29話 スキルの弱点
今回は短めです。
12時20分に続きをもう一話投稿します。
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翌日、城の訓練場でユウトは魔術の発動を試みる。
それを、ノール始め数人の魔術師が見つめるが、一向に成果は出ない。
ここに来る前に魔力量を測定してもらって、通常よりもやや多いとのことで張り切っていたものの、このざまだ。
「ただ力を込めるのではなく、魔力の流れを感じ取るんだ」
ノールからアドバイスが投げかけられる。
しかし、流れと言われても全く分からない。
この世界の住人のように幼少期から魔術について学んでいると把握できるものなのだろうか。
特定の言語を外国人が使うのは困難でも、現地の人間は子供含め当然のように扱えるようなものだろうか。
などと、酸素が欠乏しそうな頭で考える。
それが30分は続いただろうか、ユウトは地面に倒れ込むように尻餅をついた。
火も出なければ、水も、雷も出ない。
ただただ陽に当たり続けたことで、汗が噴き出す。
座り込んだユウトに、ノールが言う。
「そう簡単に出来るものではないよ。気長にやっていこう」
「……はい」
「で、落ち込んでいるところ悪いが、ひとまず君には魔術ではなくスキルの特訓に注力してもらいたい」
「『兵器創造』ですか?」
「ああ、まずは昨日のように鉄砲を創造してくれ」
ユウトは指示通り、昨日と同じ銃を創造する。
名称などはその辺に明るくないので分からないが、様々な媒体で見たものだ。
「しましたけど」
「それで、あそこの的を撃ってみてくれ」
ノールの指差す先には、恐らくは魔術を当てるための甲冑があって、なけなしの知識を思い出しながら照準を合わせる。
片手ではなく、両手で握り、腕は真っ直ぐにする、だったと思う。
引き金を引く。
バンッと鼓膜を震わせる大きな発砲音と共に弾丸が飛ぶ。
しかし、甲冑には当たらなかった。
「続けて」
ノールが決して語気は強くないものの、やや冷たく指示してくる。
もう一発。
また外す。
これは当てるまで続けろと言う事だろうか。
まるでテストを受けているかのような心持ちで、マガジンに装填された弾丸を全て消費する。
甲冑には一発も当たらなかった。
耳は痛いし、腕は痺れるし、肩もズキズキと軋む。
次の指示、あるいはアドバイスを求めてノールの方をチラリと見る。
ノールがこちらに向ける顔には覚えがあった。
優しい教師が出来の悪い生徒に向ける、哀れむような、困ったような、そんな顔だ。
怒られるよりも辛い。
落ち込むユウトにノールは無自覚ではあるのだろうが、心を抉るように淡々と指摘した。
「やはり創造は出来ても、扱えるかどうかはまた別なのか。あと何発残ってる?」
「全部使い切りました」
「では、同じものをもう一度造ってくれ」
「……はい」
ユウトが出来るのは、ノールの指示通りに銃を創造することだけだった。
読んでいただきありがとうございました。
 




