敵襲です、ロー
!魔王城.3F:玉座の間
「敵襲です、ロー……あれ?ロードは?」
勢いよく飛び込んだはいいものの、玉座にはロードの姿は無かった。代わりにいたのは半裸のおっさん、悪魔族の長、サタンさんだった。
「あー、ロードは今日、病欠。だもんでおっさんが代行」
「さりげなくおっさんゆーな」
骸骨騎士が説明してくれたが、彼も彼でいつも以上にやる気がなさそうだ。
「病気って……骸骨なのに?大丈夫なんですか?」
「大丈夫x2」
「一体何の病気なんですか?」
「……心の病?」
サタンが言いながら自分で首を傾げる。
「働いたら死んでしまう病?」
骸骨騎士も並んで首を傾げる。
「ただのサボりだ!?」
心配して損した。伝令官になって初の仕事で思い切り張り切っていたのに、肩透かしもいい所だ。個人的に話もしたかったのに……
「で、戦況は?」
サタン魔王代行が報告を促す。
「はい。今回は魔魔僧僧、魔職PTです。庭園の石の悪魔隊を始め、既に甚大な被害が出ています」
「それは相性が悪いな」
石の悪魔は極めて高い物理防御を誇るが、いかんせんHPが低い。ダメージが通るなら一撃で殺られてしまうことも少なくない。
「1Fが突破されるのは時間の問題かと」
「2Fの守備はどうなっている?」
「今日のシフトだと幽霊部隊がメインで、フロア・ガーディアンはUW-54ッスね」
「これまた相性が悪いな……」
幽霊も物理職相手には有利だが、魔職相手、特に僧侶系を相手にするには不利すぎる。機械族は魔法防御も決して低くはないが、雷魔法には極端に弱く、時折一撃死すら有り得る。いくらUM-54さんでも危ういかもしれない。
「何なら俺が行くッスよ?」
あ、先を越された。
「……いや、私が出よう」
「え?代行自らが、ですか?」
「このままでは恐らく2Fも難なく突破されてしまうだろう。元々私が3Fを守っているのだから、私が出向けば被害を抑えられよう」
「……って、自分が暴れたいだけじゃないですか、代行?」
3Fの守護とか、まず出番がない。私だってサタンさんが実際に戦闘しているところは見たことがない。それは年季の長い骸骨騎士も同じだろう。悪魔族の長でありながら、現魔王の下に甘んじる彼の実力に興味がないとは言わない。が、配置換えなどいくらでも手の打ちようはあるはずなんだけど。
!魔王城.2F:最終GR
「そんなわけでこの場は私が預かる。そなたは下がっていたまえ」
サタンさんがUW-54さんに直に告げる。淡く球状に輝く光の中、漆黒の正六面体がゆっくりと回転していた。いつ見てもよく分からない人だ。前後左右に手足を伸ばして四足で立つ様は獣に通じるところがあるけれど、根本的に何かが違う。
「お心遣いありがとうございます。しかし私でしたら、エレメンタル・ポットで弱点属性に対策も打てますし、ご心配には及びませんが?」
……目も鼻も口もないのに。一体どこで聞いてどこで喋っているんだろう?
UW-54さんにも機械族の司令官としての面目があるのだろうか?丁寧な物言いとは裏腹に、だがしっかりと食い下がった。普段ロードの前では「イエス、サー」しか言わない彼(?)の意外な一面を垣間見た。
「しかし、万が一ということもあろう。そなたが敵に遅れを取るとは思わないが、もしものことがあっては私も陛下に申し訳が立たない。それに陛下もこんなことでそなたを失うことは良しとしないだろう」
「それは、陛下の御意思と解釈して良いのでしょうか?」
「いや、これは私個人の我侭だ。だが、例え陛下ご自身であっても同じ采配を振るのではないかと、私は思うよ」
「……分かりました。よろしくお願いします。どうか、ご武運を」
どこで納得がいったのか分からないが、UW-54さんは結局引き下がった。音もなく滑るように部屋を出て行く。今更気付いたけどUW-54さん、よく見れば足が地面に付いていない。どうなっているんだろう、アレ?幽霊寄りな人なんだろうか?
「さて、敵もそろそろ来る頃だろう。豹の伝令官君、君も下がっていたまえ。正直言って君では怪我がなくとも足手まといだ」
「……ですよね。そうします。それではご武運を」
実際、怪我なんて大したことはないのだけれど、それでも足手まといには違いない。あわよくば一緒にひと暴れしたいところだったけど、サタンさんの攻撃に巻き込まれないでいられる自信ははっきり言ってなない。なので悔しいけれど素直にその言葉に従った。
豹の伝令官「サタンさんの戦闘スタイルって、どんななんですか?」
骸骨騎士「んー、一言で言うと魔導師タイプ。strもけっこうあるけど大魔法を好んでバンバン使ってく感じらしいッスね」
豹の伝令官「それって、ロードと被ってませんか?」
骸骨騎士「んーでもロードは自動とか召喚とか、ちょっとヒネたのを好んで使うし。どうなんッスかね?」




