その命が尽きるまで
無理矢理短編にしたのでいろいろ削ってしまいました(´Д`)ですので、しっかり想像しながら読んで頂きたいです。もし感動してもらえれば何よりです。
ちなみに、個人的にはいろんなところを重ねてみたつもりですが……分かりますかね……?いくつかありますが、その一つとして最初の方の文章と最後の方の文章とで一ヶ所同じ文面が出てくるところがあるのですが……気付いてもらえたら嬉しいです!!
全ての運命には死と言う終止符が打たれる
それが例え、どんな美しい運命でも
それが例え、どんな惨めな運命でも
――全ての終末は、死へ行き着く。
「何も来ないわ。心配しないで。何があっても、私はあなたを守るから」
どこまでも、延々と続く色褪せた世界に、温かい女の人の声が響く。
大粒の雨が、どこか空の彼方にある器を引っくり返したように降り続けて、時折雷がとどろく。空も地面も、全部くすんだ灰色。けれど僕にとって、それが何なのかは分からなかった。僕は女の人の腕に抱かれて、泣き叫んでいる。
その時、また空が真っ白に光った。同時に、女の人の体もまばゆい光を放つ。空を光の筋が貫き、僕は荒野に投げ出された。
闇に、女の人の断末魔が響き渡る。
誰かが玄関の扉を叩いている。
助けてくれ、入れてくれ、なんて叫び声まで聞こえる。外は真っ暗で、もう真夜中なのに、どうしたのだろう。僕が布団から這いずり出ようとしたら、その前にお母さんが玄関の扉を開けたので、僕はまた布団にくるまり、耳を澄ませた。
「こんな遅い時間に、どうしたの?」
「家が……家が燃えちゃったんだ!」
「まぁ、なんてこと!!あなた、名前は?」
「カシミール……ホイスター」
「カシミールね。お母さんとお父さんはどうしたの」
ここで、会話が途切れた。どうやら入って来たのは、僕と同じくらいの男の子みたいだ。僕は気になって、玄関をのぞき込みに行った。
見慣れたオレンジがかった蛍光灯が光っている。その下に、これも見慣れたお母さんの背中。その向こうには、見たこともない男の子がいる。あの子は誰だろう――。
僕より肌の色が白くて、ボサボサになった金色の髪の毛をしている。あの髪の毛は、綺麗にしたらもっと格好良くなりそうだ。体は小さくて、やせている。僕は自分のお腹をさすって考えた。僕でも普通に比べたらやせていて体が小さいけれど、あの子は僕よりもっとやせていて小さい。
男の子はうつむいたまま、黙りこくっている。
「どうしたの、お母さんとお父さんは?」
お母さんが聞き直すと男の子はうめいて、その顔からキラリと光る水みたいなものが落ちた。
「あら、ごめんなさい、何か悪いこと言っちゃったかしら」
すると男の子は僕の家の玄関に崩れ落ちていきなり泣き出した。僕はびっくりして後ろに下がった。
しばらくして、泣き声がやんだ頃にまた玄関をのぞきに行く。
男の子はまだ泣き止んでいないけれど、もう声を上げたりはしていない。
「大丈夫?」
「僕……お母さんもお父さんも知らないよ」
男の子がしゃくり上げながら言った。
「どういうこと?」
「空には雷さんがいるんだ。でもね、雷さんはひどいんだよ。僕のお母さんを殺したんだ。お父さんは昨日兵隊さんに行っちゃった。でも、他の人の話を聞いていたら、お父さんもう帰って来ないって」
僕のお父さんもそうだ。少し前に国の偉い人達が僕のお父さんを兵隊に行かせた。だから、今家にいるのは僕とお母さんの二人だけだ。
「ってことはカシミール、あなた一人なの?」
「一人じゃないよ。明日おばあちゃんとおじいちゃんが来てくれるって。でも、家燃えちゃった」
お母さんが思い出したようにハッとして、カシミールを押し退けて外へ出た。僕にもチラリと外が見える。真っ暗な中に火のような明かりがある。おまけに消防車の音もする。
