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「よく来てくれましたね」
「約束だったからね」
あの後も走って今度はシャワーを浴びてから西米家へとやってきた。
今回も遠慮をする必要がないから彼女の部屋の床に寝転ぶ、今度は学習して扉からは距離を作っておいた。
「さてと、そろそろ夏休みも終わりますね」
「そうだね、来年の夏休みになったらここまでゆっくりはしていられないだろうね」
「あなたに限ってそれはありえませんね」
「それは私を高く評価しすぎだよ、なんてことはないことで不安定になるのが私だから」
「嘘ですよね、仮に少しだけ不安定になったとしても走ることでなんとかしてしまえる人です」
確かに走ることでなんとかしてきた私だけどこのままだと困る。
不安定なときに大丈夫だと口にして抱え込むことになってしまうかもしれないから弱さを知っておいてほしい、朋世の方は大丈夫だからあとは彼女に分かってもらうだけだ。
「ううん、こうしたくなるの」
「……逆に聞きますけど、希南さんは朋世さんじゃなくてよかったんですか?」
「うん、だって求めてくれたのは澄子だから」
「そうですか」
「だからこうして抱きしめちゃう、あ、たまに朋世を抱きしめたりもしちゃうけど」
なるべくしないようにするけどテンションが上がるとどうしてもしたくなるときがある、彼女がいてくれればいいけど朋世のあの感じ的に二人きりの時間も多くなるだろうから彼女のことを考えるなら頑張らなければならない。
「……本当は嫌ですけど、ちゃんと戻ってきてくれるのならいいですよ」
「大丈夫、そもそも朋世が止めてくれるから」
「大丈夫です」
ぐっ、だけどそういう機会がこないと頑張りようもないからいまは終わらせるしかない。
「な、なんですか?」
「心音が聞きたくなったの――ふむふむ、落ち着いているね」
落ち着く、このまま過ごしてもいいかもしれない。
「そ、そうですか? 正直、いま結構やばいんですけど……」
「え、多分それは必要以上に悪く考えてしまっているだけだよ、ドクンドクンって……あ、あれ? なんか変わってきちゃった」
「は、離れてくれませんか?」
「ふふふ、嫌だよ~」
だってやっぱりこうしているだけで相手をドキドキさせられるというのは大きいからだ、これまでこんなことはなかったから新鮮でいいのだ。
「もう許せません」
「え、あらー」
結局、色々と理由を作ってスキンシップをしたいというだけのそれだった。
嫌どころか嬉しいからなにも言わずに受け入れていると何故か「大丈夫ですかっ?」と心配されてしまったから手を上げる。
「我慢をしなくていいって言ったでしょ」
「あ、ありがとうございます」
もう一回抱き着いても今度はなにも言わなかった。
なので、暗くなるまでそんな時間が続いたのだった。




