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いちごミルク  作者: 田島 姫
君と俺との出会い編
12/17

朝ご飯は大事です

それから俺達は三人で夕食を食べた。

出てきた料理がかなりしっかりした和食だったのにはびっくりした。

「なにをツクルか、トテモなやみましたけど、ワショクならまちがいないカナって」

女の子はニコニコしながら言った。

彼女の言った通りかなりおいしくて、久しぶりに家庭の味を食べたなって感じだった。

俺も料理はできる人間だけど、いろいろありすぎて自分で飯を作る余裕もなかったし、ここ何日かはまともに飯が食えるような状態でもなかったから、あっという間に食べてしまった。


「ほんとにうまいよ。

 これで同い年とかだったら惚れてるかも・・・」

「エッ!?

 そんなにホメテもなにもデテきませんヨ!!」

「・・・よかったじゃねーか。

 嫁ぎ先見つかって」

「あ、でも料理ができなきゃダメってことじゃないよ!

 俺自身ができるタイプだから、そこはあんまり問題じゃないから」

「では、ごシュジンさまでもマッタクもんだいナイということデスネ」

「な!

 おまえ何さらっと言ってやがる!」

「エ?

 だってイマシガタふてくされていませんデシタカ??」

「ふ、ふてくされてねーよ!!」


そうして二人の言い合いが始まってしまった。

でもなんだかそんな姿もほほえましくて、この時間がずっと続けばいいのにな、なんて思った。

初めて来た場所。

初めて会った人達。

初めて知る世界。

全部初めてなはずなのに、今はなぜか全部がとても懐かしい気がしたんだ。


「おい、聞いてんのかよ?」

「へっ!?」

「キイテいなかったヨウですね」

「あ、ごめん。

 考え事してて」

さっきまでギャーギャー言い合っていたのに、どうやらそれは話が済んだようだった。

「明日の朝飯、何が食いたいのかって聞いてんの」

ふてくされてるとかの話から、どうなったら朝ご飯の話に変わるの??

女の人達って話があれよあれよと進んで行くからすごいよなっていつも思うんだよね。

「朝ご飯ですか?

 俺、あんまり食べてないから別になくても・・・」

「イイわけありまセン!」

女の子がすごい勢いで反論した。

「アサごはんタベナイと、イチニチがんばれマセン!

 カルクでもかまいませんので、ゼッタイにたべてクダサイね!」

「りょ、了解しました!!」

「ごシュジンさまもですよ!」

「げっ、とばっちりじゃねーかよ」

女の子は言いきると食べ終わった皿をシンクの方へ片付けに行った。


「なんかお母さんみたいだなぁ」

「そんじょそこらの母親より厳しいよ。

 嫌いなもの残すと、食べ終わるまで席から立たせてくれないし」

「俺、昔学校の給食で同じことあった。

 泣いても許してもらえなかったし、昼休みになってもそのまま席で食わされたなー」

「風呂あがって髪ちゃんと乾かさないと、めっちゃ言われるし」

「風邪ひくからってこと?

 めっちゃ優しいじゃん」

「優しいか?

 口うるさいだけだろ」

「ごシュジンさまがキチンとやらないからデスヨ」

女の子はしっかりと食後のお茶を持って戻ってきた。

「でも家事、いろいろやってくれてるんでしょ?

 そしたらあんまり君も文句は言えないね」

「そのトオリです。

 サスガおきゃくサマはわかっていらっしゃいマス」

「結局あんたもそっち側かよ」

「俺も家事ができる身だから、家事の大変さはわかってるつもりだからねぇ。

 こんなふうに言わなくても食後のお茶持ってきてくれるなんて、かなり気が利くし。

 これで文句言ったら罰あたるよ?」

「ソウダそうだー!

 モットいってやってクダサイ!」

「わかったよ!

 あたしが悪かったよ。

 朝ご飯食べりゃあいいんだろ。

 けど明日は朝早くから出掛けるから手軽なものにしてくれよ?」

「じゃあ俺も朝ご飯の支度手伝おうかな。

 何もしないのも気がひけるし、一人より二人でやったほうが楽しいじゃん?」

「おきゃくサマはホントウにやさしいのデスね。

 ではオネガイします」


そんな約束をして、女の子の片づけの手伝いをした。

彼女は明日の準備があるとのことで部屋から出て行った。

女の子の話だと、いろんな資料とかがある書斎があって、その部屋でこもって仕事をするらしい。

自分のことなのに、自分は何もできないのだと思うと、やっぱりとても申し訳ない気がした。

「テキザイテキショですよ」

女の子は俺を気遣ってか、そう言った。

適材適所か。

「今の俺にできることは・・・うまい朝ご飯作ること、かな」

そう言った俺に女の子はとびきりの笑顔を返してくれた。




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