お母さんはホッとため息をついてカシミールを振り返り、消防車の音の方を指差した。
「良かったわ。ちゃんと消防の人達が来てくれたようよ」
「燃えてるのは?」
「大丈夫。消防の人達が来たからにはちゃんと消してくれる。カシミール、どうしてこの家に来たの?他にも近くに家なんてたくさんあったのに」
「前にお父さんが話してくれたの。ここの家の上についているのはヒライシンって言って、お母さんを殺した雷さんをやっつけてくれるんだって」
これは、まだお父さんが兵隊に呼ばれる前、戦争が始まる前につけてくれたものだ。ゴムで出来ていて、もしも雷が落ちたときは吸い込んでくれるらしい。
「そう……明日、おばあちゃんとおじいちゃんが来てくれるのね。おばあちゃんとおじいちゃんの電話番号は知っている?」
カシミールがポケットに手を突っ込んで、小さな紙切れを取り出して、お母さんに手渡す。
「お父さんが書いてくれた」
「ありがとう、少し待っててね」
と、お母さんはリビングにある電話を取りにこちらへ向かってきた!!
僕は慌ててカシミール達を見るのをやめて、ベッドに潜り込んだ。
少ししたら、お母さんがまた玄関に戻って来た。お母さんが僕の寝ている部屋の前を通り過ぎたことを確認して、またのぞき込みに行く。
「今、おじいちゃんとおばちゃんに電話してきたわ。明日はここに来てくれるって言ってくれたから、今日はうちへ泊まっていくといいわ。うちのお父さんも少し前に戦争に行ったの。だからベッドはちょうど一つ空いているし、それにあなたと同じくらいの息子もいるの。どうかしら?」
カシミールがうなずく。お母さんもうなずいて、カシミールを僕のお父さんが寝ていたベッドに連れて行った。何だか楽しくなりそうだ。
あれから――カシミールが来てから――5年が経って、僕らは9歳になっていた。
今はカシミールとそのおばあちゃんとおじいちゃんが僕の家の隣に住んでいる。ちょうど空き部屋になっていたからだ。
ここは田舎だから、都会みたいに空襲が来たり、なんてことはまずない。少し行けば澄んだ小川が流れているし、森だってある。この5年の間に僕とカシミールは大分仲良くなった。それに驚いたことに、僕とカシミールの誕生日は全く一緒の日だった!
それもあって、毎年夏になると決まって小川へ一緒に遊びに行くようになっていた。たまに森で虫とりをしたりするけれど、川で遊んでいる方が断然面白い。
今日も、川に遊びに来ている。
夏の水浴びはこの上なく最高だ。カシミールは手で魚を捕まえるのがうまい。だからよく、どちらが手掴みでたくさん魚をとれるか勝負している。
「今日は何匹とるの?」
「50匹!!」
カシミールが元気良く川にダイブした。僕も後を追って、バシャバシャと水しぶきを飛ばしながら川の中を歩いていく。小川はどこも浅瀬だけれど、奥の方は腰くらいまで水が来る。でも、この腰くらいまでの深さのところが一番大きな魚がウヨウヨいるのだ。もちろん、僕とカシミールもこの大きな魚を狙って水に潜った。
うろこが光に当たって光っている。虹みたいに光るやつまでいる。向こうにカシミールの姿が見えた。カシミールも一生懸命魚に手を伸ばしている。僕もお目当ての魚を狙って手を伸ばす。
川から上がると、僕のバケツにもカシミールのバケツにも大量の魚がはねていた。
「こりゃあごちそうだ!!」
「早く家に帰って料理してもらおう」
僕達はうきうきしながら家に帰った。そろそろ日も暮れてきていて、西の空が真っ赤に染まっている。気温も少し涼しくなった。
「明日は何する?」
「あー、明日か。そうだなぁ。久し振りに森へ行ってみたらどうかな」
