第5話
「え?まさか信じたの?」
ケイは失笑しながら言った。
「はぁ!?からかったんですか!?」
「いやぁ~ウケるわ~。困惑した顔しちゃって。ぷぷっ。」
「馬鹿にしないでください!」
「いやしかし、真面目だねぇ~。悪い大人に騙されちまうぞぉ~?」
「そんなことないです!」
「はぁ~面白れ。てなわけで俺は寝るわ~。酒もいい感じに回ってきたしな。」
と言ってケイはむこうを向いてとっとと寝てしまった。
まったく、なんなんだこの人は。でも真面目になっても馬鹿馬鹿しい。私も眠りにつくこととした。
翌朝
私たちはギルドのある街へ帰ろうとした。その途中
「1つ聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「あなたが仮に昔勇者だったとして、1人で行動していたわけないですよね?ほかのメンバーはどこに行ったんですか?」
「あ?まだその話してんのか?あんなのどう考えても酔っぱらいのたわごとだろ~?」
ケイはないわ~と、手をひらひら振った。
「でもあの時あなたの目は真実を物語っているかのようでした。前にも言ったと思いますが、私見る目はあるんです。」
「へぇ~、まさか本当に信じてくれるとわなぁ…。お前が初めてだよ。」
この男は飄々としていると思えば急に悲しい目をする。
「ま、結論から言うと消息は不明だなぁ。が、なぜか俺だけは生きていた。多分だがあいつらは普通に死んだんじゃねぇの?戻ってくることなんて本来あり得ねぇからなぁ。」
「なるほど。もう1つ質問していいですか?」
「なぁ~によ?この話は面白くないぞぉ~?」
「面白い面白くないではありません。で、魔王ってどんな奴なんですか?」
「あぁ~、なんかすごい奴だったよ。すごいオーラの奴。直視できないような。」
「きっと俺が強さを求めているうちに誘われていたんだろうなぁ、奴の方へ。勝手に道が開かれていく感じがしたよ。」
ケイは続けた。
「すごいエネルギーの奴だったよ。凄まじいね。」
「でも俺が一番驚いたのは、あいつにも人生があったってことだな。あいつはあいつなりに生きていて、あいつより下もいれば上もいる。そう考えると途方もなくなってきてなぁ。嫌になっちまったよ。まったく。」
「だから俺の勇者の物語はおわったのさ。」
「なぁ?面白くないだろ?」
と、ケイは最後に少し笑った。
そんな頃、私たちは街についた。