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死霊王(アンデッドロード)は眠らない  作者: 谺響
ロード、新入りです!
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王サマ、ご無体な……

!魔王城.3F:王の間(プライベート・ルーム)


「王サマ、そんなご無体な……」ぐすっ


「聞き分けのないことを言うんじゃない。どうしても聞けないと言うなら…」


泣き出してしまった彼女の頭をサタンが押さえつける。弾みで剥き出しのFカップが弾む。いや、Fカップどころか下半身も剥き出しなんだが。そこは悪魔族(デーモン)にありがちな刺青のような紋様が大事な所をことごとくカバーしてくれているので大丈夫。きわどいがギリギリセーフのはずだ。


「うぐっ……だって、あんまりですぅぅ……」


涙をこぼしながら必死に許しを乞うが、泣き落としは聞けない。グダグダ言うようなら魔王様権限をちらつかせるだけだ。


「これがのめないってんなら、入隊早々で残念だが……」


「ううっ……王サマに憧れて、勉強も頑張ったのにこんな……こんなことになるなんて……」ひっく


「いい加減に観念しろ。それがお前の……淫魔(サキュバス)宿命(さだめ)だ」


サタンが容赦なく言い捨てる。涙を拭い少しずつではあるが、嗚咽が収まっていく。元より彼女には受け入れるしかないのだが、ようやくその覚悟が決まったようだった。


「……はい……我慢、します……摘み食いは、しません」




淫魔(サキュバス)の特性について今更説明する必要があるだろうか?いや、一応、しておこう。

相手の望む姿でその枕元に立ち、その者の精を吸って糧とする悪魔。それが淫魔(サキュバス)。かなりメジャーな種族なのでなじみ深いという人も多いだろう。特に男性諸兄からすればいいオカズなのか?実際遭遇すれば頂きますされるのは彼らの方なのだが。

淫魔(サキュバス)と言えば、大抵のヤツは高慢で、挑発的で、蠱惑てきで、性欲旺盛だ。ん?ってことは世の中のヤツは高慢で挑発的で蠱惑的なお相手を望んでいるヤツばっかり、ってことなんか?いやまぁ、世の中には正座で三つ指ついてちゃんと「頂きます」の言える礼儀正しい淫魔(サキュバス)ってのもいたりするらしいが。

ご多分に漏れず、サーキュエール・ティアーズも淫魔(サキュバス)の本能全開、煩悩満開だった。魔王城常備軍に志願したのも一言で言えば、ヤリ目だった。


淫魔が(サキュバス)が吸う精とはすなわち、生。つまり、魂。

死霊族(アンデッド)の多くは魂が集積、凝縮したものがその本質だ。普通ならば死と共に散り失せる筈の魂が、何らかの理由でそこに留まってしまったもの。それが死霊(アンデッド)。故に、淫魔(サキュバス)にとって死霊族(アンデッド)は格好の餌となる。特に完全に肉体を失い、むき出しの魂だけになった幽霊(ゴースト)なんかは、彼女たちにしたら大変な御馳走らしい。こちらにしてみれば冗談でなく精子、否、生死がかかってる。そう、まさに死活問題なのだ。いや、まぁ、みんな既に死んでるんだけどな。

なので早々に釘を刺した。即ち、「死霊族(アンデッド)摘み食い禁止令」発令である。早急に手を着けると言ったのはまさにこのことで、誰も手篭めにするとかそんな事は言ってない。本人はいたく手篭めにされたがっていたが、念の為に言っておくと俺、肉欲とかないから。だって、骸骨(ホネ)だし。



「納得してもらえたようで良かったよ。成績はかなり優秀だし貴重な人材をこんな形で失いたくはなかったからな」


「……和k……合意の上でなら、いいですよね?」


納得してなかった。いいわけあるか。プロフィールではint高かったはずだが、賢そうには見えないなー。


死霊族(アンデッド)の魂は非常に繊細だ。集積、凝縮したとはいえ、何かの拍子でそれが緩めばそこから一気に解け散ってもおかしくはない。洗練された銀が放つ波動は、魂の波長に強く干渉するので死霊族(アンデッド)には危険だ。しかしより直接的に作用する淫魔(サキュバス)の一撃は、持ち堪えるのが難しいだろう。「ちょっとだけ舐めさせて?ね?ホントちょっとだけでいいから!」が致命傷になるのだ。ガラスのハートよりも繊細な、ガラスのソウル。彼女に言わせればむしろ氷砂糖のようなものらしいが。


「……いいけど、死霊族(アンデッド)にゃ色仕掛けは通じないぞ?基本肉欲ねーし」


「えっ?うそ?」


目を丸くして驚くサーキュエール。やっぱ、あほっぽかった。強いて言えば屍体(ゾンビ)は肉を求めるけど、あれは普通に食用目的だしな。


「普通に悪魔族(おなかま)でも食ってろ」


「それはもう、食べ飽きました……」


寂しそうに呟く。


「なら普通の食事してろ」


「うぅぅ……分かりました……」


すっかり肩を落としてしまった彼女の肩を叩き、手を差し伸べる。


「では、改めて。俺が第49代魔王、L.D.オールドウィローだ。よろしく頼むよ」


「サーキュエール・ティアーズです。若輩者ですが、精一杯がんばります!」


満面の笑みで握手を交わす。握り合う手に左手も添えて、


「えいっ!!」


「んなあっ!?」


「ええっ?!」


俺も傍らに控えていたサタンも目を丸くして驚いた。いや、俺に目玉はないが。

いい雰囲気を醸し出した握手は、むしろそれをぶち壊す吸精(エナジー・ドレイン)へと一瞬で変わった。とっさに展開した物理防壁(マテリアル・シールド)が彼女をゴツン!と弾き飛ばす。


「痛っ!」


「うおぉぉぉ、あっぶねぇ……油断ならねぇな!」


「ごめんなさい!ただでさえ人肌に飢えていたところに、王サマの優しい手に触れて、我慢できなくなってしまいました……」


「嘘だ!!おもっくそ「えいっ!!」って言ってたぞ!?」


「ちっ!」


舌打ちしやがったぞ、こいつ?!


「ついでに言うと、骸骨(ホネ)に人肌も温もりもないぞ?」


「もう一歩で死霊族(ごちそう)だらけのお城で王様生活を満喫できたのに……」


前言撤回。こいつ賢しいわ。ってか、小賢しい。んで、相当、黒い。


「も、申し訳ありません、陛下!」


「いいよいいよ、サタン。お前はもう下がってな。どうやら俺はこれからコイツにた~っぷりと調教(おしおき)しなきゃいけないみたいだからな?」

骸骨騎士「……彼女は本当に採用して良かったんッスか?」gkbr


ロード「少しだけ、後悔している」


豹の伝令官(パンサー・ヘラルド)「というか、サーシャなんかには絶対逢わせられないですよね?」


骸骨騎士「あー……間違いなく、喰われるッスね」

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