40話 違和感
明日の8時20分に投稿します。
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「や、山中さん……何でここに」
にっこりとほほ笑む山中にユウトは尋ねる。
もしかして、彼女も異世界召喚でもされたのだろうか。
と、言うかそうでないと説明が付かない。
しかし、山中は何も言わない。
微笑んだまま、口を押えて笑う。
その仕草は相変わらず可愛らしくて、クラスは同じながらほとんど話したことがないので、彼女の行動の理由がいまいち掴めない。
心底驚いた自分の反応がそんなに面白いのか。
それとも、先ほどの魔物から後退りする姿が面白かったのか。
が、かなりの距離があるとはいえ、魔物は廊下の先にいるので「とりあえずここから離れよう」と山中に移動するよう促す。
ユウトが歩き出すと山中も付いてきて、しばらく同じような廊下が続いたが、1つのドアがあった。
建物の内装と同じく、ドアも白くて、まるで保護色のようだ。
ドアを3回ほど叩いて、反応を窺ったが返事は返ってこない。
「ここに隠れよう」
ユウトはゆっくりとドアノブを回して、開ける。
中は、不自然なほどにだだっ広い空間だった。
学校の体育館ほどの広さで、何もない。
ユウトは確信する。
ここは恐らく、人が建築したものではない。
何らかの不可思議な力が働いて形成された空間だ。
とは言え、内部に魔物は確認できないので、少なくとも廊下にいるよりは安心だろう。
白く広い空間に入る。
「山中さんも異世界召喚されたの?」
と、ユウトが問いかけるも山中はやはりクスクスと笑うだけだ。
先ほどから同じような反応ばかりで現状の把握がしたいユウトにとって、それを可愛らしく感じるのも限界だった。
段々と、苛立ちが募る。
「何とか言ってよ」
少し怒りが込められた声音に、山中の微笑みが消えた。
それどころか、ニタァと口の端が吊り上がって、今までに見たことのないような表情をする。
「おはよう、今日の授業って何だっけ?」
「その卵焼き、美味しそうだね」
「テスト、何点だった?」
「……山中さん?」
突然、山中が今の状況とは全く関係のないことを話し出す。
「テスト何点だった? テスト何点だった?」
まるで壊れたラジオのように繰り返す。
ここで、ユウトは確信した。
これは、ユウトの知る山中ではない。
すぐさま逃げるようにドアから廊下に飛び出す。
転げるようにして廊下に出たユウトの頭上を、槍のような腕がとんでもない速度で通過して、壁に突き刺さった。
「うわっ」
つい声を上げてしまう。
ドアは瞬時に破壊されて、そこから山中の顔がこちらを覗くが、首だけが異様に伸びている。
廊下に全身が現れて、人型とは程遠い姿を目の当たりにする。
顔だけは山中だが、それも徐々に形が変化し始めている。
上半身は、縦開きの大口が大半を占め、牙や先端が無数に裂けた舌がこちらを向いている。
下半身は、牛のようにでっぷりとした動物の体で、6つの脚がガッシリと床を掴んでいる。
先ほどの攻撃、偶然当たらなかったが、躱せるとは思えない。
かと言って、全力で走って逃げたとしても脚力で勝てる気がしない。
震えるライフルの銃口を魔物に向ける。
戦うしかない。
蜘蛛のように、コウモリのように黒く大きな瞳を睨み返して、ユウトは覚悟を決めた。
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