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天気魔報士<短編版>  作者: 大森六


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第3話 魔天気、発動

「前世の思念にむくいることができた時、精霊は神の恵みを得て生まれ変わる」


『……でもよ。精霊になるほどの強い思念を持った魂が、魔天気まてんき以降に生まれたのなら、あの()()の歴史って数十年も無いってことなのか?』


「……私もわからない。兎に角、あのクラウが本当に魔天気以降に形成されたなら、想像を超える数の地国じごくの民の思念が幾重にも重なり太陽の光を徐々に弱くしたと断定できるわ」


『本来、平穏な生活で人生を終えた魂は強い思念を持たずに天へと昇れる。だが平穏をぶち壊す魔天気が弱い思念をクラウ土に変え、更に俺達の様な強い思念を持つ精霊を今も生み出し続けているってわけか』


「そう! つまり私たちが()()()()を受けるために……強い思念へ報いるためにとるべき行動は?」


『魔天気制度をこの地国から無くせばいい!』


 二人のやるべきことが決まった。



 翌日、ピピと祖母にお礼と別れを告げるラナ。



「ラナお姉ちゃん、もう行っちゃうの?」


「ピピ、空から降ってきた私とモックに優しくしてくれてありがとうね。このお礼はいつか必ずするわ」


「じゃあ、また戻ってくるんだね! 約束だよ」


「うん、必ず()()よ! 豊かだった頃のポポロ村に!」



 こうしてラナとモックは王都オアシストへ向かった。



 * * *



 舗装された街路と美しい建物の街並みを着飾った貴婦人が歩いている。活気のあるレストランや食材市場。これが王都という場所か。


「みんな楽しげだな……」


 王都上空を心地よい光が包み込む。街の中心の大きな噴水が水を吹き上げて笑っているように見える。


『お前さ、この光景が後どれくらい持つのか大体わかるんだろ?』


 ラナのモコモコマフラーという設定で首元に巻きついているモックの問いに軽く頷くラナ。


「近々また魔天気を降らせるって市民が言ってたわ。もう周辺の()も大地も皆カラカラよ。自然の摂理に反するどころか、既に崩壊している」


『もう少し情報収集だな。王宮を攻めるのはその後だ』



 こうしてラナとモックは王都全体を探索して得られた情報を整理しつつ、作戦を練る事に。



「この王都は四本の魔塔によって魔天気を制御しているわね。それぞれの魔塔には常時魔法士が十数名いる。警備と魔天気操作とに役割分担している」


『王宮の警備も厳重だな。魔法士と騎士が見張りだ。忍び込むのは俺がいれば問題はないが』


「うん。ドスグロッテ政権を終わらせることは多分簡単。でも問題はその後誰がこの国を立て直すかよ」


『王都の市民が今の豊かな生活に満足していたしな……誰もついてこねぇよ』


「そこなんだけど……次の魔天気……市民にとって最悪な展開になるはずよ」


『どういう意味だ?』


「とりあえずモック、今から王都に忍び込むよ。作戦は――」



 * * *



 モックに掴まって空を飛び、王宮内部のベランダから忍び込んだラナ。


「じゃあ、モック。作戦通り広場に向かって。私たちは念波で状況を把握しよう 」


『わかった。こっちは準備しておくから心配するな。ラナも気をつけろよ。お前だって無敵じゃないんだから』


 笑顔で頷いて、それぞれ別行動を開始した。



「ミラージュ」


 ラナが唱えた数秒後、手足から徐々に身体が消えていく。風景と同化した。


 音を立てないよう注意して王室を探す。回廊で偉そうな人間が急ぎ足で何処かへ向かっている姿を目にする。すれ違う従者に怒り口調で話しかけている。


「おい、国王様は今どこだ!」


「はい! ワルダー宰相! 国王様は謁見の間にて魔法士と……」


「あのボンクラめ……勝手に動くなと言ったのに……」


 急いで謁見の間に向かう宰相の後をつけるラナ。五分ほど王宮内を移動して、大きな扉の前に立つ騎士二名に命令する。


「さっさと開けろ!」



 開いた扉の隙間をすり抜けるように急いで国王に近づくワルダー宰相。


「ドスグロッテ国王!」



《国王がいたわ! モック、準備はいい? 街全体に聴こえるようにね!》



《こっちはいつでもOKだ!》



 モックの返事を確認し、ラナがモックと繋がっている念波の質を変えて謁見の間全体の声を拾えるようにした。


「ワルダーか。どうしたそんなに慌てて」


「今すぐに今回の魔天気を中止してください!」



 その頃、中央広場ではモックが拡声器になって謁見の間での会話を放送し始めた。


「なんだ? これ国王の声だよな?」


「今から魔天気やるんですって」


 広場だけでなく街中に響く国王と宰相の声。市民が立ち止まって聴いている。

 それを何も知らない国王たち。


「ワルダーよ。余は暑いのも寒いのも嫌なのじゃ。今から魔天気で王宮を春のように暖かくするぞ!」


「ですが国王、もう周辺の村々は既に枯渇状態、更に遠くの地域からエネルギーを吸収するとなると魔塔の出力が持ちません!」


 宰相を鬱陶うっとうしそうに見ながら国王が大きな一言を発した。



「だから王都オアシストから吸収すれば良いであろう!」



「おい……今……国王なんて言った?」


「王都からエネルギーを奪うって言ってなかったか?」


「嘘でしょ? それってオアシストが周りの汚い村みたいになるってこと?」



 市民が騒ぎ出したが国王の理不尽な主張は続く。



「王都は王宮のためにあるのだ! 何の問題も無いわ!」


「なりません! 王都がもし枯渇すれば税収が無くなり、市民から暴動も起こります。王宮が今以上に困窮する結末を迎えますよ!」


「構わぬ! 余は既に隣国のオットナーリ帝国と話をつけておる。フィールディア王国などどうでも良いわ!」


 そして国王が魔法士に命ずる。


「さぁ、今すぐ魔天気で王宮を豊かにするのじゃ!」


 魔塔にいる魔法士たちが詠唱を始める。


《おい、ラナ。本当にこのままでいいんだな?》


《いいわ。このまま魔天気を発動させて王都を壊すのよ》



 この時、モックとラナは動かなかった。そして魔天気が発動する。



 王都を覆う光が徐々にその範囲を狭めて、王宮のみを包む光のドームとなった。

 あの活気ある街がどんよりと沈んで暗くなり、寒い街へと姿を変えていく。



 建物や大地からすべてのエネルギーを吸収して王宮へ捧げる魔天気。

 王宮は見事に美しく輝き放ち始めたのだが……


「建物が崩壊したぞ! 本当に国王が魔天気を王都に向けて使いやがったぞ!」


 王都内に響き渡る悲鳴と怒号、崩壊する建物や死に絶えていく樹々。悪夢でも見ているかのような光景がモックの目の前に広がっていく。



『これが……魔天気なのか……』



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