「じゃあそうしよう」
家に着いた。
僕が家に帰ると、すぐにお母さんが出てきて、
「ねぇ、さっき紙切れが届いたの……それで……」
と言いかけて、わっと泣き出した。
「ど、どうしたのお母さん」
「ああ、どうしたらいいの!あなた!私はこの戦争が終わって、元通りの生活が来るのを待っていたのに……!!」
僕は何のことだか分からなくて、せわしなく唇をなめ回した。お母さんがこんなにも取り乱しているところなんて、今の今まで見たことがない。
「それで、何があったの?」
僕が改めて聞くと、お母さんは泣きながらとんでもないことを口にした。
「あなたのお父さんは――私の愛した人は――戦死ですって」
えっ――。
僕は思わず持っていたバケツから手を離した。地面に、ついさっきカシミールととってきた魚と水が投げ出される。
「嘘だ!」
僕は急いで家の中へ駆け込み、お母さんがさっき言っていた紙切れを探した。
と、リビングの真ん中に置いてある大きな机の上に何やら白いものが見えた。僕はそいつを引ったくって、明かりをつけてまじまじと見る。そこには確かに、お父さんの名前が書かれていて、となりに『戦死』の文字がくっきりと浮かび上がっている。ハッキリとした黒いインクで、『戦死』。場所は今やっている世界大戦の最前線だ。
何度も目をこすってみたり、瞬きしてみたりしたけれど、もちろん、紙に書かれている文字は変わらない。何度見ても、僕のお父さんの名前と『戦死』。場所は最前線。
僕はテーブルに突っ伏して泣きじゃくった。頭の中に、お父さんの顔が浮かぶ。避雷針をつけたときの満足そうな顔。
お父さんはチェスが好きだった。それで、一つのチェス盤をいつでも大事そうに抱えていた。僕が初めてチェスでお父さんに勝ったとき、お父さんは嬉しそうに笑った。僕のチェスの腕が上がったことに、喜んでいたのだ。戦争に行くために兵隊服を着て、家を出たとき、お父さんは言った――必ず、生きて帰ってくるからな。それなのに――それなのに――
「なんで……なんで……!そんなの、あんまりだ!!」
黄昏の世界に、少年の声がこだました。
今日は、僕とカシミールの12歳の誕生日だ。同じ誕生日だったから、一緒に祝うことになった。
カシミールの家より僕の家の方が少しだけ広いので、誕生日祝いは僕の家でやることになり、今日はカシミールのおばあちゃんとおじいちゃんも来ている。僕とカシミールはケーキの材料を買いに近所のスーパーまで来ていた。
最近はこの田舎にもたまに空襲警報が響き渡るようになって、前ほど外へ行くことはできなくなっていたからちょうどいい。
スーパーに着くとまずケーキのスポンジを作るための材料を買った。それから牛乳だのイチゴだのを買い揃えて、最後に美味しい紅茶のもとを買う。
けれどもちろん、こんな買い物だけじゃ物足りないので、余ったお金でお揃いの鉛筆を買った。このことはお母さん達には秘密にしておこう。
「今晩はケーキ三昧だね」
「最高だよ!僕はケーキが大好きなんだ」
カシミールがはしゃぎながら言う。
「でも、カシミールの分のケーキのイチゴは僕がもらうよ」
僕がふざけて言うと、カシミールは鼻を鳴らした。
「なら、僕はお前のケーキのスポンジをがっぽりもらってあげる」
僕らは笑い転げて、しまいには涙まで流して笑った。もっとも、帰る途中に通りすがりのおじさんにうるさいと注意を受けてしまったけれど。
僕達の笑い声が聞こえたのか、家まで行くとインターフォンも押さないうちに中からカシミールのおばあちゃんが出てきた。
おばちゃんは満面の笑顔でおかえり、と僕らを迎えると、家の中に通した。
