Other Side Story 1 神様たちの直後のドタバタ
ふう、行ってもうたか……旅人殿…………
なんだか、あっという間じゃったのう…………
あやつ、面白かったからかなりの暇潰しにはなったんじゃがなあ…………
ん?はて…………おお、誰かと思えばお主か。
よく来たよく来た。
わしはこの世界の最高神である、ゼノンじゃ。
ああ、そんなに畏まるでない。
わしはほとんど飾りじゃから、実際何か重要な事をしているわけではない。要するに滅茶苦茶暇なのじゃよ。
どれ、暇潰しついでに質問に答えよう。
どんどん来てくれて構わんぞ。
Q :「桜台旅人を見てどう思ったか?」
まず、旅人殿は、かなりの善人じゃな。
自分の命を奪った相手に対して全く起こることなく許せるのはなかなかできることではない。
まあ、許せたのは旅人殿の善悪判断の基準が故意か過失かじゃったからというのもあるじゃろうが、それでもかなりの善人であることは間違いない。
さらにマリーに責任感を与えないように気づかいしようとしておった。
あんなことがすぐにできる者はなかなかおるまい。
しかし、自分に敵意があり、かつ敵対行為をするものには容赦ないようじゃな。彼が怒ったときの雰囲気はわしでも背筋が凍ったな。
他には、旅人殿はかなりの鉄道好きじゃな。
本人も鉄道が好きということは隠しておらんかったが、自分では「大したものではない」と言っておったが、わしから見たら十分大したものじゃと思うのじゃがのう。
「異世界に鉄道物流革命を起こす」と言われたときには柄にもなく「こいつ猛者や…………モッサモサの猛者や…………」と思うてしもうたわい。
Q :「何故桜台旅人にぶっちぎりのチートスキルを与えたのか?」
あーあれはな…………
よく言えば、旅人殿なら使いこなせると信じたからなんじゃが…………
悪く言えば、扱いに困るスキルを押し付けた、ということになるのう。
実は、あの4つはわしらが作ったもののなかでもかなりのぶっ壊れ性能なのじゃ。
じゃから、特に【絶対命令】なんかを生半可な者が使うと世界が壊れてしまう。
そのため、わしらも他の者に渡すことができずに困っておった。
そこに来たのが旅人殿じゃった。マリーを快く許した彼なら、使いこなせると思い、彼に託した次第じゃ。
…………格好よく締めようと思うたが、要するにわしらの手に余る代物を押し付けただけじゃ。
Q :「【神速演算】が、人類の消滅させることはないのか」
ふむ、なるほどな。
確かに、お主にとっては懸念すべき点かもしれぬな。人類は愚かじゃし、あのナユタがそういう答えを弾き出してもおかしくはないな。
しかし、答は「ない」じゃ。
理由は3つ。
1つ目は、まず主人、この場合旅人殿じゃの。その旅人殿が人間だからじゃ。ナユタは、完全主人第一じゃから、主人に不利益な答えを真っ先に消去する。どんなにその答えが世界にとって最適だとしても、な。
2つ目は、ナユタはあくまで答えを提供するスキルであり、主人の代わりに行動することはできないからじゃ。まあ、【絶対命令】を使って体を作り、そこに意識をいれる事は可能じゃ。しかし、その場合でも、スキルの意向に逆らう事はない。
3つ目は、われらが作った「穏健思考回路」を搭載しているからじゃ。
これは、ナユタの弾き出した答えのうち、主人の意向に添いかつ最も穏健な答えを提供する、というシステムじゃ。
これにより、主人が人類を滅ぼそうとしない限り、ナユタが人類を滅ぼす答えを提供する事はない。さらに、この穏健思考は世界全体に影響を与える可能性が限りなく高い場合と、主人が決めた制限に反する場合に限り、主人の命令にも逆らう仕様にしてある。だから、例え主人が命令しても、人類を滅ぼすことはない。
長々と説明してしもうたが、これが理由じゃ。
Q :「ここはなんと言う世界なのか?」
おお、そういえば言っておらんかったな。
ここは「ゾディアック」という世界の神界、俗に言う死後の世界じゃ。
「ゾディアック」は、輪廻転生の世界。
つまりはここは魂の終着駅のようなものじゃ。
現世で死ねば魂はここに還り、まだ違うかたちとして現世に送り出す。それが神界の役目じゃ。
まあ、お主の「ひのもと」とか言う国の役目に似ているらしいの。前に来たやつが言うておったわ。
Q :「ここは地球とは違う世界なのか?」
そうじゃな。違う世界じゃ。
とはいっても、地球からそこまで離れているわけではないがの。
Q :「何故旅人は違う世界に来たのか?」
ああ、そういえば旅人殿には言っておらんかったのう。聞かれんかったから忘れとったわ。
まあ、気になったら【神界通信】で聞いて来るじゃろう。
それで何故、か。
理由は、「マリーが旅人殿を殺めてしもうたから」じゃな。
わしら神々は、様々な世界の神界を行き来できるのじゃが、違う世界で殺めたものは自分の世界に連れて帰るという決まりがある。
じゃから、マリーが旅人殿を殺めてしまったから、こちらの世界に連れてきたのじゃよ。
Q :「何故マリーを一人で現世にいかせたのか?」
ああ、それはじゃな。
もともと、日本の神々とは仲が良くての。
お互いよく遊びに来るのじゃ。
この前なんかは、弁財天殿が来てのう。
マリーたちと一日中おしゃべりしておったわ。
わしらもその時不動明王のところに遊びに来ておった。
ん?不動明王がわしらを迎えたのかって?もちろんじゃ。
信じられない?まあ見かけは恐ろしいがあやつも元は仏じゃ。
仲間のわしらには優しい、というか元々優しいが人間には厳しく接している、といったところかのう。
えー、それで…………ああ、そうそう。何故旅人殿がこの世界に来たのか、じゃったな。
わしらが不動明王のところで世間話をしとる間マリーを暇にさせていたのじゃ。
お主らもあらぬか?
