38話 現状把握と悔しさ
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地震が止み、街に降り立って、状況の一端は理解できた。
やはり、全ての建物が空に高く高く伸びている。
少なくとも、バグとレイネが見上げて分かるのは建物の基礎部分だけであり、かなりの高さにまで到達しているのかが窺える。
人々もこの異常事態に呆然としていて、既にパニックを起こしている人もいる。
「ちょっと」
と、レイネが座り込んでいた男に声をかける。
「な、何だ」
「貴方、この事態を最初から見ていました? もし見ていたとしたら何があったか聞きたいのですけど」
その問いに、男は額に手を当てて自分が目撃したものが信じられない様子で語り出す。
「俺にも分からない……急に地面が揺れて、その後、街にある全ての建物が急に……」
「伸びたというわけですね」
レイネがそう結論付けて、男はうなだれるように頷く。
「どう思う? バグ君」
尋ねられて、バグは「まあ、スキルだろうな」と答える。
「そうね。問題は誰がこれをやったか」
「他国の人間とか。サトウ・ユウトの誘拐といいタイミングが良すぎる。俺たちアルベント国が彼を召喚したように、他国も強力な異世界人を呼び出してこれを起こした、とか」
「だとしたら、先制攻撃を受けたってわけね」
「ただの仮説だけどな。とにかくレイネは城にこれを……いや、城もこの様子じゃ空の上か」
「分かってる。周囲の警戒でしょ。もしこれが他国からの攻撃の一波だとすると、二波が来る。地上に残った冒険者とか兵に伝えて来る。バグ君も一緒に来る?」
「2人で同じ方向に行くよりも、一度分かれて、お互い別方向で伝達した方が良い。俺はダンジョン捜索の応援を呼びかける。後で合流しよう」
「ええ。じゃあ、後で。集合場所はここね」
と、レイネは駆けて行った。
◇
1人になったバグは、伝達する前に近くにある建物に触れてみる。
触った限り普通だ。
そうなると、これを引き起こしたのがスキルだとしてその能力は、建物を高くする、という至極単純なものだろう。
しかし単純ではあるが、恐らくはその効果範囲は街全体に及んでいるし、空高くまで至っていることから非常に強力なのは間違いない。
そして、これらの建物内は人がいるだろうが、救出するのは現実的ではない。
スキルは基本的に発動者の意識が断たれれば効果もそこで切れる。
なので、やるべきことはスキル発動者を突き止めて倒すこと。
また、サトウ・ユウトの奪還も忘れてはならない。
これが他国からの攻撃だとして、彼までも他国の手に落ちるとより窮地に追い込まれてしまう。
時間にして20秒程度の短い時間ではあるが、現状把握、今後の方針も決まり、バグも動ける人々に伝達しようとここを離れようとして、遠くの方からこちらに向かって走ってくる人物が視界に映った。
見覚えがある。
サトウ・ユウトをダンジョンに案内する任務をリーダーに指示されて、退室した時に出会った嫌味な男だ。
レイネを慕っているからか、新入りなのに城直々の任務に抜擢されたからか。
バグとしては、あまり関わりたくない男だ。
確か名前は、ウラスキだったはずだ。
「おい、お前。ここで何をしている」
息を切らしながらも、相変わらず上から目線で聞いてくる。
とは言え、ドラゴンランクの在籍期間としては彼が先輩なのだから、それもおかしい話ではないのかもしれない。
「ついさっき、副リーダーと帰還して、お互いに兵士や冒険者に周囲の警戒などに当たるよう伝達しようと思いまして」
「そうか。新参者にしては素早い判断だ。が、私からもう済ませている。お前が動く必要はない」
「では、副リーダーをすぐに引き戻してきます」
と、とりあえずの口実を作って離れようとすると、
「その必要はない。兵士か冒険者に接触すれば既に命令されていると分かって、戻ってくるだろう。それよりもサトウ・ユウトはどうした。城からの護衛もいたはずだ」
「それが……途中で何者かに攫われてしまいました。護衛もダンジョンの崩落に巻き込まれた可能性が高いと思います」
報告すると、ウラスキが胸倉を掴んできた。
が、正当な怒りだろう。
「お前、奴がこの国にとってどれほどの重要人物なのか分かっているのか!? なぜ離れた! ダンジョンの外で地震が治まるまで待って、また入って捜索するべきだろうが! だから新参者が任務に就くのは反対だったんだ! こういう馬鹿げたことが起きる」
「すみません。ダンジョンが崩落して2人での捜索は困難だと判断し、応援を呼ぼうと街に行こうとしたらこんなことになっていたので」
「お前のスキルは【虫操作】なんだろ? 洞窟内の虫共に捜索させればよかったじゃないか」
「無理なんです。洞窟の虫たちは目が退化していることもあって、そういったことには不向きなんです」
バグの弁解に、ウラスキは怒りが収まらないようで「つくづく……使えない!」と吐き捨てた。
「もういい! 今からまたダンジョンに戻るんだろうが、私も行く。お前では役に立たん」
ウラスキの言葉に腹が立つバグであったが、実際、彼の言はその通りである。
唇をかみしめて「すみません」という他なかった。
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