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死霊王(アンデッドロード)は眠らない  作者: 谺響
ロード、新入りです!
23/77

陛下、例のプランです!

※第17部におまけエピソードを挿入しました。以降、1話ずつずれていますのでご注意・ご確認下さい

!魔王城.2F:大食堂


「甘い蜜に、溢れ出す肉汁……これはっ!美味しいっ!」


サーシャお勧めの新作、照り焼き風鶏もも肉のパイにサーキュエールは大絶賛の舌鼓だった。食い過ぎの腹太鼓でまたズル休みすんじゃねーぞ?

実のところ、正直に言えば本当に美味しそうに食べる彼女がちょっと羨ましく、ちょっとどころでなく妬ましい。骸骨(ホネ)じゃ食事は取れない。無理矢理食ったところで味わえやしない。舌がないからな。


♪いつから心はアイスボックスのよう

ぐるぐる白黒渦巻いて

マカロンよろしく板挟み

欲しいものはお互い違うって

今更気付いたの



サーシャはサーシャでまたまた熱唱中だ。振り付け付きでノリノリで歌う彼女の周りに再び人だかりが出来つつあった。試しにその足元に 籠 (バスケット)を置いてみたら次々と小銭が投げ込まれた。どうやら食堂であっても、歌いたい欲とある程度の金銭欲は満たすことが出来るらしい。初めて知ったわ。

それはそれでいいんだが、激唱の勢い余って片乳はだけるくらいなら肩紐はもっと固く結んでおけと言いたい。違う職業になりそうだぞ?


「はぁ~……幸せそうだねー」


「食後にデザートがあればアタシはもっと幸せになれます」


「ならんでいいわ!」


こっち見んな!


そんな風にいつもと一味も二味も違う賑わいを見せる食堂に、珍しいと言うかちょっと場違いとも言える来客があった。漆黒の立方体を淡く輝く光球の中に抱き、長い四足を今日は短く畳んで水平に広げ、ふわふわと宙を漂い、UW-54が現れた。


「陛下、今少しよろしいでしょうか?」


「え?俺に用?もしかしてわざわざ探しに来たの?」


「はい。今日の定例会のことなのですが……」


「っつーと、演武会の話か?」


今日の定例会で開催が決定された演武会。日頃の鍛錬の成果をお披露目したり、模擬戦で己の技を競い合ったり。いつぞやのエキシビジョン・マッチほどではないにしろ、まぁ、ちょっとしたお祭り騒ぎにはなるだろう。


「そうです。我々機械族(マシーン)からは演武会への参加を見合わせたいのですが……」


「ん~まぁ、そもそもお前らってあまり訓練とか意味ないもんな。別にいいんじゃね?不参加でも」


「ありがとうございます」


「その分、会場警備やらは頼むわ」


「イエス、サー」


「サーキュエールも当てにしてるぞ」


「はひ?」


「どうせやんちゃして怪我人続出すんのは目に見えてるからな」


そのおかげで演武会で一番レベルアップできるのは救護班だったりする。


「頑張ったらご褒美もらえ」


「ません!真面目に働け!」


「では真面目に王サマにご奉仕させて、頂きます」


「頂くな!そんな仕事はここにはない!」


「需要があるから供給があるんですよ?」


「お前の需要だろっ!供給を要求すんな!!」


いい加減突っ込み疲れてきたぞ……


「ところで陛下、もう一つお話が」


「何?」


「こちらを……」


そう言って漆黒の立方体から紙の束を吐き出す。ちょっと面倒くさそうな仕事の臭い……と警戒したが、その表紙を見て目の色を変える。


「おぉっ!遂に来たか!!」


「はい。例の計画の要綱が纏まりましたのでご覧下さい」


サーキュエールが横から覗き込む。一応、重要機密事項なんだが(だったら食堂(ンなとこ)で広げるなという話だが)……そんなことよりもアレだよ、アレ!高まるテンションは止まることを知らず、ページを繰る手が加速する。


「ん~?ジストピア防衛計画?」


王都ジストピア。多くの魔物達が暮らす城塞都市。しかしその実態は高い城壁とわずかな警備兵が配備されているだけで、万が一侵攻を受けた場合にはその防衛力は非常に心許ない。なのでその強化策を、折角なのでいろいろとロマン溢れる案を盛り込んで、UW-54と共に計画を練っていたそのおおよその見積もりが遂に出来たのだ。


「残念ながらやはり「ジストピア・ゴーレム化計画」は質量、エネルギー、何より住民の安全面の問題がクリアできませんでした」


「ぐぬぅぅっ!」


「しかしその他はおおむねご期待に沿える内容かと。設置砲門数など軍備規模は、今後同様の城塞都市の設立があった場合も視野に入れて設定しています」


「ん~……これだとちょっと……物足りないかなぁ~?」


「しかしこれ以上の規模となると司令官(コマンダー)クラスの機械族(マシーン)が管理に当たる必要が……」


「当面都市新設の予定はないからさ。これはこれでサンプル案として保留しておいて、今回はもっと本気出していこうよ!一球入魂ってヤツでさ!」


「イエス、サー。それでは機械族(マシーン)の総力を集結するくらいの勢いで見積もってみます」


「そう!そのくらいの意気込みでなきゃな!しっかりと頼んだぞ!」


「イエス、サー」


ふわふわと漂いながら退出するUW-54を見送る。


「……この計画の時点で既に過剰防衛気味な気がしますけどね……」


ぼそっと呟いたサーキュエールにいかにこの計画が重要かをとくとくと説いて聞かせた。臣民の平和を守ることは王の責務である。どれだけやってもやりすぎということはないのだ。

サーキュエール「思うに私も演武会、実演する方に回るべきな気がします」


ロード「は?お前って得意分野は回復、支援だろ?何実演する気だよ?」


サーキュエール「48手」


ロード「聞いた俺が馬鹿だった!」


サーキュエール「あの子もこの子もビチョビチョにする48手」


ロード「そのネタは略すとヤバイから止めて!」


サーキュエール「実際のところしっぽも加えれば48に収まりません。ほら、新技ですよ!」


ロード「もう一人で「月光」行ってろ!」

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