33話 いざダンジョンへ
明日の8:20に続きを投稿します。
レビュー、評価、ブックマークなどしていただけると、ありがたいです。
「本当に参加するのかい?」
ノールが不安げに尋ねる。
「はい。この世界のことをもっと見てみたいんです。ダンジョンなんて正に異世界の定番じゃないですか。行って自分の目で確かめたいんです」
「しかし、例え簡単なダンジョンであっても危険だ。今回は君の創造した兵器の性能チェックが目的だ。君がいなくても出来ることだし、何かあってからでは遅いんだよ?」
「大丈夫ですって。僕もそこら辺は弁えています。決してダンジョン内で単独行動は勿論、危険なことはしませんよ」
「そうではなく、ダンジョンに行くことがまず問題なんだが……どうやら私がいくら説得しても行く気らしいな」
「すみません」
「謝るのなら参加しないでほしいのだが……」
と、そこまで言ってノールはため息を吐き、「では、これを」とポケットから石を取り出した。
「これは何ですか?」
「私のスキルで魔術を1つ込めている。対象に投げ付ければ爆発する。ここぞという時に使うんだ。ただ威力も範囲もかなりの規模だから、巻き込まれないように注意して」
「ありがとうございます」
「人の好奇心は止められないな、本当に」
などと、会話したのが2日前の昼頃。
そして、ダンジョンの入口の前に立ち、ユウトは自分の行動を少し後悔していた。
山を登り、奥の方に進んだ場所にあるダンジョンらしく、その入り口は非常に大きい。
まるで巨大なモンスターが口を開けて、得物が来るのをじっと待っているかのようだ。
しかし、大丈夫だ。
ここに1人で潜入するわけではない。
振り返ると、先日城下町を案内してくれたレイネに、バグ。
それに加えて、魔術師が1人、兵士が2人付いてきてくれている。
兵士2人に関しては、先日ユウトが創造したAKライフルを所持している。
「大丈夫ですか?」
と、戦闘用の装備に身を包んだレイネが聞いてくる。
案内の時は普通の格好だったが、今回のような装いもまた非常に魅力的なものだった。
容姿が整っている彼女だからこそ、着飾らなくても、戦いのための格好であっても似合うのだろう。
「いや、もう全然。むしろワクワクしてるくらいですよ!」
などと、つい強がりを言ってしまう。
すると、彼女は微笑み、
「もし自分で無理、と思ったらすぐに言ってください。一度引き返しますので」
「あ、ありがとうございます……」
反応からして見破られたのだろうか。
いや、分からなかったはずだ。
初めてのダンジョンであっても、彼女に格好悪いところを見せるわけにはいかない。
ただでさえ、今回の自分は保護対象としてここにいる。
守られる立場の人間なのだ。
言ってしまえば、子供と同じだ。
つまり、周りは大人。
魔術師と、兵士は自分よりも年上なのでまだ良いが、バグとレイネに関しては同い年か、年下だろう。
だから余計、恥ずかしくもある。
そう思っていると、レイネが「行きましょうか」と全員に指示を出す。
「そうですね」
「はい」
など、皆が反応し、レイネとバグ、魔術師が魔術によって光球を出す。
今回のダンジョン潜入でリーダーは彼女なのだ。
彼女の指示で全てが動く。
先頭をバグとレイネが並んで進み、その後ろをユウトと魔術師が、最後尾を2人の兵士が歩き、ダンジョンに入っていく。
光球がふよふよと浮遊しながら、付いてくる様は少し可愛らしい。
が、そんなもので恐怖心は薄れない。
横の魔術師の表情をチラリと見てみても、そこに恐怖や不安などなく、前と後ろは分からないが、恐らくこの場で怯えているのはユウトだけのようだ。
払拭するため、ノールから渡された石をズボンのポケット越しに撫でる。
いざとなれば、これを投げれば大丈夫。
そう脳内で緊急事態をシミュレーションする。
ユウトの足取りが遅いせいで、ややゆっくりとしたスピードで一同はダンジョンに入っていった。
読んでいただきありがとうございました。




