ハズレスキル『勃起』で反りあがれ!
若い勇者VS老魔王の戦いは一方的に見えた。
「ファイヤー!アイスボール!シャドークロー!」
「……」
「……何だと?」
魔王の魔法は勇者には効かない。
いや、効いてはいる。
勇者の肉体は燃え、凍り、引き裂かれた。
肉塊にされようが、灰にされようが、塵になろうが何度でも勇者は復活した。
「……スキル『勃起』」
勇者のスキルは『勃起』。
彼はありとあらゆる物を勃起させられる。肉体、細胞、血液を『勃起』させる事で不死身となる。
当然痛みはある。しかしここで自分が魔王を倒さねば世界が危うい。
その気持ちが勇者の『心』を勃起させた。
「えーい!単純打撃ならどうだ!ストーンシャワー!」
「……むんっ!!」
「……化け物がぁ!」
筋肉を最大限まで勃起させた勇者には打撃も効かない。
天から落ちてくる岩は全て勇者にぶつかり砕けた。
「魔力切れかい?今度はこちらの番だ!マカ・ブレーード!」
「バカな!?マカ・ブレードだと!?」
マカ・ブレード。
1000年前に勇者の祖先であるニンニク・ラン王が魔王を封印した剣。
「その剣は二度と使えぬ様に真っ二つにへし折ったはず……」
「うおおぉっ!」
勇者は剣を勃起させた。
折れた刃がムクムクと伸びて硬くなる。
この世で一番硬い剣。
マカ・ブレードの復活である。
「くらええぇぇ!」
「ぐあぁぁぁあっ!」
マカブレードの一太刀を受けた魔王の体から魔力が抜けていく。
あっという間に魔王は老人になってしまった。
「……魔王」
「驚いたか?これがワシの真の姿よ……魔王でも年には勝てぬ……お前の若さが羨ましいよ勇者。ワシはもう朝立ちもせぬっ!愛してやまなかった自慰も出来ぬっ!ならばこんな世界などいらぬっ!!」
「……」
勃起が出来ない。その苦しみは勇者には分かった。
勃起とは『男』であること。
『生きる』と云うこと。
『次に繋げる』権利なのだ。
勃起を失うというのはその全てを失うという事。
彼が魔王になるのも仕方がないと思った。
「早く殺せ!勇者何を?」
「……黙っていろ」
勇者は魔王の股間に輝く手を当てた。
「勃起力を半分分けてやる」
「バカな!?そんなことをしたらお前の寿命が……」
「お前も遠い昔は人間だったんだろう?人間を助けるのは勇者の……使命!」
魔王の股間が金色に輝き、そこにはいつ以来かも思い出せぬ山脈があった。
「おっ、おお。ゆ、勇者様。ありがとうございます」
「……改心せよ」
魔王は少しだけ若返り勇者は老けた。
・
こうして世界は平和になった。
勇者も魔王も消え、世界の危機など無かったかのように10年の日々が過ぎた。
「この薬を煎じて飲ませなさい。後はこの種をあげよう。どんな枯れた土地でも芽が出る。食料不足も解消されるであろう」
「ありがとうございます!ありがとうございます!あなた方は天使だ」
ある貧しい村に老夫婦がやって来て病人を癒し、大量の食料と知恵を与え去っていった。
「では。次の困っている人達の心を勃起させてやろうかの?婆さん」
「ええ。じいさん」
二人は人助けを『勃起』と呼んでいた。
立ち去る二人の背中に村人達は祈った。
そして一人の農夫がポツリと呟いた。
「あの婆さん。……むかーし見た勇者様に似ていたなぁ。まさかな」
・
女勇者と元魔王は死ぬまで勃起の旅を続けたと云う。
HAPPY・END