いざ学校(4)
「あああああああっ!」
「今日はやっぱりため息が多いですわね?」
「誰の……」
以下略。そろそろこのくだりも飽きてきたところである。
目を開けるとそこには3段のアフターヌーンティー。今、心も説得にも折れた柚子は紅茶を飲んでいた。
午前中の授業は散々だった。科学に数学に古典だった。どれも生徒から嫌われる教科ランキング上位に位置する(柚子の主観である)教科なのだが、あやめは初めて習うそれらに興味津々だった。面白がった先生はあやめに質問を投げかけたのだった。悪役令嬢補正かなんなのかはわからないが、彼女は全て卒なくこなしてしまったのだ。夏休み明けとか言う一番授業がわかりづらくなる時期にこれだけの先生の質問に答えられたあやめはクラスの救世主だった。先生の質問が全てあやめに行くので自分達は当たらない。今クラスメイトは皆、質問吸い取りマシーンがいるおかげで過去一晴れやかな笑顔だった。自分のクラスの自主性が不安になる柚子である。
「あら、美味しい」
「ピッコロって品種。一番好きなんだ。あ、ノンカフェインだから授業寝れるよ」
柚子は先ほど一気飲みを試みて舌を火傷したため味はわからなかったがそれも含め風流なのだろう。
「あかり……君ってもしかして自主性ある……?」
「え?……まあそりゃ天下の長谷川あかり様だからとうぜ」
「ごめん、杞憂だった」
あやめを寝かせて質問をこっちに来る様にし、自身の成績をあげようと言う魂胆かと思ったが深読みしすぎた様だ。あかりがこんなことを考えつく様な頭脳を持っているわけがない。
「なんか失礼なこと考えてない?紅茶頭からかけるよ?」
「ん、あかりって素直だもんなぁって思ってただけ」
「でしょ〜!」
「……ユズリーナ私感動しましたわ!まさか授業という物がこんなに面白いなんて……!今までの常識や赤子でもわかる様なことをくどくどと聞かされていた物など授業の風上にも置けませんわ!知らないことを学ぶ……それがまさに授業の神秘!!」
「……楽しそうなら何より」
「ふふ……それに押すと自動でインク出てくるペン……ふふふ……」
「笑い声が悪役そのものだね」
そう、柚子の悩みは質問吸い取りマシーンの他にももう一つあった。それが「魔道具」である。あやめは道具という道具に興味津々だったのだ。
「ご覧なさってユズリーナ!これを押すとインクが自動で出てきましてよ!?」
「……ただのシャープペンだよ」
「押すと自動で出てくるってもう自動じゃないんじゃない?」
「確かに……」
「まぁっ!まあっ!魔法陣が組み込まれていないのに2つ以上の場所から同時に水が出てくる……こんな複雑なこと……し、しかも同時に出るのではなくどちらも捻ったタイミングで出る……!?嘘でしょう!?本当にこの世界は聖霊がいないのです!?」
「なんかさ、こうやってみると日本の技術力の高さがわかるよね」
「……うん」
「それに行き交う方々は皆黒髪黒目……っ!もう芸術品の域ですわっ!はああっ眼福……」
「あやめがこうなったのは君のせいだからね、あかり」
「なんで!?絶対柚子っちにも非があるって!なんでそんな娘に彼氏ができた時の父親の様な目でこっちを見るの!?」
そんなこんなであやめは一日中はしゃぎっぱなしだったのである。
「もう私、平穏なんて日常を送るのは諦めることにする」
「あら……おかわいそうに……」
「そういう慰めの言葉は柚子の耳元でそっと囁くといいよ。ま、私もとっくに諦めてたと思ってたけど……まだだったんだね、柚子。うん、懸命な判断だよ」
「あああああっ……!」
以下略。
「もう寝るっ!一回現実逃避っ!」
「あ、カフェイン入れといた方が良かったかな」
「やかましい」




