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死霊王(アンデッドロード)は眠らない  作者: 谺響
ロード、新入りです!
24/77

ロード、現在交戦中です!

†魔王城:正門前


「おるうぁぁぁっ!」

弱体化(エンフィーブル)っ!」

「んなっ?!」

「グオオオァッ!!」

べきっ!

「ぐああっ……」


正門前で繰り広げられていた死闘は開始から9分47秒で決着が付いた。

敵の先制攻撃により、サーキュエール達警備隊は甚大な被害を受けていた。しかしすぐさまサーキュエールが物理防壁(マテリアル・シールド)を展開して敵の追撃を阻み、体勢を立て直す。その時点での頭数は4対4で対等。とは言ってもこちらは初撃で深手を負った一つ目巨人(サイクロプス)と直接戦闘には向かないサーキュエールを含めての数だ。攻撃(オフェンス)特化のPT相手では些か不利な向きもあった。しかしサーキュエールが手際よく回復させた一つ目巨人(サイクロプス)が戦線に加わった辺りから流れは変わる。魅了魔法(チャーム)が成功したところで勝敗は完全に決していた。





!魔王城.1F:東の回廊


「それにしても、さっきゅんの防壁(シールド)は本当にいいところに出てくる」


「ああ、おかげで攻撃に専念できたよ」


一つ目巨人(サイクロプス)に負けずと劣らない巨体の怪物、立ちはだかる怪物(ルーミング・ホラー)に、蜥蜴の槍使い(リザード・ランサー)が賛同する。


「いやもう、防壁(シールド)出すだけでいっぱいいっぱいだったんだけどね」


「謙遜するなって。さっきゅんの手際よい回復がなかったら一つ目巨人(サイクロプス)も俺たちも今頃生きちゃいないさ」


「殉職した犬頭鬼戦士コボルド・ウォーリァー犬頭鬼弓師(コボルド・アーチャー)は残念だったけどね……」


「あの不意打ちでは仕方ないさ……」


「・・・・・・」


「ところでさっきゅん、それ、どうするの?」


一つ目巨人(サイクロプス)の質問にサーキュエールも腕を組んで唸る。


「うーん……王サマがOK出してくれるといいんだけど……」


戦闘結果は速報が既に伝わっているはずだが、少なからぬ被害も出ている。サーキュエール達は後続チームに現場を引き継いで、今は先の戦闘を振り返りながら詳細報告のために玉座へと向かっていた。サーキュエールとしてはかなり頑張ったのでご褒美が欲しいところだった。この際、ご褒美のグレードを相当落とすことになったとしても、だ。





!魔王城.3F:玉座の間


「・・・・・・」


「……」


「……だめ?」


さっきゅんが可愛らしく小首を傾げてみせる。


「ダメ」


「ちゃんと自分で面倒見ますから!」


「ダメっつったらダメ!そんなこと言ったってすぐダメにするのが目に見えてるじゃん!」


「そ、そんなことないもん!」


ちっす、俺ロード。さっきゅんがまた無茶を言い出してくれて、頭が痛い……

さっきゅんの要求は至極簡単な話で、先の戦闘で魅了(チャーム)した剣士を飼いたい、とのことだった。お弁当にするらしい。


「っつーか面倒云々の前にそーゆーのは支配階級の特権なの!新入りのぺーぺーが家来持ちとか、何様のつもりだ!?」


「お仕事頑張ったじゃん!あの頑張りに免じて昇級(クラス・アップ)を!」


「その程度で昇級(クラス・アップ)すっか!仕事なんだから頑張んのが当たり前だ!」


「もう、ケチ!自分だってサーシャ飼ってるじゃん!」


「サーシャはそんなんじゃねえぇぇぇ!!」


そこは断じて違うから。もしそうだとして一体全体どんな放し飼いだよ?


「むしろお前をきっちり飼い慣らさないとだな……」


調教(おしおき)待ってました!」


まさかそこまで作戦のうち!?


おしおき(餌付け)ッスね」


「……止めませんけど、仮病はもう勘弁して下さいね?サタンさんの代行、あんまり評判良くなかったですから」


言いながら二人揃って一歩下がる。

餌付けも仮病もしねぇよ。


「まぁ、それでお前が二度と――」


「我儘言いました。ごめんなさい。お弁当は諦めます。あと、生意気言ってすみませんでした。反省してます。もう二度と言いません」


瞬速で態度が一転した。しかもご丁寧に土下座付きで。速えぇよ、速すぎるよ。切り札に指先かけただけでこれかよ。ったく……


「じゃぁ、そいつはこっちで処分しておくぞ」


「……はい。お願いします。ごめんね、チルチル。飼ってあげられなくて」


「名前付けてた……」


「ともあれさっきゅんも一つ目巨人(サイクロプス)立ちはだかる怪物(ルーミング・ホラー)蜥蜴の槍使い(リザード・ランサー)もみんなお疲れさん。ゆっくり休んでくれ、と言いたいとこだけどレポートは早めに書いておいた方がいいぞ」


「あぁ、荒天の(ローリング)チャンピオンも言ってましたね」


「おい、豹の伝令官(パンサー・ヘラルド)、レポートの書き方教えてやれよ」


「私がですか?」


「先輩だろ?」


「えぇ、まぁ、そうですけど……いえ、でも私も初座で習っただけで実際に書いたことないですよ?」


戦わない男、豹の伝令官(パンサー・ヘラルド)。その非戦闘員っぷりは筋金入りだった。

結局骸骨騎士(スケルトン・ナイト)が警備隊チームにレポートの書き方を指南するということで、一緒に退出していった。

豹の伝令官(パンサー・ヘラルド)「き、機会が無いだけで私だってやる時はやるんですからね!むしろいつだってやりまくりたいくらいです!」シュッ、シュッ!


ロード「平和なべ貼られてるわけじゃーないんだよな。でもその槍を振るう機会はきっとないんだろうなー」


豹の伝令官(パンサー・ヘラルド)「そ、そんなことないですよ!!ないですよね!?」


ロード「違う槍は最近振るわれまくりらしいけど」


豹の伝令官(パンサー・ヘラルド)「んなっ///!?」

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