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死霊王(アンデッドロード)は眠らない  作者: 谺響
ロード、開会宣言を!
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ロード、それはあなたです

!特設会場2F:VIP観覧席


「責任者呼んで来い!!」


「いえ、だからそれはあなたです。ロード。大会開催にあたっての一切合切はUW-54さんに白紙委任したとはいえ、大元の責任者はあなたです」


ちっす、俺ロード。どうやら俺、スペシャルゲスト「ミスターX」としてマッチメイクされていたらしい。全然聞いてないんだけど?てっきりりゅーやんあたりがお忍びで来るもんだとばっかり思っていたのに……


「暗黙の了解というか、あえて触れない既知の事実というか……みんなそうだと認識していましたよ?」


「立場的なものがあるからそういう体で……ってものなんだとばっかり」


「止めて!人を一緒にはしゃぎたいけど混じれなくて苦労してるみたいに言わないで!」


「で?やらないんですか?」


なんか豹の伝令官(パンサー・ヘラルド)がやたらと意地が悪い。まだすねてんのか?


「やらねぇよ!んなの面倒臭い」


「えー?でもみんなきっと魔……ミスターXの活躍を心待ちにしていますよ?」


「ぬぐぅっ!?」


そう、そういう期待を裏切るのは非常に心苦しい……


「いいこと考えた!試合開始と同時に召喚してやるから豹の伝令官(パンサー・ヘラルド)、お前が代わりに戦え」


「なんて無茶振り!?」


「大舞台に立てるチャンスだ!」


「そんなのどう考えたってあのしょっぱい1回戦の再来になるに決まってるじゃないですか!」


「あぁ、そんなことしなくても対戦相手を召喚すれば対戦相手不在で楽に決着するじゃないか!」


「この人、試合する気ゼロだー!?」


どうせ勝ち上がってくるのはサタン、骸骨騎士(スケルトン・ナイト)、バロルあたりだろうし。サタンvsバロルで負けちゃった方を骸骨騎士(スケルトン・ナイト)にぶつけるのも面白いか、とも思ったけど、骸骨騎士(スケルトン・ナイト)が負けちゃったら3回戦の再現になっちゃうのか。それはつまらん。むむむむむぅ……


「とりあえず何か考えてみるけど、あんま期待すんなよ?」


サタンもここにはいないが骸骨騎士(スケルトン・ナイト)もガチでミスターXとやり合いたいと思っているのが見え見えだ。何とかやりすごせないかなー?



そんな人の悩みも露知らず。会場を熱気の渦に包み、試合は着々と進んでゆく。

一つ目巨人(サイクロプス)は案の定棄権。サタンとバロル、いや、今はバロル・ゾンビか。二人とも危うげもなく勝ち進み、3回戦での対決が決まっていた。

そのバロル・ゾンビだが、なんと人型での登場だった。(ドラゴン)の形態ではリング上で窮屈になるだろうからそれに合わせた、とのことだった。鱗に覆われた体では血色も窺い辛く、腐臭が無ければゾンビかどうかも疑わしい。試合では凄絶な剣技の冴えを披露してくれた。人型に凝縮された(ドラゴン)の肉体が放つ剣筋は力強く、豪快で、破壊的だった。


「ゾンビ化してからより、感覚的に動けるようになりました」


と言っていた通り、それだけの破壊力を備えつつ、同時に微塵の隙もない一方的な攻撃を繰り出していた。骸骨騎士(スケルトン・ナイト)の前にもう一人、サタンにとっては強敵の出現であった。





!魔王城.1F:王の間(プライベート・ルーム)


「プロデューサーとして精一杯手腕を振るわせて頂きました。経済効果のレポートが今から楽しみで仕方ありませんね」


UW-54は悠然と平然と言ってのけた。そんなことをしれっと言ってのけるのはどの口だ?


「ってか、会場設備やら何やら投資額がえらいことになっているんじゃないのか?」


そう言えば。救護班の制服といい、無駄に細かいところにまでコストがかかっている。


「その辺は大会参加業者からの登録料で問題はないんですが……ただ一点だけ問題がありまして……」


「何だよ?」


「エクストラ・マッチの褒賞金をミスターXに回収して頂かないと赤が出ます。へ……ミスターXが負けるなんて思ってませんし、結構盛ってしまいました」


「杜撰過ぎ!そんなならせめて事前に話くらい通しておけよ!」


「でも事前に相談したら、逃げるでしょう?」


むむぅっ。それは否定できない。


「高まる民衆の期待と、出なきゃならないのっぴきならない(経済的)理由。この2つに導かれて実行委員会の切り札、ミスターXは爆誕するのです」


「格好いいようであんまよくないぞ、その登場シーン」


頼むから変なナレーションとか入れないでくれよ?


「登場シーンの演出に関しては当事者の意向を尊重しています」


「……ミスターXが賞金をガメちまう可能性とか考えてないだろ?」


「そんな可能性、皆無ですね。0に0を掛けたくらい0です」


はぁぁ……溜息が止まらない……


「まったく……UW-54Pの手腕には舌を巻くよ」


まぁ、舌なんてないけどな。


「お褒めに与り光栄です。今回は私もいろいろと学習させて頂きました。お祭りというのは、こうも楽しいものなのですね」


「なんかお前も随分と砕けちまったな」


「は?私の装甲には特に異常はありませんが?」


「外装じゃなくって性格が柔らかくなったっていうか、打ち解けてきたなって言ってんの」


「それは自分では今一つ分かりかねますが……ですが「楽しい」というのが理解できた今、皆さんに一歩近付けたような気はします」



いつだって。どんなヤツにだって。

成長できる可能性ってのは残っているもんだ。


ロード「衣装の用意、間に合うかなぁ~?」


UW-54P「やっぱりしっかりノリノリですね」

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