親戚のところに来て大人は話が盛り上がり楽しそうにおしゃべりしてるけど自分は何もすることがなくて暇で暇すぎて、どうにかして構ってもらおうとして親にちょっかいをかけても振り払われるだけ。
大抵の子供は一度は経験してもおかしくはない事だと思うのじゃが。
何でこんな細かく覚えてるのかって?
そりゃ作者がまだ若ごほんごほん…………わしにも子供の時期があったということじゃよ。
で、まあマリーに暇させてしまってのう。
どうしても暇と言うもんじゃからマリーがかねてから行きたいと言っておった日本の現世にいかせたのじゃ。
Q :「何故日本の神々と仲がいいのか?」
それは、お互い「多神系」であり「輪廻転生系」であり「救いを与えるのではなく見守る系」じゃからじゃのう。
要するに共通点が多いからじゃな。
「ゼノ…………」
ん?もういいのか?
残念じゃのう。
「ゼノン…………」
いつでも来れば良い。
わしは歓迎するぞ。
「ゼノン様…………」
おお、そうか。送らんで良いか?
そうか。またいつか。
「ゼノン様!!」
「おおっ!?」
そこには不機嫌なひ孫娘のマリーがおった。
しかし何故不機嫌なんじゃ……?
「おお、マリーか。どうした?」
「どうした、じゃないです!さっきから呼んでましたのに!」
そうじゃったのか。あやつとの話に夢中で聞こえとらんかった。
「すまんのう。聞こえとらんかったのじゃ。して、わしに何か用か?」
「はい。少しお願いことが…………」
マリーがお願いか。
また、暇潰しかの?
「なんじゃ?言うてみなさい。」
まあ、暇潰しに何かしたいとか────
「あの……私、現世で特訓したいのです!」
「ブフォオ!!?」
マリーが現世で特訓!?
神が現世を知るために人になりきり人の一生を過ごす事は珍しく無いし、わしもしたことがあるのじゃが…………
何故またいきなり……?
「また、何故……?」
「旅人様の人生をこの目で見たいのです!」
「………………………………」
ふむ、なるほど。確かに旅人殿の人生は見ていて楽しいじゃろうが、わしらは上から見ることができる。
もちろんマリーもそれは知っておるはず。
…………まあ、旅人殿に許してもらって辺りからそんな雰囲気はあったがのう。
旅人殿はかなりの善人じゃからマリーをやるのは構わんが……………………寂しいのう。
「両親には話したのか?」
「はい。でも、1人でいかせるのは…………と」
まあ、当たり前じゃのう。
あんなことした直後じゃし。
…………ん?
……あ!なるほど、そういうことか。
「ですから、ゼノン様についてきてほしいのです。」
やっぱりか。
う~む。しかし、何もしていないとはいえ、一応わしはこの神界の最高責任者じゃ。
そう簡単に離れることは……………できるの。
そうか!分身を作れば良いのか!
これなら現世に行きつつ神界におることも可能じゃ!
「わかった。わしがついていこう。」
「良いのですか!?」
「ああ、最高神の能力の1つ、【完全分身】を使えばわしがついていくこともできる。早速、両親の所へ行こう。」
「はい!」
そうして、わしらはマリーの両親の所へテレポートで向かった。
すると…………
「あ、マリー!と、ゼノン様…………」
わしとマリーを交互に見た後、2人とも滅茶苦茶気まずそうな顔になった。
そりゃそうじゃろう。
マリーに「保護者が………」なんて話をした後にわしを連れてきたのじゃから。正直、わしも気まずい。
「2人とも既に察していると思うが、わしが付き添うこととなった。」
「しかし、神界は大丈夫なのですか?」
マリーの父親が質問する
最もな疑問じゃな。
しかし、わしかて無策で来たわけではない。
「わしが地上におる間は【完全分身】で分身を作り、神界に置いておく。分身には「終わったら旅行していいから」と言っておくから、分身の事は心配せんでよい。」
「なるほど、それなら…………いや、しかし…………」
「神界の事は承知した。ですが、どうやってマリーを転生させますか?マリーも地上に降りるのは初めてなので、出来ればある程度恵まれた環境にしていただきたいのですが…………」
「わかっておる。で、その器なのじゃが、マリーを旅人殿の妹にしたいと思う。」
「そこでしたらこちらも誰にしようか迷っておりましたので可能でございます。」
「ありがとうございます。それで、ゼノン様はどのようにマリーに付き添っていただけるのですか?」
「わしは、マリーの執事として付き添うつもりじゃ。今回転生するアルタイル家は妊娠すると新しく執事を雇う形を採っておる。したがって、マリーと同時に姿を変えて現世に降り、マリーの執事になる、ということじゃ。」
「承知しました。すぐに手配します。」
「うむ、頼んだぞ。」
「いってきます!」
「「いってらっしゃい。」」
ふう、さて旅人殿はどんな人生を見せてくれるかのう。楽しみじゃ。
おお、またお主か。
なに?聞き忘れた質問がある?
なんじゃ?言うてみい。
ほう、神とは何者か……か。
そうじゃのう。
話を逸らすようで悪いが、
「エントロピー増大の法則」
を知っておるかのう?
これは、宇宙上において
放っておくと物事の乱雑さが増す
という法則じゃが、
神は、言うなれば
この法則を克服した生物
つまり、絶対を手にいれた生物
ということじゃ。
じゃあ、またの。
さあ、この真実が旅人に伝わるのはいつになるのでしょうか