僕とカシミールはリビングのテーブルに今買ってきたものが入っている袋をどっさりと置いて、僕の部屋へ向かった。あとは、ケーキが出来上がるのを待つのみだ。
「ケーキが出来るまで、何してようか」
カシミールが聞く。
「うーん……外には行けないしなぁ」
「そうだね、どうして前までなんともなかったのに急に空襲なんて来るようになったんだろ。この前は三軒焼けたって」
と言って、カシミールは口をつぐみ、顔を曇らせた。
「どうしたんだ?」
けれどすぐに首を振って、何でもない、と笑って見せる。
「それより、何かしよ」
僕はうなってチェスを出した。
「チェスなんてどうかな。お父さんが……僕のお父さんが生きていた頃、大事にしていたチェスなんだけどさ。お父さんが兵隊に行ってからは使ってないんだ」
「そっか、君のお父さん戦死したんだっけ」
カシミールがつぶやくように言って、すぐにこちらを向き直り、よし、チェスをしよう、と言い直す。
「よーし、僕が白だ!」
カシミールは得意そうに真ん中の白のポーンを2マス進めた。
僕もそれに習って、真ん中の黒のポーンを1マス進める。
チェスを始めて、ちょうど10回目の試合が終わったところで、ケーキが出来上がった。僕のお母さんがやって来て、ケーキが完成したことを伝えてくれる。
テーブルの真ん中にはこれまで見たこともないくらい大きなケーキが置かれていて、ろうそくが12本立っている。その全部に小さい炎が灯っていて、良い香りを漂わせている。
僕らは早速それぞれの席につき、ろうそくの炎を吹き消すと、拍手が起こった。
僕は少し照れながらケーキにナイフを入れ、自分のケーキ皿によそり食べ始めた。
カシミールも好きなところを切り取り皿によそって食べ始める。後からお母さんとカシミールのおばちゃんおじいちゃんも食べ始め、空襲が来ていることなんか忘れてこれまでのことを一緒に語り合った。
いよいよ空襲が激しくなってきた。
最初にここへ爆弾を落とされてから1年。僕とカシミールは14歳になった。あの時の爆弾は爆弾と言っても、本当に小さい手榴弾みたいなものだけだったけれど、最近の爆弾は違う。
防空壕に入らないと命を落とすかも知れないくらい大きな爆弾だ。カシミールのお父さんの戦死通告も昨日届いた。けれどその知らせに悲しむ余裕もなく空襲警報が鳴り響き、防空壕に入った。
ここ3日くらいは毎晩のように防空壕で夜を明かしている。
けれど今晩は珍しく空襲は来なかったので、久し振りに静かに夜を明かすことが出来そうだ。
そう言えば、今日はカシミールの姿を一切見なかった。どうしたのだろう。でも流石にもう夜は遅いし、訪ねるわけにはいかない。
きっと明日になればまた会うだろう。
僕はさして気にすることなく、夢の中へ落ちていった。
次の日の夕方。
空襲警報が再び鳴り響いた。しかも、聞くところによれば今回の空襲は今までにも増して強力なものだと言う。
僕とお母さんとカシミールのおばあちゃんとおじいちゃんはすぐに防空壕に入ったけれど、カシミールはいくら待っても防空壕に来なかった。カシミールのおばあちゃんとおじいちゃんに聞いたら、カシミールは外に出掛けたっきり帰ってこないらしい。
僕は今すぐにでもカシミールを捜しに行きたかったけれど、こんな激しい空襲では捜しに行けない。
外が爆撃の音でいっぱいになった。
生々しい爆音が耳をつんざく。
防空壕の中はしんと静まり返っている。
誰かが防空壕の扉を叩いている。
助けてくれ、入れてくれ、なんて叫び声まで聞こえる。聞き覚えのある声だ。
誰の声だったか――僕はハッとして立ち上がった。
「カシミールだ!」
防空壕の中がざわつく。
「防空壕の扉を開けて!!カシミールだ!!カシミールが死んじゃう!!」
けれど誰も動かなかった。
