に呑まれたリーザは運が悪かったとしか言い様がないが、それでもすぐに出口を見付け脱出出来たのは幸運だった。その恐ろしさを理解してか、盗賊が唾を飲む。


「さあ~て、上手く繋がるかなぁ~?」


扉に手をかけ、魔力を流し込む。この魔法構築物(アーティファクト)は常時発動型だが、使用者が魔力を与えることで更なる操作が出来る。異空間内に別の出口となる裂け目を作ることだって可能だ。但し、消費するMP量は魔王クラス。火炎系魔法にぶちこめば城の1つや2つケシ炭に出来るくらいのモンだ。

魔力を受けて(ポータル)から溢れる光は徐々に弱まり、揺らぎも小さくなる。と、突然白い光が溢れだす。


「おわっ!まぶしっ!?」


真正面にいた骸骨騎士(スケルトン・ナイト)が目を覆い、飛び退く。目ん玉とかないけど。

扉の中にはどこか懐かしい田園風景が広がっていた。ニンゲンの世界、それも昼の世界にちゃんと繋がったようだ。そこから流れ込んだ日の光は俺ら死霊族(アンデッド)にゃけっこうな毒だ。


「ダンブリア大陸の西の端っこらへんかな?まぁ、後のことは頼むわ」


頷く盗賊に手を差し出そうとして、やっぱ止めとく。立場的なモンもあるが、コイツ、手ぇ洗ってないわ。聖水とか言ったりもするもんな。大丈夫だとは思っていても死霊族(アンデッド)の本能が避けたがっていた。

その手は代わりにリーザの頭を撫でる。


「達者でな」


「また、あそびにくるね?」


「応、来れたら来いや。何時でも歓迎すっぞ、オラ」


一際激しくその小さな頭を掻き撫でる。これで撫で納めか。きゃっ、と喚くリーザに目を細める。いや、目ん玉も目蓋とかもないんだけどな。

そして二人は連れだって(ポータル)をくぐる。二人は何事もなく、それこそただの扉を通り抜けるようにして、道に降り立つ。

リーザは少し進んでは振り返り、その度に力いっぱい手を振った。後ろの骸骨騎士(スケルトン・ナイト)も折れた腕を掴んだ手で振って応えている。


「さっさと行けや。こちとら魔力使うわ日に焼かれるわでけっこうしんどいんだわ」


やがて、ただでさえちっこいリーザが豆粒ほどにちっこくなったところで、口に手を当てて叫ぶ。


「おーしゃま、バイバイ!」


小さく手を振って応え、(ポータル)を閉じる。もう通じていない向こう側から、リーザの号泣が届く気がした。誰にともなく呟く。


「あー、ホネでよかったわー」


生きてたら、きっと泣いてた。

豹戦士「最近、ロード元気ないですね…」


骸骨騎士「実はな…」ごにょごにょ


・・・・・


豹戦士&骸骨騎士「「ロリコン?!」」

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