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朗報 知り合いに異世界スローライフを目指す悪役令嬢(推し)がいます。  作者: 椿レイ
第一章

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3/23

2 始まりは突然に

 ではなぜこうなってしまったのか。

 夏休み中多くのクラスメイトが部活動に勤しんでいる中、彼女も自身の部活動を真剣にやろうと家と学校を往復していた。柚子もインターホンを目指す身として最短経路や道中にある隠れカフェやコンビニ、地元のスーパーの割引価格の時間帯を探っていたのである。腹が減っては帰宅ができぬをモットーに生きる彼女にとっては死活問題であったのだ。ちなみにこのことをあかりに伝えたところ

「じゃあ一生帰れないじゃん」

と言われた。心外である。

 実際のところは学校の図書館が涼しかったのと一人暮らしをしている身であるためできる限り光熱費を節約したかったというだけである。(彼女は基本的に深夜にしっかりと電気をつけてゲームをするタイプである。だが一日中電気をつけているとそのことが親にバレる可能性があったため昼間は節電していた。だが実際は彼女の両親が秘密で送り出したエージェントが毎晩電気がついているのを確認し報告しているため意味はない。)

 そんなこんなで休み中の1日の柚子のルーティンはこんな感じ


 7時起床

 8時までに洗顔、朝食等済ませる

 8時家出発

 学校8時15分着

 勉強

 昼休憩13時より2時間(コンビニ行くなど)

 勉強

 17時学校出発

 道中スーパー寄る日あり

 猫に会ったりなんやかんやで18時ごろ帰宅

 21時まで睡眠

 その後食事、入浴

 22時よりゲーム、2次創作漁り

 1時就寝


 女子高校生にしては健康的な方である。

 ちなみにこのルーティンが続いた日数は3日。絵に描いたような3日坊主だと思うのも無理はないがこれには大きな理由が存在している。

 簡単な話悪役令嬢アイリスこと菖蒲と柚子がであったのが夏休みが始まって4日目の朝だったのだ。


 この日、コンビニで餃子フェアが開催されておりお目当ての餃子ピザを買うためコンビニに立ち寄った彼女はあらゆる餃子(の形を模したスイーツ)の誘惑に抗えずコンビニで優柔不断な性格を遺憾なく発揮し、結果1時間立ち往生したのち餃子フェアのために作られたスイーツを全部買うという奇行にはしった。後日アイリスと出会った経緯を話すために30回ほどこの話を聞かされたあかり曰く、「柚子っちは餃子オタクの権化だからね。推し活満喫しててよかった」らしい。

 そうして学校へともっともらしく「いっけなーい!ちこくちこく!」と脳内シュミレーションをしながら急いでいたその時。

 どんっ!


「きゃあっ!」


「うわっ!」


 その流れのままきゅん……っ!ではなく。

 角を曲がった瞬間目の前で自身の真っ赤なゴスロリ風スカートを踏みつけつんのめるブロンド髪のクオリティがあまりにも高すぎるコスプレ少女を見かけたのである。

 だが急いでいた彼女はその光景を脳内からお得意の瞬間逆記憶によって消し去り歩き去る……


「くっ!目の前で身分の高いものが転んだというのに動じぬその騎士道精神だけは認めて差し上げるわ。ただ予測しない危機にも対応するのが騎士の勤めではなくて?」


 何言ってんだこいつ。と思ったものも束の間。気がつくと柚子は制服のスカートを引っ張られ地面に転ばされていた。


「おーほっほっほ!みんなで転べば怖くなどありませんわよ!」


「お前はそれでいいんかいっ!」


「あら、私の声が聞こえていまして?見どころがありましてよ!」


「多分それ関わり意図的に関わりたくないと思われてるって。まぁ私、急いでるから…じゃあね…?」


 なわけない。本当にそんなわけない。目の前にいる少女が乙女ゲームの主人公で私の推しなんてことあってていいはずない。ファンの間で行方不明扱いされていた少女が現代に来て…なんて過去にあらすじだけ見たのち後悔し、質問投稿サイトとありとあらゆるサイトをあさって4ヶ月と14日…そしてついに昨日見つけた2次創作みたいなことあってたまるかぁぁぁ!自分で体験できるなら4ヶ月と14日が無駄になってしまう…!きっと夢だ。これは夢。きっと餃子フェアが楽しみすぎたせいで餃子の神が明日全部買えとお告げになっているのだ…!


(ちなみに餃子フェアで餃子の皮が実際に使われていたのは1商品だけであり、人間界をもし餃子の神が見ていたならばそれ以外は許さないだろう。餃子の神は稀にいる浮気のライン厳しすぎるやつなのである。もっとも彼は現在小籠包の神と自信のプライドをかけてどちらの皮の方が美味しいか議論中であった。)


「あら、心のお声全部お漏れになっていましてよ?」


「うん…違う…違う…、ってことでうん!コスプレ素敵!さすが同じ推しを愛でるだけあるね!じゃあ私もう行く!」


「……こす……ぷれ……?お待ちなさい!!!」


「ふぎゃっ!」


 なんという悪役令嬢補正。本日人生最初で最後の人にスカートを掴まれて転ばされるという体験をしたと思ってたのに……最初で最後ではなくなってしまってではないか。


「ひ、人のスカート掴まない!!!」


「まぁ!やはりお兄様のおっしゃた通りですわね。人のスカートはハイヒールでふんっんー!」


「わかった。わかりましたから、話は聞くからそれ以上いうな!!!」


 なんて事教えてんだこの人の兄は。


「…で…えっと…あなた、名前は?」


「あら?私を知らなくて?ふふっ!特別の教えて差し上げてもよろしくてよ!私はかの4大公爵ルーブランシェ家の娘、アイリス=ルーブランシェでしてよ!」


「………ふぬぬぬぬ………っ!」


「……?どうかしたのかしら?」


「はぁぁぁ…っ!?私の4ヶ月と14日かえしなさいよぉぉっ!」


「…そんな反応されたのは初めてですわ。私に会えただけ光栄と思いなさい…?」


「そこは自信たっぷりにいうんだよっ!スチル神がかってたのに勿体無いじゃない!」


「……ちなみにここはどこですの?」


 この話を後日聞いたあかりが突っ込む事を放棄したのはいうまでもない。

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