まだカシミールは叫んでいる。枯れた声で、叫んで、防空壕の扉を叩いている。
「入れて!!怖い!!空襲だ!!僕を中に入れてよ!!お願いだ!!僕、まだ死にたくない!!生きたいんだ!!」
爆撃の音がいっそう強くなる。
カシミールの悲痛な叫び声が聞こえた。
「嫌だ!!まだ生きていたい!!助けてくれ!!暑い!!暑くて肌が溶けそうなんだ!!」
外で何かが割れる音がした。
また、カシミールの悲鳴。
僕は急いで扉へ向かった。誰も動かないなら、僕しかいない。扉の取手に手をかけて――思い切り引っ張る。
扉が開いた。空が真っ赤だ。けれどこの赤は、いつかカシミールと見た真っ赤な空じゃない。真っ黒な煙があちらこちらから立ち上る。
前を向いた。誰もいない。
「カシミール!!」
返事はない。
爆撃がすぐ近くに落ちた。まばゆい閃光が僕の目を眩ませる。蒸し暑い熱風。すぐそばで炎が上がった。ついさっきまで生き生きとたっていた木が、一瞬にして燃える。上からガラスの破片が落ちてくる。カシミールの姿はどこにもない。扉が重くて、閉まりかけた。
僕の腕がしびれる。そのまま――バタン!!
爆撃の音が小さくなる。
どこからか入ってくる冷たいすきま風が僕の肌を撫でた。
防空壕の中が静まり返る。
暗い。
もう誰の叫び声も聞こえない。
少し経った。
爆撃の音がやんで、僕達は防空壕から出た。カシミールはどこだ?
思えば、つい一週間くらい前にカシミールが言っていた――ここが、僕の秘密基地だよ。ここなら、防空壕がなくても地下だから空襲から身を守れると思うんだ。
僕は走った。
カシミールの秘密基地――あれは、どこだったか。
確か、カシミールの家の向かい側にあるマンションの、半地下になっている自転車置き場だった。
カシミールだってあの時は、防空壕がなくても空襲から身を守れると思うんだ、なんて冗談で言ったに違いない。でも、防空壕に入れないとしたら――。
「カシミール!!」
半地下になっている自転車置き場の前まで来て、立ち止まった。
足元に、ぼろぼろで、右上の方がちぎれた写真が落ちている。僕はそいつをすくい上げるようにして拾った。
3人の人が写っている。
真ん中に、小さい子ども、その右斜め後ろに女の人、反対側に男の人――これは、カシミールの家族。カシミールと、雷にうたれて死んだカシミールのお母さんと、戦死したカシミールのお父さんだ。
僕の目の端に、何か映った。
綺麗な金色の髪の毛、色白の肌、小さくて痩せこけた体――カシミールだ。カシミールはその手に、さっきのぼろぼろの写真のちぎれた右上のところを握りしめていた。
「カシミール……」
僕は地面に横たわったているカシミールの近くにひざまずいて、カシミールの頬を撫でた。肌は冷たくて、とても血が通っているようには見えない。唇は紫色に変わっている。目は閉じられていて、ひどく苦しんだ証拠に表情は苦しそうに歪んでいた。
空襲の後に残った生ぬるい風がカシミールの髪の毛に吹き付ける。
初めてカシミールと会ったときのことを思い出した。もう10年も前だ。あの日も、カシミールは決して笑ってはいなかった。お母さんもお父さんもいなくて、おまけに家は火事になって――4歳のカシミールには怖くて仕方なかったに違いない。
「僕も……カシミールと一緒に……生きていたかったのに」
僕はカシミールの胸に頭をうずめて、泣き出した。そこへ、雷が真っ赤な空を貫いた。僕の家の避雷針が、ビリビリと光る。
それでも僕はカシミールから離れなかった。
けれど、真実は変わらない。
カシミール・ホイスターは自転車置き場の冷たい床で息絶えたのだった。
読了ありがとうございます。
引き続き私を見守って頂ければ、と思っております宜しくお願いします☆