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いちごミルク  作者: 田島 姫
君と俺との出会い編
10/17

冷静な女の子

ちょっとおふざけな感じ入ります(笑)

「さて、もうこんな時間か」

彼女が腕時計を見て言った。

俺も自分の腕時計を見ると、もう十七時をまわっていた。

昼過ぎに起きて、家を飛び出して、あてもなく歩いて、ここに着いたのは十四時頃だったから、かれこれ三時間経っている。

「そんなに時間が経ってるとは思わなかったけど、疲労感は三時間以上のものがあるな」

自分の知らないことがこんなにも世の中に存在するだなんて思わなかった。

そういうことを頭に入れようとすれば、疲労の蓄積もハンパじゃない。

ほんとに久しぶりに勉強したような気分だ。


「お疲れのところ申し訳ないが、今後のスケジュールの相談だ」

「あ、そうだよね。

 俺いったいどうしたらいい?」

「・・・あんたは今日家に帰るな」

「はい!?」

想定外のことを言われて、まぬけな声が出てしまった。

しかも相談って言ってたくせに『帰るな』って命令系なんですけど!


「俺、ダンボールを布団の代わりにして生活するのはごめんです!」

何が好きでホームレスをやらなきゃいけないんだ。

まだまだ貯金だっていっぱいあるんだぞ!!

「誰がホームレスやれ!なんて言ったよ。

 話は最後まで聞け。

 それになんで家に帰るなイコールホームレスなんだよ。

 ビジネスホテルでもネットカフェでもいろいろ選択肢はあるだろが」

「・・・確かに」

あきれ顔の彼女の横で女の子はくすくす笑っていた。


「今日はあんたの世界には戻らない方が効果的だと思ってな。

 だからここに泊ってけ」

「それは全然かまわないんだけど・・・」

むしろ嬉しいです、と思ったが、それよりも気になることが一つ。

「ここは俺の住んでる世界とは違う場所なの・・・?」

そう尋ねながら俺は窓の近くへと歩み寄った。

窓から見える景色は見覚えのある場所だ。

そんなに多くはないけれど、人の行き交いだってある。


ここから見える景色は俺の知ってる世界とは違うということなのか?

そこを歩いている人々は彼女の世界の住人ということなのか?


「あれ?

 この部屋のこと話してなかったっけ?」

彼女も窓の方へ歩み寄りながら俺に聞いた。

「ワタクシがきいてイタかぎりではおハナシしておりマセンでしたよ、ごシュジンさま」

女の子が冷静に答える。

彼女はちょっと申し訳なさそうに俺を見ながら話を続けた。

「あー、悪い。

 てっきり説明した気分になってた」

「いいよいいよ。

 でも意外。

 結構抜けてるところあるんだね」

ここに来てすぐの時も女の子に、仕事をしなくていいのか?と突っ込まれていたことを思い出した。


「・・・たまに言われる。

 直さなきゃと思ってはいるんだが・・・」

「えー、別にそのまんまでいいと思うよ。

 かわいいじゃん」

「!!!!!!」

あれ?

そんなに反応するところ?

「べ、別にかわいくなんかねーよ!

 おまえ、そういうこといっつも言ってんのか?」

顔は冷静を装おうとしてるけど、言葉の節々に動揺が見られる。

俺の予想が間違っていないとするならば、彼女はいわゆる『あれ』なのかもしれない。


ちょっと試すつもりでそれまでよりはるかに優しい口調で彼女に言った。

「いつも言ってるわけじゃないよ?

 本当にかわいいって思ったから言ったんだ。

 それに君って結構しっかりしてるように見えるし、隙がない感じだから、ちょっと抜けてるくらいがちょうどいいんじゃない?」

「・・・」

うつむいてしまった。

うーん、ちょっと責めすぎたか?

「・・・」

ここまで沈黙が続くと、俺も困っちゃうんだけどなぁ・・・

お?ちょっと顔が動いた。

「・・・・・・・・・・・ん、ありがと」

彼女は照れた顔を見せないようにそう言った。


やっぱり俺の予想通り!

彼女は『ツンデレ』だ!

実は俺はツンデレな女の子がタイプなんだよね!

って、そんなこと誰も聞いてないか。


「テレたり、モウソウしたりしてイルところにモウシワケないのデスが、ハナシをもとにモドシませんか?」

冷めた目で女の子は俺と彼女を交互に見つめた。

「あ!すまない・・・」

女の子にそう言われて、彼女はハッとして、先ほどまでの冷静な彼女に戻ってしまった。

もしかしたら彼女は女の子にこうやって時々突っ込まれているのかもしれない。

ツンデレなところが見れないのは残念だけど、今は真面目な話をしようとしているところだったので、またの機会を狙うことにした。

ってか妄想をしてたわけじゃないんだけどなー。


「えっと、この部屋のことだよな。

 ここは『はざまの部屋』って言う。

 名前の通り、あんたの世界とあたしの世界の間に存在する」

「どちらでもないってこと?」

「言い方を変えればどちらでもある。

 ただ今は仕事の関係上、あたしの世界よりあんたの世界に近い場所にある。

 だから窓からの見える景色はあんたの世界のものだ」

彼女はコンコンと窓を軽く叩きながら言った。


「そういえばここに来る途中、変な感覚になったんだよね。

 周りの人達が俺のこと見えてないっていうか、すごく近くにいるのに距離を感じるような・・・」

「それはあんたがはざまの部屋のテリトリー内に入ったからだろう。

 階段上がる前のところから半径百メートルくらいはこっちのテリトリーになると思う。

 残念ながらあたしはそのドアを使って出入りしないから正確なことはわかんない」

「え?じゃあどうやってこの部屋を出入りするの?」

「忘れたのか?

