第4話
辺りはすっかり夜になっていた。
「いやぁ~しかし、完全に日が暮れちまったなぁ。」
「だからすいませんって。」
「つーかさ、なんかないの?」
「何か?何かって何です?」
「なんかだよ、食うもんとかさ?飲むもんとか。」
ケイはぶっきらぼうに聞いた。
「何にもないですよ。ここまで遅くなるのは想定外でしたから。」
「ほんとに何にもないのぉ~?」
と言ってケイは私のカバンをあさってきた。
「ちょっと!なにやってんですか、人のカバンを勝手に!」
「お、あるじゃなぁ~い。」
と言ってケイはカバンの中にあった少量の酒を取り出した。
「たまたま入っていただけです。でもそんな量じゃ酔えませんよ?」
と言ってるそばからケイは酒を飲み始めた。
「ふぃ~、あ~やっぱいいねぇ~。」
ケイは一瞬で酔っ払った。
「早っ!酔うの早っ!!」
「燃費がいいと言っておくれぇ~?」
燃費?そういう問題?と疑問を抱いていると、ケイが聞いてきた。
「お前は一体どうして魔王なんか倒しに行きたい?」
「どうしてって…そんなの当然でしょう、戦士として生きているのだから。」
「死ぬかもしれないんだぜぇ?」
「それは…」
「覚悟の上ってか?」
私が何も言えなくなっているとケイは続けた。
「俺はなぁ昔勇者だったんだ。そして魔王に殺された。」
は?何を言っているんだこの人は、私の疑問を置いてけぼりにして更に続けた。
「何で今生きているのかは全く分からん。しかしなぜだかこうして生きている。」
「もう10年くらいたつかなぁ~?あれから。」
「ちょっと待って下さい。あなた私と歳あまり変わりませんよねぇ?仮にその話が本当だったとして、いつから勇者だったんですか?」
私はとりあえずこの疑問を投げかけてみた。
「俺はもう歳を取らなくなっちまったんだよ。」
「そんなことって…」
「魔王に殺された俺は序盤の街に転がってた。満身創痍の状態でな。」
「その傷の治るのの遅いこと。最近まで痛んでいた。」
「最初のうちは歩くこともままならなかった。まるで生まれたてのようだったよ。」
「それからしばらくして俺は、訳も分からず魔王に食らったわざと再現をしようとしていた。」
「ま、結果は100の偽物を生んだだけだったがな。」
「しかもしゃべり方まで、なんだか魔王に似てきちまっててな。」
「そして鈍感な俺は気付いたわけよ、俺は魔王に憧れちまってるってな。」
「そして次に気付いたのが、俺は完全に折れちまったんだな、ってこと。」
「そこで俺は、魔王を相手にすることをやめたんだ。」
「だからお前もやめとけぇ?なぁ?」
私はほとんど信じられなかった。それも当然だろう。しかし実際ケイは強い。私は混乱していた。