39話 遭遇
今日の12時20分にもう1話投稿します。
ぼやける意識が徐々に覚醒し、サトウ・ユウトは目を開く。
どうやら自分は何らかの建物の床に倒れていたようで、なぜこんなところで、という疑問の答えを記憶から辿っていく。
確か、ダンジョン探索をしている途中で視界が急に真っ暗になって――そこからの記憶がない。
だとすると、バグやレイネ、護衛の人たちが気を失った自分を連れ出して、この建物に担ぎ込んだのだろうか。
いや、そうならベッドで眠っているはずだろうし、廊下に倒れていたのはおかしい。
彼らが自分を雑に捨てるかのように放置するとは思えない。
起き上がって、周囲を確認する。
漂白されたような真っ白な内装で、かなり広く、廊下の終着点が遠い。
本当に何もかもが白い。
カーペットも、花瓶もそこに差された花も、絵画も、全てが白い。
ここは一体どこなんだろうか。
なぜダンジョン探索をしていてこんな真っ白な建物に自分はいるんだろうか。
護身用として【兵器創造】によりライフルを創り出す。
訓練していないので、使いこなせるわけではないが、ないよりは良い。
窓に近づいて、外の景色の異常性にユウトは言葉が出なかった。
青白い空間が周辺一帯に広がっていて、奥の方に細長い塔のようなものが見えるが、少なくともユウトがいる建物の近くには何もない。
本格的に、自分の置かれている状況がかなり深刻なことを自覚する。
低階層なら手っ取り早く飛び降りられないか、とも考えていたものの、これは当然無理だ。
ライフルを握り締めて、のろのろとした足取りで出口を探す。
そして、数歩歩いたところでユウトの動きがピタッと止まる。
前方、50メートル先。
何かいる。
人間ではない。
野生動物でもない。
半透明な粘液で覆われて、つるりとした体が透けて見えている。
2本の長い腕の先端には、触覚のように関節がなさそうな長い指が10本以上あって、それが意思を持つかのように動いている。
間違いなく、魔物だ。
フラフラとした足取りで、目的を持って歩いているわけではないらしい。
意思疎通が出来るとは思えないし、気づかれれば攻撃される可能性が高い。
見つめ続けるのは怖いものの、目を離す方が怖いので、魔物を視界に入れながら後退る。
大丈夫。
大丈夫だ。
もし気づかれても、ライフルで撃ち殺せばいい。
硬い外殻に覆われているわけではないし、勝てる。
が、あえて戦うのは馬鹿がすることだ。
まして戦闘訓練など一度もしていないのだから、無謀なことは避けよう。
そうして、気づかれないようゆっくりと後退っていると――
「――おーい」
声がした。
大きくはない。
が、離れたとはいえ前方には魔物がいるので黙ってほしいが、こんな場所で人間がいるのは安心感がある。
「おーい」
あれ? とユウトは疑問を抱き、ブワッと全身の産毛が逆立つ感覚に襲われる。
「おーい」
聞き覚えがあるのだ。
しかし、この世界に来てから耳にしたものではなく、元居た世界で聞いていた声だ。
声の主に銃口を向けるわけにはいかないので、下げた状態で振り返る。
そこに立っていたのは、クラスメイトの少女――山中さんだった。
読んでいただきありがとうございました。




