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3話 ソロクエスト前の朝食 そして出会い

 宿屋の柔らかなベッドで目を覚ます。

 最初に聞こえたのは雨音だった。

 初のソロクエスト日が生憎の雨なのは残念だが、まぁ気にするほどのことではない。

 とりあえず腹ごしらえをしようと部屋を出て、一階の食堂に向かう。

 朝方、これから仕事に向かうのだろう沢山の人が食事を取っている。

 バグも料理を受け取ると、隅の空いている席に座る。

 料理はパンとベーコンエッグ、スープ、サラダ。

 オーソドックスなものの、高めの宿屋とあって味は良い。

 黙々と食べ進めていると、


「前、座っていいかしら」


 声をかけられた。

 顔を上げると、バグと同じくらいか少し上か。

 少女が料理の乗ったプレートを持って、立っていた。

 反応に数秒遅れるほど、可憐な少女だった。

 つり気味で少々気が強そうな瞳、スッとした鼻、小さく柔らかな唇。

 サラサラとした髪は、背の辺りまで伸びている。


「あ、どうぞ」


 少女は堂々と座る。

 ふと周りを見てみると、どうやらかなりの視線を集めているようだった。

 皆、気づかれないよう横目にこちらを観察している。

 だが、見られている方は案外分かるもので、


「皆見てるけど、もしかして有名人とか?」


 などと尋ねてみる。


「ええ、そうね」


 人に対して有名人か、と尋ねたことはないが、こういうのは普通もっと違う回答が返ってくるのではないのか。


「パーティ『ドラゴンランク』の副リーダーをやっているわ」

「『ドラゴンランク』ってあの竜殺しの!?」


 バグは驚く。


「知ってるの?」

「この国で初めて竜殺しを果たしたパーティ。知らないわけがない。なるほど、それでこの注目度か」


 まあ、それだけが理由ではないのだろうが。

 しかし、Aランクパーティでも最高位のところの副リーダーと食事を取ることになるとは思わなかった。

 バグも元Bランクパーティの一員。

 この国のパーティ事情には詳しい。

 知識としてあるのは、AランクとBランクは1つしか変わらないが、そこには天と地の差があるということ。

 バグが所属していた『金色の剣』も新興勢力として注目を集めていたものの、やはりAは格が違うのだ。

 そのAの中でも彼女が所属するパーティは最古参かつ御三家の一角。

 全冒険者、全パーティをまとめる組織のギルド会館でも、Aランク相手には立場が逆転しているとも聞く。

 それほどに強大なパーティなのだ。


「で、そんな凄いパーティの副リーダーがどうしてこの宿屋を?」

「最高級ってね、ずっと使ってると飽きるのよ。たまにはこういう庶民的な場所も使わないと」

「なるほど」


 と、何となく答えるもよく分からない。

 最高級に飽きるという感覚が分からない。

 分かるほど贅沢をしたことがないのだから当然だ。

 これがAとBの違いか。

 今日はラッキーな日かもしれない。

 こうした形で最高レベルの生活を少しでも知れたのだから。


「貴方、今日はクエストに行くの? それとも部屋で過ごす感じ?」

「クエスト。一人だけど」

「内容は?」

「薬草採取」

「だったらシダカ平原ね。私たちと同じ」

「そうなんだ。ちなみにそっちのクエストは?」

「テアマトの幼体退治。シダカ平原の洞穴で人が襲われたらしいの。成体になられたら厄介だから今のうちにってこと。貴方も一応気をつけて」

「そうするよ……」


 やっぱり今日はアンラッキーなのかもしれない。


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