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10 新たなる波乱の予感(2)

「ユズリーナ、そのマイク越しのお方はどなたでして?」


 柚子が今後もあやめを欺くために足音の反省をしていた時、当の本人が声を上げた。そういえばまだあやめにはあかりの存在すら教えていなかったなと思い紹介する。


「はあ……紹介するね。あちらは私の友人の長谷川あかり。」


「こんにちはー、客人を文字通り玄関先で待たせるようなズボラの友人長谷川あかりです。話はきいてるよん、よろしくね。あやめちゃんだから…あーや嬢でいいかな?」


「それに関しては本当に申し訳ありません。」


 そういえば柚子とあやめが2人で住んでいることをとても羨ましがってた。嫉妬と怒りの気配を感じた柚子は慌てて玄関へと向かう。


「これスリッパね、いつものテーブル座ってて!お茶を出すので少々お待ちください」


「あら気がきく。」


 目が笑ってない。触らぬ神に祟りなしという言葉の意味を理解した気がする。今度コラボウエハースをお供えしておこう。


「それで……この子があーや嬢?すっごい、見た目まんま。完璧じゃん。」


「なんか最近性格が強烈になってきたような気がするけどね……。あれ、あやめ?おーい、アイリス、大丈夫?」


 隣にあった存在が急に静かになった気がして目を向けた。(柚子からしたらあやめは存在そのものが騒がしかったのだ。)あやめにしては珍しく俯いている。

 あれ、アイリスって人見知り設定あったっけ……?


「……しい……」


「え?」


「なんと美しい響きですの!私の魂は震えておりましてよ!あーや嬢……素敵な響きですわ!さすがはユズリーナのご友人、私の心をここまで動かすなんて認めざるを得ませんわよっ!」


 柚子は心配して損した気分になっていた。この自他共に認める完全無欠の悪役令嬢様が人見知り属性なんて持っているはずない。


「おお……、いい反応だね。こんなに喜んでくれるなんて嬉しいよ。でも大丈夫?初対面は緊張する体質じゃなかった?」


「ええ、確かに初対面の方の前ですと普段より話がうまくできませんわね。ですが今の私は無敵でしてよ?この世界に馴染めている以上何も怖いことはございませんわっ!」


 合っていない。何も合っていない。どうやらこの悪役令嬢初対面緊張属性も持っていたらしい。

 ……そういえばゲームの中のアイリスって友人少なかったな……人見知りの伏線だったか……。

 それはそうとこの世界に馴染んでなんていないだろう。っていうか世界に馴染んで人見知り克服ってなんなんだ。

 脳内で様々なツッコミを入れる柚子だったが口元だけ笑顔な自分の友人を目の前にしている以上、それを口にする勇気はなかった。


「そう、ならよかった。それで?外に出たいんだっけ」


「ええ、でもユズリーナ、私を連れて行ってくださらないのよ。そのおかげでいつも私は家で寂しくスマートフォンに向き合っておりますの……」


「待て、いつもうちの実家にいるじゃん!しかもどこで覚えたのそんな友人1人もいないみたいな雰囲気!


「……ええ、そうです……私には元の世界でも新たな世界でも友人なんていないのですわ…」


「ごめん、待ってそれはごめん」


 先ほど脳内で「そういえば友人いなかった」と自分で言ったにも関わらず地雷を踏んでしまったようである。


「柚子っち?」


「い、いや、えーっと、これは違くてですね……?」


「柚子?」


「だ、だって外に連れ出すと色々厄介ごとを持ってくるのは見えていてですね……?」


「ゆーず?」


「っく……!前会った時『心中お察しする』とか言って同情してくれてたじゃん!」


「大切なのは過去じゃなくて今なんだよ?」


「こ、この裏切りものっ!」


 にっこりと口だけで笑っている友人が怖い。柚子の中でお供物をアクスタに変更することが決まった。


「はあ……わかった、わかったよもう……、一緒に買い物行こう」


「まあ!よろしいのでして?」


「その代わり絶対に私から離れないこと。いいね?」


「もちろんでしてよ!あかり様、ありがとうございます!」


「いえいえー、こっちこそ柚子がお世話になってるしね」


「どっちかっていうと私がお世話して……いえ、なんでもありません」


 笑顔を保つことを諦め睨みを聞かせてくるあかり相手に反論はできなかった。


「よーし、じゃあ準備していっくぞー!みてなさい、宿題する時間削ってこっちの世界の観光名所探しまくった私の腕前を!」


「……よく今までそれで偉そうな態度取ってられたね?」


 形勢逆転である。

 この後あかりは宿題が終わらず柚子に泣きつくのだが見事なまでに柚子はそれを切り捨てる。しかし結局あかりは自力で柚子が3週間かけて終わらせた課題を28時間で終わらせ、一部の生徒の間で伝説となり夏休みは最後3日で課題を終わらせるという風潮が生まれるのだがそれもまた別の話。

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