31話 企み
「こんなものが君の世界にはあったのか?」
内心の驚愕を押さえられず、声音が少し震えてしまう。
あんなもの、浴びればひとたまりもないだろう。
「そうですね。何か物凄く使われていた銃らしいですよ。ノールさんも撃ってみます?」
と、渡されるが、
「止めておこう。多分、私が撃ったら君のように制御しきれないだろう」
手触りを確認するだけに留めておく。
「後でこれも20丁ほど創ってくれないかい?」
「ええ、構いませんよ」
「ありがとう。これで最後だが、君の『兵器創造』では先ほどの鉄砲――」
「あ、あれはグロックって言うらしいですよ。教えるのが遅れてすみません」
「ふむ。そのグロックと、こちらのAKはどちらも鉄砲に分類されると思う。それ以外の兵器は何かあるかい? 剣の類以外で」
「うーん、どうなんでしょう……」
と、ユウト下を向き、考え出した。
恐らくは、これまでに見たことのある兵器に類するかもしれないものを思い出しているのだろう。
関係はない話だが、つまりはこれ以外にも兵器の可能性がある代物が沢山あるのだろう。
そう思うと、少し怖くなる。
「――これなんてどうでしょう」
そう時間は経たずユウトが創造したのは、黒色のカニのような、しかし四つ足で、その足の上部全てに二本の刃のような細い板が付いている。
不思議な物体だ。
持ってみると、意外に軽い。
どうやら鉄製ではないらしい。
「これは?」
「ドローンって言って遠くを偵察したり、武器を持たせて攻撃で来たりするんです。まあ、今創ったのはただ飛ばすだけのやつですけど」
「なるほど。これはどのように扱うんだい?」
「コントローラーのスティックで動かすんですよ、たしか」
と、ユウトは四角い物体に付いた突起を指で動かした。
その瞬間、ドローンが勢いよく上昇した。
「おー」と部下たちが空を見上げて、声を漏らす。
ドローンは上に、下に、横に高速で移動する。
その速さは鳥を超えているだろう。
目で追うのがやっとだ。
「ユウト君はこれを操ったことはある?」
「初めてです。でもやっぱり難しいですね。動かしたい方向に動き過ぎるし」
「なるほど」
初めて操作する者でもある程度動かせるなら、先ほどの鉄砲に比べてまだ扱いやすいということだ。
また、彼は武器を持たせて攻撃する、と話していた。
本来はこれに鉄砲などを備えさせるのだろうか。
ここである案が思いつく。
それはノール自身のスキルを使うことである。
ノールのスキルは魔力を物体に込めるだけではない。
込める物体1つにつき、1つだけ魔術を意図した時に発動できるようにするのだ。
長年の訓練によって得た技術だ。
つまり、例えばドローンに爆発系の魔術を込めた石を付けて、それを操作して敵もろとも爆破させるのだ。
そうでなくとも、武器の類を携えたドローンをユウトが創造すれば強力な戦力となる。
「よし、ユウト君。これも50個ほど創造できるかい?」
「問題ありません!」
先ほどからやけに元気だ。
それほど褒められたいらしい。
「じゃあお願いしよう。ユウト君。君を召喚して本当に良かった。君のお陰で我が国の技術力は100年、いや200年は成長するだろう。君は我々の救世主だ」
と、握手を求める。
ユウトは満面の笑みを浮かべて、握り返してきた。
「僕、ノールさん達の役に立てるように頑張ります」
「ああ。我々も君を全力で支援するし、出来ることがあれば何でも協力しよう」
ユウトが素直に喜んでいるであろう裏で、ノールは考える。
これは手放してはならない。
少なくとも、ユウトが創造する兵器を大量に入手するまでは何としても。
グロックやらAKやら、技術によって模倣できるのかもしれないが時間を要するのは確実だ。
幸い、ユウトは兵器を創造してしまえばそれは消せないし、干渉も出来ず、彼なしでも使い方さえ知ればノールや一般兵でも扱える。
創らせるのが一番効率的だ。
ノールはユウトの手を強く握った。
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