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7話 テスト

 宮殿内はこれまた煌びやかで、だだっ広い空間だった。

 シャンデリアも、壁に飾られた大きな絵画も、きめ細やかなで芸術性に富んでいる。

 そういうことに明るくないバグにだって理解できる。

『ドラゴンランク』のメンバーに、こういう装飾を好む者がいるのか、来訪者に財力を見せつけるためか。

 コツコツとメンバーの3人と、バグの足音が響き渡る。

 すると、廊下の途中で3人が足を止めた。

 ピタッと動きを止め、尾てい骨当たりで手を組む。

 それは、これ以上は進んではいけないという境界線が引かれているためだろう。

 その動きは冒険者ではなく、もはや軍人だ。

 そして、ここからは1人で進め、と促されているようだ。

 まあ、止まるわけにもいかないので、とりあえず真っ直ぐ廊下を進むことにする。

 気を付けることは、実力を侮られないような態度を示すこと。

 強そうにする必要はない。だが、無駄に弱そうに見られることはあってはならない。

 キョロキョロしてはならない。

 ただ前を見据えて、一定のリズムで歩き、『ドラゴンランク』のメンバーに迎えられる者にふさわしい姿を示す。

 歩き続けて、そうして尋ねるべきであろう部屋に到着する。

 両開きの扉の前には、二人の警備がいる。

 どちらも大男で、スーツに浮かび上がる筋肉から、真っ向からの近接戦闘では勝てないことは明白だ。

 銅像かのように静止していた首が、こちらを向く。

 鋭い視線だ。

 短い時間凝視された後、2人が取っ手に触れて、重々しい扉が開く。

 扉の先にいたのは、


「いらっしゃい。バグ・ノートラス」

「ああ。お招きありがとう」


 入ってきた扉が閉じる。


「さっきの2人は視認した対象が悪意を持っていないか把握できるスキルを持っているわ。それで、貴方に悪意がないことが証明された。良かったわね」

「もし悪意があると判断されていたら、俺はどうなってたんだ?」


 その問いにレイネは、自らの首を切るジェスチャーを示す。

 笑顔でもなく、怒りもなく、ほとんど感情はない。

 故に怖い。

 綺麗な顔で、所作の1つ1つが整っているためか余計にそう感じる。

 が、恐怖を感じたことは表情には出さないよう徹する。


「それで、俺はどうして呼ばれたんだ?」

「単刀直入に言うと、貴方に協力してほしいことがあるの」

「協力?」

「昨日のテアマト戦の最中。私が言っていたこと覚えている?」


 バグは思い出す。


「誰かがテアマトをスキルによって急成長したとか何とか」

「ええ。私たちはその誰かの罠にかかってしまった。その結果、犠牲を出すことになってしまった。ひとまずテアマトを倒したことで、仇の1つは討った。でも、まだ残っている」


 つまり、彼女たち『ドラゴンランク』は、その急成長させた何者かを探しているのか。

 殺すために。


「貴方にそれを手伝ってほしいの」

「何で俺に頼むんだ? そんな大事なことなら俺じゃなくてもっと――」

「――あら、私たちのパーティーに入りたかったんじゃないの?」


 すぐに返答が出来なかった。

 脳がフル回転する。

 肯定するか、否定するか、濁すか。

 いや、しかし、こうもハッキリ言われてなお否定か濁すかすると嘘を吐く人間と思われる。

 生涯で嘘をつかない人間はいないが、この局面では命取りになる。

 なので、


「まあ、そうだけど……」

「でも、ごめんなさい。私たちも貴方を簡単に入れるわけにはいかないの。貴方のこと調べさせてもらったわ」


 レイネは続ける。


「スキルは『虫操作』。これによって、幼少の頃から周りから忌避されるも、友人が発足したパーティーの金色の剣に入る。しかし、その友人との関係が悪化したことでつい先日脱退。それ以降は他のパーティーに入ろうとするが苦戦。大まかなところはこんな感じよね?」

「それ、誰から聞いたんだ?」

「貴方の友人、アレク・カレストロから聞いたわ」

「なるほど。つまりは俺の『虫操作』が駄目ってことか」


 またか。

 バグは落胆する。

 少し失望もあった。

 Aランクの高みに立つ冒険者たちならスキル問わず認めてくれた、と期待したためだった。

 しかし、彼らも結局は他の人たちと変わらないのだ。

 自然と顔が下を向く。


「いいえ」


 返って来た否定に、困惑でバグは顔を上げる。


「凄まじく戦闘を有利に運ぶとか、交渉ごとに使えるスキル持ちなら加えるかもしれないけど。少なくともスキルで加えない選択は取らない。スキルが加入によって不利に働くことはない」

「じゃあそれ以外か」

「ええ。当然のことだけど、私たちが知っている貴方の情報はさっき言ったことくらい。だから、これはテスト。テアマトを成長させたスキル持ちを私と一緒に捕まえる。もしくは殺してもらう。見事、達成出来たら『ドラゴンランク』に入れてあげる。嫌なら帰ってくれて構わないわ」


 確かに『ドラゴンランク』ほどの名門が、たった一度の戦闘の結果で入れてくれるわけもないか。

 彼らを甘く見ていた。


「ごめんなさい。私は貴方をすぐに入れようとしたんだけど、リーダーがね。中々強情な人なの」

「いや、受けるよ。こんなチャンス滅多にないんだ」


 バグの返答に、レイネは唇の端を上げた。

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