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死霊王(アンデッドロード)は眠らない  作者: 谺響
ロード、開会宣言を!
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王サマ、コレ、似合うでしょー?

!西の荒野:特設会場.メイン・ストリート


サーシャと並んでメイン・ストリートを歩く。あちこちで声を掛けられ、なかなか試合会場へと辿り着けないのでいい加減適当にあしらう。


「招雷流星脚!浮嶽昇天撃!!穿心牙突掌ぉぉぉっ!!!」


傍らのリングから景気よく技名を叫ぶ声と軽快に連なる衝撃音が響いた。吹き飛ばされ、転がった人猪(ワーボア)の奥には拳を天に突き上げ、勝利の雄叫びを上げる骸骨騎士(スケルトン・ナイト)の姿があった。今日は兜の代わりに赤い鉢巻を締めている。


……このstr馬鹿は何をやっとるのだ……


呆れ果てているとこちらに気付いた骸骨騎士(スケルトン・ナイト)がリングを降りてやって来た。


「ロード!見てたッスか?今の華麗なコンボ」


「何?騎士は廃業?」


「今日はそういう催しッス」


相手が使用武器を指定して骸骨騎士(スケルトン・ナイト)に挑む形式のイベントらしい。武芸百般、千変万化の骸骨騎士(スケルトン・ナイト)らしいと言えばらしいのだが。いやむしろハマり過ぎている。しかし、試合の履歴を見てみると実際に使った武器は癖の強いものばかりで、トンファーに鞭、多節棍やナイフ、酷いのだと投石器(スリンガー)に吹き矢なんて代物まであった。素手とか逆にまともな方で、そのうち「使用武器:人差し指」とか言い出しそうだ。


「せっかくの機会ッスから、普段戦わないような武器を相手取って戦うのもオツでしょ?」


「そりゃお前の趣味じゃねぇの?っつーか何、お前は激戦大闘演武会は出ないの?」


「あ、俺スペシャルゲスト枠なんで。ダブルシードで試合は明日からッス」


シード権なんて要らないって言ってんのに……とぼやく骸骨騎士(スケルトン・ナイト)を残し、激戦大闘演武会試合会場へと向う。





!激戦大闘演武会試合会場:入場口


「お!お!サ!マ~!」


黄色い声に反射的に物理防壁(マテリアル・シールド)を展開、飛び込んできたさっきゅんを弾き返す。しかし再度突撃を試みるさっきゅん、それもきっちり再び弾き返す。三度目には流石に攻撃対象を変更、サーシャに飛び付いて、抱き付いた。とゆーか、押し倒した。ほっと安心すると同時に、言い知れぬ負の感情に捕らわれる。コレって、嫉妬(ジェラシー)?っつーか、


「さっきゅんが服を着ているだと!?」


斬新な光景に度肝を抜かれてしまった。全裸がデフォのさっきゅんが白衣をその身に纏っている。頭にはナースキャップまで載っていた。その背後からUW-54が口を挟む(彼?に口があるかはかなり疑問なのだが)


「救護班の制服ですよ」


「王サマ、コレ、似合うでしょー?」


これ見よがしに救護班の腕章を見せ付けるさっきゅん。真面目に仕事しているところをアピールしたいみたいだが……どう考えてもただのコスプレです、ハイ。悪魔族(デーモン)の浅黒い肌に純白の衣装がなかなかに艶めかしい。


「可愛いですね。私も着たいです」


羨ましげなサーシャの頭にナースキャップが載せられる。この人通りの多い中で平然と衣装交換が行われるのでは?と構えたが、どうやらそれは過ぎた心配だった。


「んん、まぁ、いいんじゃないの?……しっかしそんなモンまで作ってたのか、実行委員会は……」


本気出し過ぎだろ?腕章とかその辺で抑えておけよ……誰だよ、こんな物作ろうと考え付いたヤツは……それを嬉々として着るさっきゅんもさっきゅんだが。


「王サマに褒めてもらえたら、方々に働きかけた甲斐があったってもんです」


「発案者、ここにいた!?」


しかもその言い方、なんかドス黒い陰謀が見え隠れして怖い。巡らされた権謀術数は某幻の超々稀少(ウルトラ・レア)アイテムのそれには遥か及ばないが。こっちはこっちで野望の結実のためにあの手この手が行使されたことが容易に想像できて生々しい。


「具体的には炬燵隠れと時雨茶臼、立ち鼎に……」


「手練手管弄しすぎ!そんなに着たけりゃプライベートで着てろよ!」


「分かってませんねー。普段は不真面目な彼女が突然見せる献身的な優しさ……どうです?ぐっと来るでしょう?」


「こねーよ」


「えー?逝けずぅ~!」


「物騒な字をあてるな!」


確かに逝かないけどな!



会場入り口脇に設けられた詰め所には警備の機械族(マシーン)と救護の蛇女(ラミアー)が数名たむろしていた。


「2-B地区のトラブルは解決」


「了解」


「現状新たなトラブルは報告されていません」


「あっちは怪我人も大したことなかったから全部現場で処置完了してまーす」


二人は向こうでゴブリンとインプの小競り合いを仲裁してきた帰りだった。


「ちゃんと仕事してたんだな。えらいえらい」


頭を撫でてやるとさっきゅんはえへへー、と顔をほころばせた。


「そーやって普通に笑ってりゃ可愛いのにな。淫魔(サキュバス)的な言動のせいで損している部分が意外と大きいんじゃないのか?」


「……では今度から無口キャラを演じてみましょうか?」


「演じるって言ってしまった時点で終わってる」


「――あなたは死なないわ――死に損ない(アンデッド)だもの」


「名台詞が台無しだ!?」


「かと言って体言止にはなりません」


「今この瞬間、無性にお前の本当のint値が知りたくなった」


「体言止……なんかヤらしい響き……」


「お前が言うからだよ!」

ロード「あくまで正規の制服であり、それを着用してしかるべき立場にあり、しかも職務を遂行しているのに。それでもコスプレにしか見えないって何なの?」


さっきゅん「それは偏見です」

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