37話 驚愕
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ダンジョン内が突如として揺れ出し、流石の異常性に先を走っていたレイネがまず足を止め、バグも立ち止まる。
姿勢が保てないほどの揺れの大きさに、ついに岩壁にも亀裂が走り、天井からも砂埃が落ちる。
崩落が時間の問題なのは明白だが、奥の方まで誘拐犯を追いかけたせいで、脱出できるかは怪しい。
加えて、この揺れのせいで通常通り走れるとも思えない。
どうすべきか、とバグが慌てつつも打開策を考えていると、一方でレイネが上を見ていた。
そして、
「使うから」
と、小さく囁いた。
「えっ」
彼女の言葉が何を意味しているのか分からなかった。
が、そんなことはお構いなしにレイネがバグの手を掴んで自分の体に引き寄せる。
この緊急事態に一体何をしているんだ、と困惑してしまう。
そして、口を開けたかと思えば次の瞬間――
――特大の光線が天井部に放たれた。
カッと余りにも眩しいそれは、即座に天井の構成物質を蒸発させ、すぐに空が見えた。
「飛ぶよ!」
そう彼女が言い、恐らく風属性系の魔術だろうか、2人の体は勢いよく上昇した。
光線によって空いた穴を飛び抜けて、地上部に出たところで、地面に着地する。
しかし、未だに揺れは大きくて、ここも安全ではない可能性が高い。
そう思っていた矢先、再び地面が大きく揺れ出して、ついに地面が裂け始めた。
つまり、ダンジョンの崩落が始まったのだ。
すぐにレイネが飛行魔術を発動して、2人は浮かび上がる。
「とりあえず一度街に戻って応援を呼ぼう。誘拐犯とサトウ・ユウトが生きていたとしても、これじゃダンジョンの外には出られないだろうし、俺たち2人で捜索は無理だ」
バグの提案にレイネは、
「……そうね」
飛行の魔術で空を駆ける。
正確にはカベル追跡の時と同様に、レイネが発動した魔術の恩恵をバグはただ受けているだけだが。
何にせよ、空を飛ぶ感覚はどこか心地よさがあって、同時に地に足が付いていないことへの恐怖もある。
しかし、そんな感覚に浸る間もなく、バグは驚愕に支配された。
目的地である街の方が何やらおかしいのである。
塔と思わしき建物があって、それが天高くそびえ立っているのだ。
しかも1つや2つではなく、多少の違いはありながらも、ほとんどの建物が余りにも高く、もはや山岳のように連なっている。
「何、あれ……」
レイネの声音にも困惑が表れている。
「分からないけど、さっきの地震と関連性があるのは間違いないと思う」
◇
「何事だ!」
ノールは声を荒げる。
城の揺れる床に立っていられず、窓の縁に手を置いて何とかバランスをとる。
急いで駆けつけてきた部下も事態が把握できていないのは顔を見ればすぐに分かる。
「王はどうした」
「兵士に護衛させております」
それを聞いてひとまずは安心したのは束の間、
「なっ――」
ノールの体が急激に重くなる。
全身に超重量のおもりがぶら下げられたかのように、窓の縁に掛けていた手が滑り落ち、床に崩れたまま動けなくなってしまう。
次いで、鼓膜が締め付けられるような痛みに襲われる。
部下も床に倒れた姿勢のままになっており、ノールにだけ起こった異常ではないようだ。
と、するなら2人に何らかの魔術が掛けられたか、あるいはこの建物自体に何かが起こっているか。
吐き気も込み上げてきて、内臓にも鈍痛が響く。
そうした痛みに耐え、ようやく落ち着いたようで、やっと立ち上がれた。
フラフラとした足取りで、事態の把握に努める。
見た限り、城内部に変化はない。
ならば、変化があったのは外か、と窓を開けて、状況を確認する。
「何だ、これは……どうなっているんだ……」
一変した光景に、ノールは目を疑った。
まず地面がない。
広がるのは水色の空間に浮かぶ、というか伸びる建物。
それは教会であったり、通常の家であったり、とにかく建物の下部分が遥か下まで続いているのだ。
「とりあえず緊急会議だ。兵士と魔術師を呼べ」
「承知しました」
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