ロード、魔法大決戦です!
※プロットを入れてたフラッシュメモリが物理的にお亡くなりになりました……泣いてもいい?
「強者は持たざる者に倣え!不条理をには正しき理を!激情の代償!!」
フレアが天に描いた魔法陣が轟音と爆炎を伴って下る。炎はサタンと術者であるフレア自身を巻き込んで燃え上がった。
「うおおおおおおお!?」
中級魔法である激情の代償が、今この時ばかりはサタンには効果覿面だった。この魔法は有効範囲内の全員にその者の持つ炎の属性値に応じた炎を降らせる。地獄の業火をその身に宿したサタンは自業自得とも言える劫火に焼かれていた。もちろん、炎の魔術師であるフレアも相応の炎に包まれている。その炎の量が皮肉にも彼女の炎魔術師としての資質を示していた。いくら耐熱・対炎防具をまとい、防護の宝珠で軽減されているとは言え、自殺行為に等しい。
「ぐあぁぁっ……っ、もう……いっ、ちょう!!」
しかし彼女は手を緩めるどころか、更に一歩踏み込んだ。炎の中から走る閃光。魔法陣に接触した群青色の光はゆっくりと上へ立ち上り、上空に激情の代償の魔法陣を描いた。再度、爆炎が降り注ぐ。
「ぐおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!うっぐぅぅ……」
サタンが遂に火勢に膝を折る。その正面で、炎に包まれたフレアの影も崩れ落ちる。
「フレア!!」
呼び掛ける仲間の声に、弱々しい声が応えた。
「ゴメン。ちょっと、ミスった……」
燃え盛る炎の中からではその声もはっきりとは聞こえないが、涙声にしか聞こえなかった。
「もう一発いきたかったけど……MPが足りない……」
その声に、ニコラが炎の中へと飛び込む。翳した左手に展開した魔法障壁は目に見えて炎に押されている。
「バカ!こっち来んな!」
「馬鹿はお前だろう。……MP計算くらいちゃんとしとけ」
焼け爛れたその手をそっと握り締める。逆の手へと移る彼女の視線はその手に宿した青い輝きを見詰めるのか、それとも単に眼を逸らしたのか。
「やるんだろう?やりたいんだろう?俺の……全部くれてやるから……最後まできっちり、やれ!!」
繋いだ手から、魔力が注がれる。防御のためでも、回復のためでもなく。癒術師としての本分を差し置いて、しかし彼は迷うことなくその手を取った。それに対してフレアは言葉ではなく、行動で応える。
「……再発」
再び群青色の閃光が走り、炎は三度降り注いだ。
追加の炎に魔法障壁はあえなく散り失せる。
「ニ・・、・・・・・」
「僕も――」
二人の最期の言葉も炎の燃え盛る音に掻き消されていった。
動きを止めたまま煙を上げるサタンと、重なり合う二人の骸。やがて炎が周囲を舐め尽し、虚空へと還ったあとも、フロストとジョージは動けずにいた。しかし、二人は気付くべきであった。未だボス空間が解除される気配もないということの、その意味に。
「……今のは流石にヒヤッとしたぞ?」
サタンの身体が震え、体表の紋様に再び炎が宿る。
敵の動きが止まっているうちに、畳み掛けるべきだった。しかし、攻撃と防御の要を同時に失った二人の思考はすぐには働かなかった。
「裁きの光!!」
「ア、氷の尖槍!!」
真っ白な光が上空から降り注ぎ、同時に2本の氷の投げ槍がサタンに向けて放たれる。降り注ぐ光の5連撃を身体を軽く捻って躱し、氷の槍をその胸板で受け止める。深く突き刺さったように見えた槍がそのままサタンの体内に吸い込まれていくように見えた。が、それはどちらもそう見えただけで実際には槍はサタンの表皮に到達すらしていない。
「赤髪の炎術師の執念に敬意を表して炎魔法の極致、その一端を見せてやろう」
そう言っておもむろに両腕を広げる。不意に風が、サタンの方へと流れ込む。ただならぬ気配を察したジョージが障壁を多重展開してゆく。フロストも数発の攻撃魔法を立て続けに撃ち込んでいたが、いずれも効果は認められなかった。そして、風向きが変わる。
「――抹消」
サタンを中心に炎が渦を巻く。ゆっくりと溢れ出した炎は徐々に、しかし加速度的に勢いを増す。多重障壁も、いつの間にか現れた巨大な氷壁も飲み込んで、炎は大洪水となって容赦なく雪崩れ込む。辺り一面を埋め尽くした炎が消えた時には、そこには塵一つ残されてはいなかった。
サーキュエール「お?ここでまだ更に再発でコピるか!」
ロード「どう考えても激情の代償のダメージ倍率が美味しすぎます。っつーか、聖魔法は追撃入れないとダメだろ?削り切れないぞ?」
サーキュエール「奈落の烙印が出た時点で氷魔法の人は空気ですからねぇ~」




