調査が必要かもしれませんね、ロード
「うおおぉぉぉぉっっ!!」
この機会を逃してはいけない。クアロが作ってくれたこの機会を。眩い光に目を覆い、たじろぐ骸骨騎士。今クアロが放った聖なる光では恐らくほとんどダメージがないはず。目くらましが関の山だ。だがそれで十分。この距離でその隙は致命の一撃を与えるには充分だ。
「砕け散れぇぇぇぇぇっっ!!」
大きく振りかぶった剣を、渾身の力を込めて打ち下ろす。
ミシリッッ!と、骨の砕ける音を再び聞いた。
「セロっ?!」
悲鳴にも似たクアロの呼び声に辛うじて意識を留めるもダメージは大きく、剣を取り落としその場に崩れる。
あろうことか骸骨騎士はあの状況から反撃を繰り出してきたのだった。その一撃は破れかぶれではなく、この胸を的確に、正確に、この胸を突いた。まさか、目を潰された、フリだったのか……卑劣な……
こちらには目もくれず、骸骨騎士の左手が紋を描く。
「来たれ、弓張月」
紋が宙を走り、長弓が現れる。そこから放たれた矢がアイと彼女の弓を、彼女が放った矢ごと貫いた。アイを襲った一矢は致命傷には程遠いが、武器を、それを繰る肩を破壊されたことは彼女にとって致命的だった。
いけない!臥せっている場合ではない。仲間を救わなければ!
しかし、思いとは裏腹に身体は動かない。もはやまともに動けるのは一番戦闘能力の低いクアロしかいないというのに……!いや、そのクアロもこちらに回復魔法を送るのに手が塞がっていた。そのクアロに骸骨騎士がにじり寄る。
「やめろっ!!」
必死に声を振り絞る。
もういい、もういいから。
クアロ、君だけでも――
しかしその願いも虚しく、クアロは大剣を振りかざす骸骨騎士を前にしても、最期の最後まで、僧侶の本分を全うした。
エントランス・ホールに号哭が響いた。
!魔王城.3F:玉座の間
「うん、途中までは良かった。非常に良かった」
いつものチャラい言葉遣いではなく、武人らしい口上。その上1対4という数の上での不利をものともしない奮闘。
「でも、あれはないわー。マジ引くわー」
だがあの騙し討ちで全てが台無しだった。
実際のところ、目眩ましが効いていようがいまいが武芸に長ける骸骨騎士には相手の攻撃を気配で察知する心眼スキルがある。それも通常は攻撃回避に用いるスキルだが、彼はそれをカウンターで迎撃する程に使いこなす。つまり、攻撃も防御も封じるには至らないという意味では、目眩ましなど最初っから効かないのだ。それを、あんな芝居まで打って誘い込んで……
「いや、でもアイツらアンデッド対策もとっていたし、連携もとれていたし。魔法使いもいつ回復するか分からなかったッスから……」
「言い訳とか男らしくないわー。んな卑怯なヤツが騎士を名乗ってていいわけ?」
騎士の称号を剥奪されればただの骸骨に成り下がる。一応侵入者はきっちり全員排除しているのだからそんなことはないだろうが、いや、でも、ひょっとしたらありうるかも…と思わせる勢いで骸骨騎士はディスられていた。なお、侵入者の亡骸は既に埋葬済み。レベルが低すぎる上に直接手を下したわけでもないため、ゾンビ化はなかった。
「それにしても…」
豹戦士が難しそうな顔をしていた。
「最近の人族の動向は不可解ですね。侵攻件数は大幅に減少、レベルも低下」
「その割にはアンデッド対策が取られていたり、玉座まで辿り着いてみせたり、油断ならねぇんだよなぁ~…」
「調査が必要かもしれませんね」
「……各大陸のスパイに連絡。冒険者ギルドの動向と各国のパワーバランスを報告させといて」
はっ。と、傍らに控えていたソーサラーが畏まり、隣の指令部へと急ぐ。
侵攻が少ないのはいいことだ。相手のレベルが低ければこちらの被害は少なくなるから、それも悪いことではない。だが、攻略のポイントが絞られてきつつある予感があった。なんか、嫌な予感。面倒ぃことになりそうな予感だった。
キャラ紹介#002
骸骨騎士
剣術や槍術などの武芸に長け、騎士の称号を賜った骸骨。現状では該当するものが一人しかいないため、個人名として通用しているが、本来は階級持ち骸骨を指す言葉である。
装備
クレイモア
ラージシールド
グレートヘルム
スキル(アクション)
バスタースラッシュ
ビートダウン
ソウルリリース
転送魔法 など
スキル(パッシブ)
武器マスタリLv10
心眼
骸骨騎士「武器ならナイフからロングボウまでなんでも。転送魔法で状況に応じて武器を使い分けているッス。鎧もあるけど、機動力が落ちるからこの装備が標準」
豹戦士「クレイモアは2mの大剣。でも骸骨騎士さんは片手剣の感覚で扱ってますね」
骸骨騎士「まぁ、俺自身のタッパもあるし?ただ斬撃性能は低くてほぼ殴打武器になってんだよな。あと、リーチあるから突きが便利ッス」
ロード「骸骨のクセにどんだけのstrだよ……」