 開世の扉のこと」

「あぁ、それ使えばどこにでも行けるの?」

「初めて行く場所には住所が必要だけどな。

 一度行ったことがあって、頭の中で場所を思い描ければ住所は必要なくなる。

 だからあたしの世界に帰るのは楽なもんなんだが」

「何をするにもいろいろ手順が必要ってことだね」

今までの話を聞いていて思ったのが、筆法陣が使えるとか、二つの世界を行き来できるとか、夢のような話のわりに、それを使おうとするとき、どこかしこに現実的な部分が多く入り込んでくる。

こんな不可思議な話をどこか受け入れられる自分がいるのは、彼女の世界にそういう部分があるからなのかもしれない。

なんでもありの世界だったら、嘘くさくて信じられたものではない。


「話戻すけど、あんたにとってここは、あんたの家から歩いてこれる距離に存在するビルだと思ってるだろ?

 でもそうじゃなくて、この部屋は基本的に二つの世界のはざまを当てもなく移動しているんだ。

 移動している時に、あたし達の世界の力があんたの世界で通常よりも大きく反応している場所があると、この部屋は自動的にその場所に留まる。

 そして依頼者をこの部屋へ引き寄せる。

 そうして今はあんたがやってきたというわけだ」

「へぇ、この部屋ってなんかすごいんだね」

「アタリまえデス。

 これがごシュジンさまのチカラなのデスから!」

女の子はそう言ったけど、彼女は少し寂しげな表情で首を振った。

「この部屋は借り物の力だよ。

 だからあたしにもよくわからないことはたくさんある。

 だけどここが安全で安心な場所であることは間違いない」


この時俺にはなぜ彼女が寂しそうな顔をしたのか、まったくわからなかった。

理由は聞いたらいけない気がして自分から話を進めた。

「とりあえずここが俺の世界でも君の世界でもないということはわかった。

 けどなんで俺は家に帰らないほうがいいの?

 帰ってこないほうが変に思うかもしれないよ?」

そう言いながらまた疑問が浮かんだ。

「それにピアーにここにいることがばれたりしないの?

 もし俺を監視でもしてたなら、俺の世界から俺が消えたの、わかったりするんじゃないの?

 そしたら今頃逃げ出しちゃうんじゃない?」


俺の怒濤の質問攻撃に彼女はちょっと苦笑いしながら答えた。

「じゃあ順番に説明しよう。

 まず、はざまの部屋に入った時に、ピアーがあんたを監視していた可能性。

 その答えはノーだ。

 なぜなら監視をされている状態なら、この場所を見つけられない。

 あんた、家を出てからどのくらい歩いてここに来た?」

「確か一時間以上はふらふら歩いてたと思うよ」

「その一時間以上の間はピアーに監視されていたと思う。

 普通の人間があたし達の世界の力の影響を受けている時、そこには絶対にあたし達の世界の住人が関係している。

 こっちの住人が近くにいる時には、はざまの部屋のテリトリー内に入ることはできない仕組みになってるんだ。

 それくらいしないと容疑者全員に逃げられちゃって仕事にならないからな」

「つまりピアーからしてみたら、俺は無意味にふらふら歩いているように見えてただけで、はざまの部屋の存在には一切気付いていなかったってこと?」

「そうだ。

 途中でピアーも一時間以上ただあんたについていくのに飽きたんだろう。

 あんたのそばを離れた。

 その瞬間、あんたはこの部屋のテリトリー内に入り込んだってわけ」

「どこに行ったんだろう。

 俺から離れちゃったら力発揮できなくなるんでしょ?」

「すぐに能力がなくなるわけじゃない。

 充電式みたいなもんで長時間離れるとだんだん力が弱まってくるんだ。

 だからちょっとそばを離れるのは問題ない。

 それにあんたの世界にはあたし達の世界にないものがたくさんある。

 自動車なんかがそうだ。

 さっきのリストによると、ピアーはまだ二十歳になったばかりだったから、そういうものに興味を惹かれてもおかしくないさ」


知らない世界。

知っていても行ったことのない世界。

どちらの場合でも初めて見るものに対しての興味っていうのはそんなに変わらないのかもしれない。

知識がどんなにあっても、結局は自分の目で見たものが自分にとっての真実なのだから。


「ちなみにだけど、あんたからあたし達の世界の力がどんなに強く出ていても、ある程度の距離を離れてしまえば、その力をたどって対象者を探すなんてことはできない。

 基本的に力の影響を受けられるのは目視できる距離にいるというのが条件だ」

「もしかして家に帰らないのはピアーと俺の距離を離して力を抜くのが狙い?」

「それもある。

 今のヤツにできることはあんたが部屋に帰ってくるのを待っていることしかない。

 探すこともできなくないが、体力の消耗と力の消耗はつながってる部分がある。

 へたに動くよりかは無駄なエネルギーを消耗しないように待っているほうが確実だってことはピアーもバカじゃないからわかっているだろう」

「俺が一日帰らなければ力は全部抜けるの?」

「んー、あんたの力の漏れ方普通じゃないから一日くらいじゃ全部は無理だな。

 全部抜こうと思ったら三日くらいはかかっちまうかも」

「三日!?

 そんなに待ってたら大家さんからのタイムリミットになっちゃうよ!」

「別に力を全部抜く必要はないよ。

 タイムリミットがあるのも重々承知だ。

 それでも今から捕まえに行くのは無計画すぎる」

「それじゃぁ・・・?」

「明日の十七時、ピアーを捕まえに行く。

 必ずな」



これから少しずつツンデレさせていきたいです☆

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